前話1
ある言語学教授へのインタヴュー
「この度は、モンリッシュの石版の文章解析に成功された、石上悠一郎教授にお話を聞きたいと思います。これで、今まで神秘とされてきた、古代スキタイ文化の研究が今後進んでいく事に期待されるそうですね。おめでとうございます」
「ん?ちょっと違うね」
「何か、間違いがありましたでしょうか?」
「えっとね、石版の解析は目処がついただけ、解析は終えてないよ。そうだね、後はすり合わせがいるから、ん~30年位かな」
「はぁ」
「えっとね、まったく同じ文章が書かれているらしい物を見つけてね。それと合わせることによって解析が進むはず。これはこれで大発見だけど、まぁ、そんなに簡単な事じゃない」
「そうなんですが、しかし、日本人としては初めて考古言語学の最高権威賞と言われるヒンクス賞を受賞されたんですよね」
「あー、あれはね、ちょっと畑違いの僕が見つけちゃったから御褒美じゃない?僕の本分は古代語の解析よりは、言語の歴史的な発展だからね。その辺りじゃない?」
「そうですか、しかし畑違いにも拘らずこんな大発見をするなんて、まさに天才言語学者ですね」
「天才?言語学者に天才なんていないよ。秀才ならいるけどね」
「それは何か違うんですか?」
「言語学なんて知識の集積とその体系化、考古言語学にしたって、ひらめきは要るけど基本的には一緒で膨大な知識の下積みが無ければダメなわけ。天才とは良いにくいよね」
「では先生を含めて、どんなに偉大な言語学者でもそれは秀才だと言う事ですか?」
「うーん、知る限りはそうかな?天才って言われた人が居ないわけじゃないけど、数学や物理学みたいな感じではないよね。結局の所、名前が売れる言語学者って老齢の人が多い。ほら、僕だってもう60でしょ」
「なるほど、それでは、言語学の天才はいないけど、いろいろな物を積み上げた上での秀才はいる。そう言う事ですね」
「いや、そうでもないかな」
「?」
「いやね、言語学者になってないんだけど、1人天才を知ってるよ」
「それは?」
「えっとねぇ、今から14年位前かな?僕の知り合いから子供を4ヶ月くらい預かってね。当時12歳位だったかなぁ、あの子は天才だったね」
「これを見てよ、当時その子が書いたノートなんだけどね。たった一人で言語を創り上げたんだ。そこの本棚に入っているノート、全部で300冊以上あるんだけど、それを12歳の子が1人で書き上げたんだよ。これは天才って言って良い」
「あの?言語を創ったと言うのは?」
「言葉や文字を作ったのさ」
「それは、ハングルを創った世宗の様な事を下と言う事ですか?」
「全然違うねぇ。あれは、元々有った言語に文字を充てただけ、ひらがなやカタカナなんかに近いね、しかも、最初の頃は忌語と言うか、蔑語にしかならなかった。現在彼が言語学上の偉人と言われているのは、後の韓国人の宣伝のおかげだね。しかも、彼が創ったというのは、あくまでも噂話と言うか、知識の無い人間の勘違いだね、彼がしたのは制定。韓国人でも結構彼が創ったって信じている人が要るけど、まぁ誤解だね」
「はぁ」
「そんなんじゃなくてね、言語を一から創ったんだよ。歴史的な背景、発音、文字、文法、更には歴史的な流れで使われなくなった死語まで、あらゆる意味で言語を創造したんだ。そうだな、まったく言語を持たない人間の集団が、何千年もかけて言語文化を創っていく過程。その過程を全てシミュレートした、そう言う事だね」
「12歳の子供が?」
「そうだね、12歳の子供が、たった4ヶ月、いや、実際には3ヶ月くらいかな。それだけの期間でね」
「それが言語学の天才だと」
「そう言って良いんじゃない?」
2013年・中央テレビによるインタヴューより。
なお、あまりにも信じがたい内容により、放送はされる事は無く録画テープは保存。その後完全に忘れ去られる。