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②《魔王との出会い》


【第二章:魅せられて】


 私は魔法の一つも使えない、無力な聖女だった。


「自由になりたい…地球に帰りたい…ママ…お父さん…お姉ちゃん、みんなに会いたいよ……」

「私はこの世界でひとりぼっち…寂しいよ……」


枕元で涙で濡らす夜が続いた。異世界で聖女として召喚されたものの、何の力も発揮できない自分。毎日神官たちに責められ、孤独だった。


 そんなある日、星空でも見て、気分を変えようと窓際から空を見上げた。――それはそれは美しかった。でも地球の星空とは違う配置をしていて、ここは異世界なんだと再認識させられ、余計虚しくなっていた。


「地球に帰りたい…」


視界が涙でぼやける。だが、次の瞬間、視界の端で大きな影が動くのが見えた。


「えっ、何、今の……?」


恐る恐る外を覗き込んだその瞬間、窓から巨大なコウモリのような魔物が飛び込んできた。


「キャッ!」


身がすくんで、護衛騎士を呼ぼうとしたその時、魔物が人間の言葉で話しかけてきた。



「あっ、ごめーん。驚かさせちゃって、道に迷っちゃってさ!怪我はなかった?」


「えっ……?」


驚きのあまり、声が出なかった。魔物が………話している


(恐ろしい…)そう思ったが、その魔物は思いもよらぬことを言い出した。


「君、どうしたの?そんなに悲しそうな顔して、………あのお方と同じだなあ。」


「あのお方……?」


不意に好奇心が湧き出て、私は震える声で尋ねた。


「ふふん、驚くなよ!あのお方っていうのは、魔王様だ!」


「え、魔王!?……どういうこと?」


私が言葉を失っていると、魔物は嬉しそうに続けた。


「そうそう、魔王様さ!でもな、あの人も君と同じ、寂しそうな顔していたなと思ってさ。」


「魔王が……寂しい?」


「そうなんだ!しかもさ、魔王様は美しくて優しいんだぜ? ほら、君みたいな子を見たら、きっと優しくしてくれるさ!」


「優しい……魔王が?」


信じられなかった。魔物がそんなことを言うなんて。だけど、その言葉に少しだけ心が揺れた。


「君も寂しいんだろ? 魔王様も、孤独で悲しい顔をしているんだ。君、あの方と似てるんだよ。」


「私が、魔王と……?」


「そうさ!おんなじ顔をしてる!だからさ、魔王様に会ってみる?君ならきっと気に入ってくれる!」


「でも……」


反論する前に、魔物は私の手を引っ張り、そのまま飛び立った。私は驚きながらも抵抗できず、ただその背にしがみつくことしかできなかった。


空を飛びながら、私は下で小さくなる神殿を見下ろした。護衛騎士たちに気づかれることもなく、どんどん遠ざかる。


「これで、いいの……かな……」


―――――――――――


 長い飛行の後、私は大陸の果てについた。

「ここが……魔王の城……?」

 上空から見えるのは、黒く仰々とそびえ立つ巨大な城。荒涼とした大地に不気味に立つその姿は、どこか威圧的であり、()()るのを躊躇わせるほどだった。


 魔物の背から降ろされ、城門の前に立つ。私は震える足を一歩、また一歩と進め、ついに城門をくぐった。


その瞬間、私は思わず息を呑んだ。


「こんな場所に…こんな美しいものが…?」


 城内に広がっていたのは、闇の城に似つかわしくない、驚くほど美しい庭園だった。花々は夜露に輝き、光を浴びることなく淡く光り輝いている。花の種類は見たこともない異国のもので、まるで魔力で満たされているかのように幻想的だ。庭の中央には水が静かに流れる泉があり、その音が静寂の中に穏やかなリズムを刻んでいた。


「どうして…こんな場所に…?」


戸惑いを隠せぬまま、庭園を過ぎると、目の前には巨大な闇の城が広がっていた。

「ここが、魔王の城?」

「そうさ!さあ、行こうぜ。魔王様が待ってるよ。」


 魔物に促され、私は城の扉をくぐり、城の奥へと進んだ。歩くたびに胸が高鳴り、不安と期待が入り混じっていた。


ふいに空気が重くなり、肌がざわめいた。

(いる!すぐ傍に……)


気が付くと、豪華な大広間の扉の前に案内されていた。


巨大で荘厳な扉がゆっくりと開いていく。



 その中央の玉座に、圧倒的な存在感を放つ者がいた。


 それは思っていたよりも若く、まるで人間の少女のように見えた。長く艶やかな黒髪に、鮮血を思わせるような瞳。浅黒い肌、そして頭には鋭い2本角があり、漆黒のドレスをまとっていた。


「あなたが……魔王…様?」


私は震えながら尋ねた。彼女は微笑んで、私に視線を向けた。


「そうよ、私が魔王。あなたが来てくれて嬉しいわ。」


彼女の声は思ったよりも優しく、柔らかだった。


「ひとりぼっちで、寂しかったの……。あなたも、そうでしょう?」


その言葉に、私はハッとした。まるで私の心を見透かしているようだった。


聖女として無力で、神殿で毎日責められる日々。

居場所を失いつつあり、地球に想いを馳せ、泣き続けていた日々。

無理やり私をこの世界へ召喚した神官たち、ひいては神への恨み。


(そう…私はひとりぼっちで、寂しかった)

(こんな世界、滅んでしまえばいいのに……)


 それに彼女の容姿はまさに“魔王”と呼ぶに相応しいものだったが、声は優しく柔らかで、召喚されてから長く会ってない姉の声によく似ていた…。


「お姉ちゃん…」思わず呟いた。


その瞬間、私は夢を見ているような感覚に陥った。


「これからは、ずっと一緒にいましょう。寂しさなんて、もう感じなくていいわ。」


魔王と私、二人の孤独が重なるような感覚が心に生じ、私は知らず知らずのうちに頷いていた。



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