第14章 まさか……
「とりあえず、あの霧の近くまで行きましょう」
そう言うとクラリットは霧に向かって走り出した。
「お、おい!」
クラリットの後を追うように、牙も霧の方へと向かった。
「いいですか、見ていてください。『ウインド』!」
霧の近くまで来たクラリットは、霧目掛けて『ウインド』の魔法を唱えた。
「ふわっ……」
『ウインド』の魔法により、少しだけ霧が拡散したが、直ぐにもとに戻った。
「今のを見て、わかりましたか?」
「?」
牙はクラリットが何を言いたいのか全く理解できなかった。
「ほんと、牙さんは頭が悪いですね」
「何だと!! てめぇ、もういっぺん言ってみろ!」
牙はクラリットの胸倉を掴み、鬼の形相で威嚇した。
「あわわわ! ちょ、やめてください! 話は最後まで聞いてくださいよ!」
「で、今の『ウインド』の魔法に何の意味があるっていうんだよ! 『ウインド』の魔法じゃ、この巨大な霧を吹き飛ばすことは不可能なんだろ? じゃあ、なんで『ウインド』の魔法を使ったんだよ! はやく教えろよ!!」
牙はクラリットを軽々と宙に持ち上げ、揺さぶった。クラリットは気持ち悪くなりながらも説明を続けた。
「た、確かに、僕の『ウインド』ではこの『魔霧』全てを吹き飛ばすことはできません。しかし、一部分だけなら吹き飛ばすことができる。それはつまり、ガリゲイオスより弱い僕の魔力でも、一部分だけなら僕の魔力が上回る、ということです。そして、もう一つ重要なことがあるんです。実は牙さんが戦っている間、僕はずっとガリゲイオスを観察していました。そして、あることに気がついたんです。それは『あの鼻角は霧を出すだけではなく、すでに出した霧を吸い込んでいる』ということです」
「それが何だっていうんだ? はやく結論を言えよ!」
牙はクラリットの言葉の意図を理解できずにいた。
「つまり、こういうことですよ! 『ペイント』!」
クラリットはそう言うと『ペイント』の魔法を唱えた。するとどうだろう、霧の一部分が赤色に染まった。そして、赤色に染まった霧の一部分は少しずつ、霧の奥深くへゆらゆらと吸い込まれて行く。
「まさか……」
「その、まさかですよ。あの赤色の霧が最後に行き着く場所は、ガリゲイオスの弱点である、『鼻角』です」
クラリットはニヤリと笑った。
~用語解説~
『まさか……』
驚きの言葉。次のような例文で使われる。
例文1:まさか……お母さんがお父さんだったなんて!
※よかったね。パパが二人になったぞ。
例文2:まさか……スイカにハチミツをかけるなんて!
※スイカって、おいしいよね。
例文3:まさか……苦労してレベル99にしたのに、記録が消えているなんて(涙)
※くそ! 俺のプレイ時間を返せ! あのプレイ時間は青春の時間を削った、大切な時間だったのに……(涙涙涙)
例文4:まさか……作者が本文よりも『用語解説』の方に力を入れているなんて!
※気付いた人もいるかもしれませんが、途中から用語解説でふざけています。てへぺろ。