第16章 作戦2開始!
「『スタンプ』! 『スタンプ』!」
再び霧の中に戻り、白銀剣ブランのつばに降り立った牙。
「あそこだな……」
霧の中、一本の赤い線が見えた。その線の先に、ガリゲイオスの弱点である鼻角がある。牙はそう確信し、白銀剣ブランの柄を掴んだ。
「ぬおおおお! 『スタンプ』!」
そして、牙は渾身の力で巨剣を持ち上げ、上空へと飛翔した。
(今度こそ決める!)
上空へと飛翔した牙は、今度こそ確実に鼻角を攻撃するため、もう一度しっかりと赤い線を確認しようと思い、霧の中を凝視した。しかし、そこにあるはずの赤い線はなくなっていた。
(え!? どういうことだ!? 赤く染まっていた霧がなくなっている! これじゃ、どこに鼻角があるかわからないじゃないか!!)
空中で困惑する牙。あたふたする牙。そのとき、『ほら魔貝』から能天気な声が聞こえた。
“牙さん、すいません。調子こいて魔法使ったら、魔力切れちゃいました。てへぇ♪ もうすぐ、『ほら魔貝』を使う魔力も無くな……”
「ばかやろうーーーーー!!!!!!!」
目標物を見失った牙は、闇雲に白銀剣ブランを振り下ろした。
「スカッ!」
しかし、闇雲な攻撃が当たるわけもなく、白銀剣ブランは虚しく空を切った。このとき、牙は空中で体制を崩し、垂直に落下した。
「ギャオォオオォオオオオマッテマシタ!!!!」
そして、ガリゲイオスが「待ってました!」と言わんばかりに、上空から落ちてきた牙目掛けて、渾身の右ストレートをお見舞いした。
「ぐふぅ!!」
牙は白銀剣ブランごと、再びはるか後方へと吹き飛ばされた。
~用語解説~
『ギャオォオオォオオオオマッテマシタ!!!!』
ガリゲイオスの叫び声。語尾のほうで「マッテマシタ!」と聞こえたのは空耳である。モンスターが「待ってました!」などと言うはずがない。そこの君、もう一度言うぞ、これは空耳だ!
『魔力切れ』
魔力は使いすぎると枯渇する。体力と同じようにある程度休めば回復する。魔力がなくなると、当然魔法が使えなくなる。魔力の総量が少ない新米魔法使いは、よく『魔力切れ』状態になりやすい。ある程度熟練すると、魔力がどれくらい残っているか感覚でわかるようになる。『ガス欠』という俗称で呼ばれることもある。