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平凡を目指す私と騎士科の王子様の告白騒動  作者: 四葉ひろ


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2/2

「こんにちは。今朝はお疲れ様でした。詳しい事情はわかりませんが、私にできることなら、協力します」


 リチャードの手の中、可愛らしい便箋に書かれた文面を俺、パトリック・オルディスは三回は読み返した。隣では同じく悪友のゴーンも同じように手紙を目で追っている。


「で? お前、朝、彼女に何言ったの?」


 俺が呆れ顔でそういうと、リチャードは真っ赤になって怒り出した。


「聞いてたじゃねえか! お前らの言うとおりやっただろ!!」


 知ってる。こいつは、朝、学園内で最も人通りの多い通学路で特待科の優等生ベル・エヴァレット嬢に、ありえないくらいでかい声で告白したんだ。

 周りの人間は皆驚いて、立ち止まったり、振り返ったり。

 もちろん、俺たち悪友は、木陰からしっかり見ていた。

 だけど……。


「告白に対する答えじゃねえなあ」

「お前、罰ゲームだってことばらしたんじゃねえの?」

「ばらすかよ! 絶対軽蔑されるじゃねえか! だいたい、あの状況でいつ話すんだよ」


 リチャードは頭を抱えて机に突っ伏した。


「しかたねえなあ」


 俺は、そういうと杖を取り出す。


「何だよ」

「クレア」


 俺はそう言うと、手元の紙にメモを書き、杖を振った。直接話せれば早いんだけど、女子寮に男子生徒が出入りするのは面倒な手続きが必要だ。

 魔術科の俺が振った杖の先のメモは鳥の形に折り畳まれ、窓から飛び立った。行く先は、俺の婚約者。ベル嬢の親友クレア・ド・ヴェルモン侯爵令嬢。


「すげえな。さすが魔術科のトップ」


 ゴーンは、にやっとして言ったけど、リチャードは真顔で顔を上げた。


「まあ、あんまり期待するな。でもクレアは、ベル嬢とはかなり仲がいいからな。今朝のことは、何かしら聞いてるはずだ。むしろ事前に伝えてなかった俺が怒られるパターンだな」


 まあ怒っているクレアも可愛いからいいんだけど。


「パトリック!!」


 リチャードが俺に抱きついてくる。


「やめろ。お前のファンが見たら泣くぞ」

「いや、意外と喜ぶんじゃないか。お前の魔術で念写して売りさばくか?」

「なるほど。なら俺の顔は映らないようにしよう。クレアが悲しむ」

「お前ら! お前らがそうやって助長するから、俺の変な噂が一人歩きするんだろ!」


 ぎゃあぎゃあ言っていると、机の上にふわっと手紙が現れた。


 ぴたっと動きを止めて、ほかの二人も俺が手紙を開くのを見つめている。直接ここに届くように魔法をかけておいたクレアからの返事だ。

 この短時間で書いたとは思えない流麗な文字が綴られている。

 

「今朝の事件は、こちらでもかなりも話題になっているわ。ベル本人は、これは罰ゲームで、私や寮の友人たちから名前を聞いたアシュフォードさんが、あとくされの無い相手として彼女を選んで、告白ごっこをしたと思っている様子。本当のところはどうなの? 明日の放課後カフェテリアで待っています。ちなみに、ベルは目立つことに対して極端に拒否反応があるので、その辺りはフォローが必要だと思うわ」


 皆が読み終わったのを確認して、俺は手紙を畳んだ。

 

「――罰ゲームって勘付いてるのかよ」

「鋭いな。さすが実力で特待科に入っただけある」


 俺とゴーンが頷き合っていると、リチャードが真剣な顔でつぶやいた。


「それだけか? 俺のこと、なんか言ってなかった?」

「まあこれだけだな。他には何も入っていない。――なんでだ?」


 意外にも罰ゲームだということに勘づかれていることには反応していない。俺の質問には答えず、そのまま力なく、机に座り込んだ。だがすぐに顔を上げた。


「だから嫌だったんだよ! まったく伝わってないじゃないか!」


 半べそだ。

 そこか。リチャードは王子様然とした外見とは裏腹に、意外とお子ちゃまで泣き虫君なのだ。


 ちなみに、そんなリチャードにとって、黄色い声で寄ってくる女の子ほど苦手なものは無い。いつも、青い顔をしてよけている。


 それが、女の子達には、誰にもなびかないクールな王子様に見えるようだ。皆、都合よく見たいものを見る。

 

 芸術科の生徒のみならず教師からも絵画モデルのスカウトが絶えないとか、その上、勉強もしないのに学業では騎士科トップで特待科も選べたとか、色々な噂がまことしやかに囁かれている。


 確かに、剣を持っている間は腐っても騎士科、態度も堂々としたものだけれど、剣を置いてしまえば、まるでだめだ。生徒会からもスカウトはあったようだが、おどおどした態度に、これは使い物にならないと思ったのが、すぐに話は立ち消えとなった。勉強だって、確かに成績優秀だけれど、トップクラスではないし、人並みには努力しているのだ。


「と、とにかく」


 リチャードの泣き顔に何故か弱いゴーン。なんとかなだめようと必死だ。


「連絡を取り合う口実はできたんだ。これをきっかけに仲良くなればいいじゃないか。今までは話をしたことも無かったんだろ。とりあえず、返事しろ返事! 何でもいいから直接会って話す機会を作るんだ。」

「そうか? そうかな。そうだな……。そうかも」


 リチャードが少し、落ち着いてきた。いいぞ。

 俺も、同調する。


「そうだそうだ。このまま、本当に付き合えばいい。告白だけなんて意味無いだろう」

「そんな簡単に行くわけないだろ!」


 とたんにリチャードが顔を上げてきっと睨む。

 ……はい。まったく純情美少年は扱いづらい。



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