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④《失われた絆》

【第四章:失われた絆】

 

 (魅了スキル?…魔王が私を利用?…でも……。)


頭の中に次々と“サクラ”(魔王)との思い出が浮かんでくる。彼女は優しく、私を妹のように扱ってくれた。それに、彼女に“サクラ”の名前を考えた時の彼女の笑顔は本物だった。


「……信じられない」

思わずつぶやいた言葉に、勇者が微かに眉をひそめる。

「何だって?」


「サクラが、そんなことをするはずない。だってお姉ちゃんは……」


「サクラ? お姉ちゃん?」勇者の顔が厳しくなる。


「もしかして魔王のことかい? 君は魔王に魅了され、洗脳されていたんだよ。まだ正気じゃないのかい?」


エリクの言葉に、怒りがこみ上げてくる。

(何も知らないくせに…!)


「違う!」私は立ち上がり、勇者に向かって声を張り上げた。


「サクラは……洗脳なんかしてない!私がサクラに懐いてしまったから……一切魔法が使えない無能だったから……サクラに魅せられてしまっただけよ!」

 「それに、サクラは無意識に魔物を生み出していた。魅了の力も自然と出してしまい、その魅力に私が勝手にかかっただけ!サクラは悪くない!」

私の声に、勇者の表情が険しくなる。

「無意識に魔物を……?」

 

「そうよ!サクラはずっとこの城に一人ぼっちだった。だから寂しくて、話し相手が欲しくて、魔物を生み出してしまっただけなのよ!」

 

 勇者の顔がの顔がさらに険しくなる。

「たとえそうだとしても、、魔物たちは多くの人々を傷つけ、命を奪ってきたんだ!(そう、僕の幼なじみも……)」

 「……だから僕は勇者“エリク”として、全ての元凶である魔王を倒さなければならなかった」


勇者の言葉に、胸が締めつけられる。確かに、サクラが生み出した魔物は多くの被害をもたらした。でも、サクラが全て悪いの?

 

 「僕は魔物によって苦しむ人々を助けるため、そして君を救うために戦ったんだ!」

「助けるため?」

(助ける? それが理由であの人を倒したって?)

 

 「それなら…助けてなんて欲しくなかった!「私は助けてほしかったなんて、一度も思ったことない!私はサクラと一緒にいられればそれでよかったのに……どうして?どうしてあの人を……!」

 叫ぶように言葉が溢れ出し、視界がぼやけてくる。


 もう私と一緒にいてくれたサクラはいない。

  (あぁ……また一人ぼっちになっちゃったな……)

 

「どうして、どうしてよ……」

私はそのまま意識を失った。



――――――――――――――――――――――


〈時は少し戻り、少女が神殿を抜け出し、魔王城で暮らし始めた頃〉


 神殿では、召喚した少女“ツムギ・サクライ”の扱いをどうすべきか議論が進められていた。


「大神官様! 答えは決まっているではないですか! あの女は聖女召喚の儀で呼び出された者。――それにも関わらず、神を信仰せず、魔法も何一つ使えなかった。儀式は失敗したのでしょう。……幸いにもあの偽聖女の存在は公にはなっておりませぬ。『召喚の儀式は失敗した、何者も召喚に応じなかった』として、儀式を再度行い、新しく召喚される者に期待すべきです!

 よって神殿側としては、逃げ出した偽聖女を今のうちに見つけ出し、速攻処分すべきであると考えます!」


「ふむ、そちらの言い分もよく分かった。…………私が預かっている神官たちはこう言っておるが、魔術師側の見解はどうなっておる?」

 冷静な大神官は双方の意見を聞こうとする。



「……申し訳ありませんが、私ども魔術師側としては、そちらのご意見には頷くことはできません。『再度召喚すればいい』と仰っていましたが、召喚には莫大な魔力と高度な技術が必要となります。現状の魔力濃度では厳しく、また召喚を行える者も一人しかおりません。その者は“ツムギ・サクライ”を呼び出した後、伏せっており、今なお本調子ではございません。

 そのため、現段階で、再召喚は厳しいかと……。それよりも、その魔法が一つも使えぬ偽聖女とやらの功績をでっち上げ、民を安心させた方がよろしいのではないですか?……神殿に聖女が居ない理由は、勇者と共に魔王討伐の旅に出た、とすれば納得するでしょう。」


「召喚は厳しいのですか。では一体どうすれば….…。大神官様、どうかご決断を!」


「………では双方の意見を聞いた上で、魔術師側の意見を採用することとする。召喚した少女“ツムギ・サクライ”を《聖女》として称え、神殿の顔とする。魔法に長け、魔物に打ち勝つ力がある一方で、重傷を負った人々をその身一つで癒すことのできる聖なる少女。このイメージで、偽の功績を積み上げ、民に噂を流すのだ。また、聖女は勇者と共に魔王討伐の旅に出たことも説明するように。……その水面下で聖女を探すことも決して忘れるでないぞ。」


「「はっ!かしこまりました!ではその様に…….」」


 こうして、魔法を何一つ使えない少女“ツムギ・サクライ”は神官と魔術師らの思惑により、人々に《聖女》として称えられるようになったのである。




キリのいいところで切ると、どうしてもこの短さになってしまう……

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