第15章 今度こそ信じていいんだな?
「おい! 赤色消えちまったぞ? どいうことだ?」
『ペイント』の魔法により赤く染まった霧の一部は、ある程度奥深くまで行ったこところで突如消えた。
「残念ながら、あの赤い霧は鼻角に吸い込まれてしまうと色が消えてしまいます。でも、安心してください。僕がここからずっと『ペイント』の魔法を使い続けることで、その問題は解決できます。絶えず『ペイント』の魔法で霧に赤色を付け続ければ、その赤霧は“線”となり、その先に鼻角があることを知らせてくれます! さぁ、牙さん、今度こそあの鼻角をへし折ってきてください!!」
クラリットは今度こそ大丈夫という気持ちを込めて、強く胸を叩いた。
「……今度こそ信じていいんだな? あの赤色に染まった霧の先に、鼻角はあるんだな? 信じていいんだな?」
牙は先ほどの失敗から、かなり疑り深くなっていた。英雄と称されていた牙はこのとき、自ら『人間としてのランク』を落としていることに気付いていなかった。
「信じてください!」
「……わかった。行ってくる」
牙は静かにそう呟くと、『スタンプ』の魔法を使って、再び霧の中へと進入した。
「まかせてください! 『ペイント』! 『ペイント』! 『ペイント』! 『ペイント』! 『ペイント』!……」
牙を見送って直ぐ、クラリットは『ペイント』の魔法を連発した。クラリットの『ペイント』により、赤色に染まった霧の一部分は、重なり、列を作り、一本の赤い線となった。そして、その赤い線は吸い込まれるように、霧の奥にいるガリゲイオスの鼻角に向かって、静かに伸びて行った。
~用語説明~
『人間としてのランク』
人を疑ったり、汚い言葉を使ったり、乱暴を働いたり……それって人間として最低な行為ですよね。牙さんはクラリットと出会って、『人を疑う』ということを覚えてしまったため、人間としてのランクが下がりました。