韓国「非常戒厳令」が6時間で解除! 日本の「緊急事態条項案」には制約とチェック機関を!
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は、韓国の尹錫悦大統領(以下ユン大統領)が12月3日22時に突如として起こした「非常戒厳令騒動」について。
そして、有事の際のために新しく憲法に創設されようとしている日本の「緊急事態条項案」との違いについて個人的な意見を述べていこうと思います。
◇ユン大統領は国会で議論すべきことを強引に「非常戒厳令」で抑えつけようとした
質問者:
夜に突如として「韓国で非常戒厳令」というニュースがあって驚きました……。
筆者:
この「非常戒厳令」と呼ばれるものは韓国が軍事政権から1987年の民主化されてからでは(一瞬だけの効力とはいえ)初めて発令されたもので、軍事政権時代を含めても45年ぶりのことのようです。
ちなみに、韓国の非常戒厳令というのは
「戦時・事変」などの非常事態で、軍事上の必要がある場合や公共の秩序を維持するために大統領が出すものであると定義されています。
発令された場合には、韓国憲法では「政府や裁判所の権限に関して特別の措置を取ることができる」と規定されています。
具体的な内容は大統領が、行政、司法の機能や軍を掌握することになり、逮捕手続きの令状なしの簡易化や、国民の言論・出版・集会・結社の自由を制限することも認められるものです。
いわゆる日本で検討されている「緊急事態条項」と呼ばれるものに近い、非常に強力な国会や国民の権利を制限する行政令なのです。
質問者:
「戦時・政変」とも捉えられるような大変なことが起きていたのでしょうか?
筆者:
いえ、ただ単に野党の「共に民主党」が予算案に賛成しなかったり、複数の閣僚の弾劾採決を受けたことで政権運営に支障が出た程度の理由のようです。
これらをユン大統領は「内乱を企てる明白な反国家行為」と突如として言い始めたという事です。
確かに、予算が成立しないことはそれなりに大変なことですが、
政治とは色々な人の意見を聞き妥協点を探ることです。
そもそも支持率の低い政権は「レームダック(死に体)」とも呼ばれます。
特に今の韓国は大統領と国会の優位な政党が違う状況なので、予算が通らないことは普通に起きることです。
自らの政治的調整能力の無さを棚に上げて、国民の政治活動や権利が制限されてしまったり、軍隊が出動し一時国会に突入したような状況は正気の沙汰とは思えません。
質問者:
確かに、それぐらいのことなら国会内の議論で解決して欲しいですよね……。
だから非常戒厳令の2時間半後に全会一致で解除に賛成したのですね……。
◇最悪のシナリオは「韓国の混乱」に「北朝鮮の介入」があること
質問者:
今後の韓国はどうなってしまうのでしょうか?
筆者:
僕は韓国の政治事情にそこまで詳しくは無いので、
「KOREA WAVE」というメディアの日本語版の『韓国・45年ぶりの戒厳令、6時間で解除…「予定された敗北」尹錫悦大統領は一体なぜ?』という記事などを参考にさせてもらいますと、
内乱罪の適用又は大統領弾劾採決が行われる見込みのようです。
大統領弾劾には3分の2以上が必要のようですが、与党18人も戒厳令解除法令に賛成した(他の与党議員は採決に参加しなかった)ことから、大統領弾劾採決も可決の可能性がかなりの確率であるようです。
弾劾採決が成立すれば憲法裁判所が罷免の是非を判断し、非常戒厳令が違憲だと判断すれば、ユン大統領は失職することになります。
ユン大統領の支持率も与党の支持率は20%ほどと、ただでさえ低いようです。
今回の騒動も踏まえるとさらに支持率は下がることでしょう。
大統領選挙をすればまず間違いなく野党の「共に民主党」の候補が政権を奪取することになるでしょうね。
質問者:
共に民主党さん達は、日本にあまり友好的ではない感じがしますから心配ですね。
筆者:
ユン大統領は無理やりにでも日本と友好関係を築こうとしていましたからね。
それは「共に民主党」が反日政策を続けたことから、日本人が韓国から離れてしまったことが経済に悪影響をもたらしたと考えたからのようです。
今後はこれまでの日韓の「慰安婦」や「徴用工」についての問題が「白紙」になる可能性もあるという事です。
ただ、これらは過去の問題であり、未来の不安と言うのがあります。
質問者:
それはどんなことでしょうか?
筆者:
政治不安に乗じて北朝鮮が韓国に介入してくることです。
かつてはオリンピックやワールドカップで南北朝鮮は同時に入場するなど「協調・統一ムード」があったのですが、最近急激に関係が悪化しています。
23年末には金正恩氏は党中央委員会拡大総会で、「南北関係はもはや同族関係ではない。敵対する2つの国家であって統一を目指す相手ではない」と明言しています。
24年10月15日に北朝鮮は軍事境界線の近くにある韓国と繋がる道路を爆破しました。
この道路は日本占領時代からあり、かつては“南北の協力の象徴”とも言われるほどに一緒に整備してきました。
しかし、もう「南北友好はいらない」とばかりに爆破したという事です。
北朝鮮とロシアが「包括的戦略パートナーシップ条約」を結んだこともあり、緊張感が増していき、最悪は韓国の政情不安に乗じて戦争にまで発展するかも分かりません。
◇日本の「緊急事態条項案」は「非常戒厳令」より更に酷い!
質問者:
それは本当に怖いですね……。
そんな韓国を揺るがした「非常戒厳令」と近いのが日本の「緊急事態条項案」や「緊急政令案」なわけなんですけど、大丈夫なんですか?
筆者:
問題だからこうして機会があれば何度も取り上げているという事です。
第50回衆議院選挙で改憲勢力は大きく後退しましたが「超党派憲法改正」の可能性もゼロでは無いと思っていますので「ホット」な時に少しでも話題を広げようと力を尽くしているのです。
話は戻りますが、僕が思うに韓国の「非常戒厳令」の方が日本の「緊急事態条項案」よりマシだと思います。
質問者:
え……どういうことですか?
筆者:
ユン大統領が半ば「ご乱心」だったために今回の一件が起きてしまったわけですが、
この非常戒厳令にはちゃんと発令の定義が「戦時・政変」と比較的わかりやすいです。
しかし日本の「緊急事態条項」の「緊急事態」定義は、現在の段階では「大規模自然災害の発生や外国からの武力攻撃、テロ・内乱、感染症の蔓延等によって、国家が危機にさらされた時」と非常に幅広く、特に大規模 自然災害や感染症については特別措置法を改正していけばいいだけです。
しかも、ついこの間の24年11月29日に厚生労働省令が改正され、風邪の症状を含む「急性呼吸器感染症」が5類に格上げになることが決まりました(施行は25年4月7日か)。
今の状況で「緊急事態条項案」が通れば最悪は「風邪の蔓延で緊急事態条項発動」にもなりかねない状況になってしまうのです。
質問者:
それは極端かもしれませんけど、幅広く定義を入れてしまえばそうなりますよね……。
筆者:
更に、日本の緊急事態条項では内閣の閣議決定の取り下げ以外で、振り上げた強力な拳を降ろすことが出来ません。
韓国では大統領制で国会とで権力が完全に別れている上に、今回のように国会の決議で撤回できるので、6時間で取り下げることが出来たのです。
質問者:
確かに、頑なに内閣が拒否すれば事実上の「無限」とも言える期間を「緊急事態」に出来るわけですからね……。
※案によっては「100日延長ごとに国会の承認を得る必要がある」場合もあるようですが、国会が招集できない場合もあるでしょうし、今後の草案がどうなるかは分かりません。
筆者:
更に韓国には憲法裁判所がありますので憲法における問題について審査することが可能です。
今回も大統領弾劾が国会で成立すれば憲法裁判所で審査されることになります。
一方で日本では最高裁は統治行為論を用いて衆議院の解散、日米同盟、自衛隊の存否などについて、
「高度に政治性のある国家統治の基本に関する行為であり、司法審査の対象外」としています。
憲法に規定されている「衆議院の解散」すらも審査してくれないのですから、「緊急事態条項」についても同じように「司法審査の対象外」となってしまう可能性も高いのです。
質問者:
なるほど、日本の案には全くストッパーが無いんですね……。
筆者:
日本の場合はこれまでを総合すると最悪の場合は、
「風邪で緊急事態条項が発令されて、警察や自衛隊が日本国民の権利を制限・取締りをしている間に、中国が沖縄を、ロシアが北海道の一部を占領」といったことになると思います。
「緊急事態条項」にあたる条文が無いないことは問題かもしれませんが、「緊急事態」の定義や、ストッパーについて考えないことはそれ以上に問題なのです。
いま議論されていることは「議員任期の延長」についてばかりです。確かにここも問題ですが、それ以上にストッパーの方が遥かに大事だと思いますね。
質問者:
確かに暴走したら危険すぎますよね……。
今のままだとコロナ対策の時のような言い訳である「あの時は仕方なかった」とか、政治資金の時のような言い訳である「憲法や法律に則ってやっている」などで終わりそうですよね……。
筆者:
上の「緊急事態の定義」や「ストッパー」の議論が全く進んでいない「緊急時の条項」は問題外なので断固として反対したいですね。
緊急時に「ブレーキの無い時速200キロの救急車」に乗せられるような感じだと思っていただければと思います。
ストッパーがちゃんとある韓国ですら非常戒厳令が発令されてしまうだけでこれだけの混乱になりますから今の日本の政治家の信頼できない感じだと、存在しない方が望ましいと思いますけどね。
ということで、ここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は、
・韓国のユン大統領は国会で政治的議論をするべきところを非常戒厳令で無理やり解決しようとして失敗した。
・韓国は政権交代の可能性が高く、政治の混乱が深まれば北朝鮮とロシアが介入してくる可能性がある。
・日本の緊急事態条項は「定義」と「ストッパー」についての議論があまりにも浅すぎる。
という事をお伝えしました。
今後も日本に関わりそうな国際情勢や日本の政治について個人的な解説をしていきますのでどうぞご覧ください。