第17章 ぼこぼこタイム
「『ネット』!」
(やれやれ、牙さんまた飛んできたよ。どれ、また僕の魔法で助けてやるか。めんどくせーけど)
そう思ったクラリットは前回と同じように『ネット』の魔法を唱えた。しかし、クモの巣は現れなかった。
「しまった! 魔力切れているんだった!!」
時すでに遅し。
「ズドーーーーン!!!」
ものすごい勢いで木に激突する牙。
「バキボキ……」
怒りで痛みを忘れた牙が、手の骨を鳴らす。
「牙さん……ちょっと冷静になりません? ね? ね、ね?」
そう言いながら、土下座するクラリット。その丸まった背中の流線型は、美しかった。
「…………」
無言でクラリットに歩み寄る牙。クラリットは土下座しながら、小刻みに震えていた……
そう、これから『ふわふわタイム』ではなく、『ちゅぱちゅぱタイム』でもなく、恐怖の『ぼこぼこタイム』が始まろうとしていた。
次の章で、クラリットが生きている可能性は、ほぼないだろう。愛着があったキャラクターだけに、残念です。
~用語解説~
『ふわふわタイム』
あの有名なアニメの有名な曲。作者も大好きで、カラオケでよく歌います。
『ちゅぱちゅぱタイム』
みりまっちょさんの名作【時計の長針として生きるという事】の中に出てくる言葉。時計の針と針が会話できる時間帯の事。みりまっちょさん、勝手に使ってごめんなさい。
『ぼこぼこタイム』
無抵抗の人間や物を、気が済むまで殴ること。ストリートファイターのボーナスステージも『ぼこぼこタイム』に含まれる。要はリンチのこと。一方的な暴力のこと。人間サンドバッグのこと。