エピソード1
春・・それは時に出会いの季節である。そして、別れの季節でも・・・
ここに一軒の古びた店がある。書斎のごとく本が大量に積み重なり、その中に丁寧に置かれた置き鏡が一つ。縁結び相談所。そこに、ときおり訪れる相談者のお話です。
「カランコロン」
ドアを開ける音が鳴り響く。
今日のお客様だ。
「いらっしゃい!」
店主の掛け声は、いつも通り陽気だ。
「あの・・・縁結びをしてくださるお店はここですか?」
おどおどした声のお客様が扉の前で立っている。
「はい!そうですぜ!」
相変わらず陽気な声で答える店主。
「あの・・・縁結びをお願いしたくて、どんな方でも大丈夫ですか?」
意味深な質問だ。
「大丈夫だよ!」
「そうですか・・安心しました。実は・・・」
ここにくるお客様は人間のみとは限らない。今回のお客様も訳ありではあるが神様だ。
とある人間との縁結びを希望してここにきている。
「実はかれこれ生まれてからずっと、守護神として働いてきたのですが、人間との縁結びをお願いしたくてですね」
矢継ぎ早に話す彼女は守護神だという。
「ほう?それはまたどうして・・・」
店主は聞く。
実をいうと守護神と人間との縁結びは、滅多になく『禁忌』に近いものでもあるからだ。
「はい・・なんといいますか」
頬を赤らめて彼女は答える。