第3話 「見知った人」
夏休みに入り1人過ごす時間が増えた、翔也は親の実家の九州で過ごす為家を離れている。八千流は部活が忙しい様で会えていない。少し寂しい気持ちはあるが1人で過ごす事には慣れているので問題無かった。
「家の掃除でもしようかな」そう1人で呟くと立ち上がり作業を始める。
「あらかた片付いたな後はこれを整理すれば」隆也が物置の物を取り出すと中には古いアルバムがあった。無意識に隆也はアルバムを開く。アルバムの写真には今は亡き両親と幼い頃の八千流との写真が入っていた。
「懐かしいなこの時八千流と二人遊び疲れて寝ちゃって、父さんと叔父さんがおんぶして帰ったんだっけな」
隆也が懐かしそうに見ているとポケットに入れていたスマホが鳴る。見ると着信の相手は八千流だった。
「もしもし隆也?今何してたの?」
「今丁度家の倉庫を整理しててさ、昔のアルバムが出てきたから見てたんだよ」
「もしかして、私の昔の写真とか見て思い出に浸ってたんでしょ?」八千流がまるで見ていたかのように言ってきたので少し驚きながらも返した。
「何でわかるんだよ?もしかして見てるのか?」
「え!?本当に見てたの?でもなんで?やっぱり隆也は私の事」電話越しに何かブツブツ言っている八千流に用件を聞く。
「それで何か用?」
「え、ああ、そうだった隆也今家に一人でしょ?だから私が泊まりに行ってあげようかなって思ってさ」八千流の提案に答える。
「別に良いけど叔父さん達には言ってるの?」
「そんな即決でいいの!?もう少し慌てると思ったんだけど」八千流が少し動揺した様に言った。
「従姉妹何だし普通だろ?それに昔はしょっちゅう泊まりに来てただろう?」
「そ、それはそうだけどさやっぱり年頃の男女なわけだし」八千流が照れくさそうに呟く。
「大丈夫だって従姉妹に変な事するわけ無いし、寝る部屋も別々だしさ」隆也が言うと八千流が少し残念そうに、「そ、そうだよね部活から帰ったらお父さん達に言ってから来るからね」
「うん、待ってるよ」そう言って通話を終えた後再び作業に戻った。
一通り整理を終え時計を見ると昼の14時を指していた。
「八千流が来るのが大体18時位だし少し休んでいようかな」作業を終えシャワーを浴びた後居間で寝転がっている。そしてだんだん瞼が下がっていきそのまま眠ってしまった。
「隆也、隆也、起きてよ隆也」声を掛けられ目を覚ますと居間の入り口で八千流が呼んでいた。
「八千流?ごめん寝てて気づかなかったよ」時計を見ると夕方の17時を指していた。
「部活今日早く終わったの?」八千流に聞くと頷く。
「今日は試合も近いから早く終わったんだ」そう言うと八千流が廊下を歩いて行く。
寝起きで気づかなかったが八千流は学校の制服を着たまま来ていた。「着替えて来なかったの?いつもは私服で来るのに」隆也が言うと八千流の声が聞こえる。
「うん、直ぐにでも隆也に会いたかったから部活終わってそのまま来たんだ」
「そうか、そう言われると嬉しいな」八千流は姿を見せず話す。
「隆也は何してたの?疲れてるみたいだけど?」
「家の掃除したり、庭の倉庫を片付けてたんだ通話の時言わなかったっけ?」するとさっきまで直ぐに言葉を返していた八千流が止まる。
「八千流?どうかしたか?」隆也が言うと八千流が直ぐに返す。
「ごめん、考え事してて話聞いて無かったよ、倉庫の掃除だったよね?大変そう」隆也が黙ると八千流も静かになった。
「隆也?どうしたの?私何か変な事言った?」
声は八千流だが八千流では無い隆也は薄々勘づいていた。
「何でも無いよ、それより叔父さんと叔母さんにはこっちに泊まるって行ったのか?」すると八千流が再び答える。
「それなら大丈夫だよ、お父さん達には隆也に会いに行くって言ってあるから」
「そうか、それなら良いけど」すると隆也のスマホに着信が掛かって来る。
「もしもし」隆也が出ると電話越しに八千流が答える。
「隆也?ごめんね遅くなっちゃって今家に居るから準備したらすぐに行くね?」その言葉を聞き隆也が青ざめる。
「八千流?今家にいるのか?」隆也が聞くと八千流も「うん、今帰って来た所だけど何で?」
「いや、やっぱり一人だと寂しいからさ久しぶりにそっちに泊まりに行って良い?」そうゆうと電話越しの八千流が慌てる。
「え!?い、良いけど、でも今日お父さんとお母さん旅行でいないよ?」
「勿論無理にとは言わないよ嫌なら断ってくれてもいいし。」
「隆也〜誰と話してるの?」電話の間にも八千流の声でソイツは話し掛ける。
「嫌じゃないよ!寧ろ嬉しいって言うか、隆也なら良いよ待ってるからね」八千流との通話を終え。ソイツに話す。
「ごめん、翔也から電話来て話してたんだ」隆也が返すと八千流の声でソイツは笑いながら言った。
「それなら良かった、今晩は久しぶりに二人っきりで過ごそうね」普段の八千流なら絶対に言わないような事を言いながら鼻歌を歌う。
「ちょっと部屋にいるから何かあったら呼んでくれ」
隆也がそう言いながら部屋に戻った。そして泊まりの準備を終え、階段を静かに降りる。ソイツはまだ奥の風呂場に居るようで鼻歌が聞こえる。隆也は気付かれないよう細心の注意をしながら玄関を開けた。
「何処に行くの?隆也?」突然真後ろで話し掛けられゆっくりと振り向く。
そこには八千流と同じ背格好をした何かが立っていた。声と格好は八千流だが、顔は無数の縫合痕があり、口から黒い液と蛆虫が垂れている人間では無い何かが居た。
「うわぁ!」隆也は直ぐに外に飛び出し鍵を掛ける。すると玄関の磨りガラス越しにソイツが叩く。
「開けろ!逃げるな!私が慰めてあげるから!お前は私の物なんだぞ!愛している!」と支離滅裂な事を八千流の声でひとしきり騒ぐ。隆也はがむしゃらに走り出す。
「いらっしゃい、どうしたの隆也!?凄く疲れてるようだけど?」八千流の家に着くと汗だくになった隆也が倒れ込む。そして恐怖から震えが止まらないでいた。
「八千流?八千流か?」我に返り隆也が目の前の八千流に話しかける。見るとさっきの化け物の様な顔とは違い何時もの可愛いらしい少女がいた。
「隆也?大丈夫?何だか凄く震えているけど?」
八千流に優しく言われ隆也が泣き出した。
「良かった、助かった!助かったんだ」急に泣き出す隆也を見て八千流がそっと抱きしめる。
「何があったか分からないけどとりあえず上がってよ、大丈夫私が一緒にいるからね」
そう言われ二人が居間へと向かう、そしてそんな二人を窓越しにあの化け物が呟く。
「もう少しだったのに」
第3話完 第4話に続く




