第7話 山賊ナバル
今騎士団が身につけているのは【炎の聖痕】に登場する下級騎士の鎧をモチーフに作ったものである。
本当はもっと強いキャラが装備していた鎧をプレゼントしてあげたかったけど上級騎士の複雑なデザインの鎧を人数分作るには全然時間が足りなかったのだから大目に見て欲しい。
下級といってもひとりひとりは並の山賊程度が相手なら多少の人数差はひっくりかえせる程の実力があるはず。
「よし、お前達早速山賊の捕縛に向かうぞ。準備はいいな?」
「無論です隊長!」
騎士達は士気旺盛だ。
ドノヴァンさんの指揮の下で騎士達は騎馬を駆って峠に向かっていった。
私たちは騎士団の勝利を信じてその場に留まる事にした。
荷台の上に戻って腰掛けるとお父様がほっとした表情で私を見ている。
「どうしたのお父さん?」
「リーリエ、お前が騎士達と一緒に行くと言い出すんじゃないかと思ってハラハラしたぞ」
「嫌だなあ私そこまで向こう見ずじゃないわよ。確かにこの衣装を着てから少し調子に乗っちゃったけど身の程くらい弁えてますって」
「なら良いんだが……」
「それにしてもいやはや本当にリーリエさんの作る衣装は素晴らしいですね。宜しければ私にも商品として取り扱わせていただけないでしょうか。きっと飛ぶように売れますよ」
「うふふ、考えておきますよエルフリードさん」
三人で談笑をしながら待つ事小一時間。
峠に向かっていった騎士の一人が意気揚々と帰ってきた。
「我が隊の大勝利です! ナバル山賊団の連中は皆捕縛しましたよ」
「今まで誰も捕まえられなかったナバル山賊団をですか? すごい、大手柄じゃないですか」
「これもリーリエ嬢の作った鎧の力の賜物でしょう。ドノヴァン隊長達はそのままナバル山賊団をアルメリア侯爵領まで連行します。私はこの事を王都に報告しなければなりませんのでこれで失礼します」
騎士はそう告げると騎馬を駆って王都の方角へ走り去っていった。
これで安心して峠を通れるようになった。
私達は早速アルメリア侯爵領へ向かって出発する。
峠を越えたあたりで山賊を連行中の騎士団に追いついた。
「騎士団の皆さんご苦労様でした。やりましたね」
「やあリーリエ嬢。見ての通りナバル山賊団は全員捕まえましたよ。これで民衆達も安心して夜眠りにつくことができるでしょう」
見れば山賊達は皆白いジャージを身に着けている。
全員抵抗できないよう両手を縛られ縄で繋がれているいるものの騎士団が彼らを連行する様は私にはまるで前世で他校との試合に望む運動部の学生を先生が引率している様子にも見間違うほどだ。
もっとも正面から見れば山賊達の首から上は髭もじゃのおっさんであり絵面の違和感が酷い。
などと考えながら彼らを追い抜こうとすると山賊の一人が列を離れ荷馬車に近付いてきた。
「え? 何?」
「おいナバル勝手に列を離れるんじゃない!」
「いいじゃねえか別に取って食やしねえよ」
「おい待て!」
山賊は騎士の制止を振り切って私の目の前までやってきた。
今騎士様はこの男をナバルと呼んだ。
ナバルといえばナバル山賊団の親玉だ。
それなりの実力者に違いない。
しかし今の私は女剣士オルフィア。
いくら強くても両手を縛られている状態のこの男が襲い掛かってきたところで返り討ちにできる自信はある。
落ち着いて荷台に積まれている適当な棒を拾い上げて迎撃の態勢をとる。
「おい、そこの女!」
「何よ、私達に何かするつもりならただじゃすまないわよ」
「おめえその服すげえいいな! チクショウ、この騎士達といい一体どうなってやがるんだ!」
「え? 服?」
ナバルは私の服をまじまじと見つめている。
山賊が私の作った衣装に興味を持つなんて予想外の展開だ。
「抜け駆けはずるいぜナバルの兄貴」
「俺達にもよく見せてくれよ!」
「おい、貴様達も勝手に動くんじゃない!」
ナバルに続いて他の山賊達も荷馬車の周りに集まってきた。
騎士達はそんな山賊を抑えるのに一苦労している。
「なあその服どうしたんだ? 今までそんなにすげえ衣服は見た事もねえぜ」
「えっと、私が作ったんですけど……」
「作った!? まじかよ、俺達も一度でいいからあんたみたいな服を着てみたいぜ」
「いい加減にしろナバル」
まるで子供のように目を輝かせているナバルを後ろから近付いてきたドノヴァンさんが取り押さえる。
「お前達のような山賊が彼女の作った服を着れる訳ないだろう。これからアルメリア侯爵領の収容所でたっぷりと今までの罪を償ってもらう事になるんだからな」
「ちっ、俺だって好きで山賊稼業をやってたわけじゃねえよ。俺達は皆貧しい村で生まれ育ったんだ。しかし村を治めている貴族の連中は俺達の事情なんかお構いなしに重い税を取り立てていきやがる。だから生きていく為に山賊に身を落とすしかなかったんだ」
ナバルは聞きもしないのに己の身の上話を始めた。
私の家も決して裕福ではなかった。
だからといってお父さんもお母さんも悪い事には一切手を染めなかった。
あまりにも自分勝手な物言いに段々腹が立ってきた。
少しは懲らしめてあげないと。
「はぁ……そんなに私の作る衣服が気に入ったのなら望む通りにしてあげますよ」
「本当か? ありがてえ」
私が何を考えているのか知る由もなく喜んでいるナバルを尻目に私は鞄から染料と刷毛を取り出した。




