アブソリュートのいない学園2
レディ達アーク派閥が放課後に保健室で雑談に興じていた頃と同刻、王派閥の生徒達は召集がかけられ、空き講堂に集まった。
全学年合わせて百五十人以上いる王派閥の生徒達で講堂は埋め尽くされている。その生徒達の前に、王族であり本来の派閥のリーダーであるカコ公爵家のトリスタンに代わり、ライナナ国王子のミカエルがこの場に立った。
王派閥は国王を支持している派閥である。
国王の息子であり、王族であるミカエルの発言権は王派閥において派閥のリーダーであるトリスタンと並んでいた。
「全員よく集まってくれた。今回呼んだのは他でもない……『アブソリュート・アークの無期限の停学』の件における、王族派閥の、今後の方針を伝えようと思う」
ミカエルの話す内容は、アブソリュート・アークが無期限の停学になったことで学園に浮いた派閥が一つできたことに関して、それをどうするのかという話だ。
アブソリュートの停学の知らせを受け、アーク派閥だけでなく、王派閥や貴族派閥といった勢力も少なからず衝撃を受けていた。
そんななか、各派閥のトップである者達は早々に派内の傘下メンバーに指示を出し方針を出していた。
貴族派閥は荒れる情勢を見極めようと静観を決め。
中立派閥は自身達の被害を抑えようと積極的に情報を集めている。
そして、王派閥はミカエルが召集し、今回の騒動を受けてある方針を示す。
「王派閥はこの機会にアーク派閥を解体させる」
――ザワリ
講堂に集う多くの者が予想外の方針に思わず騒然とした。だが、そんなことを気にもせずミカエルは演説を進める。
「動揺するのも無理もない。だが、今こそが奴等を駆逐する大きなチャンスなのだ!」
誰もがその言葉に戸惑いの色を見せた。それもそうだ。たとえ鼻つまみ者の集団、下級貴族の集まりと雖もそのトップであるアブソリュートは公爵家時期当主。そして、彼自身が実力としても学園上位に立つほどの腕前だ。
いわば、親熊が居ない巣穴に子熊を取りに行ったとしても、いつ親が帰ってくるかなどわからないのだ。たとえそれが、巣穴から離れてとしてもーー。
いずれどうなるかは明らかで、誰も快く賛同ができなかった。
その沈黙を気にすることなく、ミカエルは手前に座っていた生徒に視線を向けた。
「そこの君」
「はっ、はい!」
今回の集会で用意されていたサクラを指差して、打ち合わせ通りに話を振る。
「君はアーク派閥をどう思っている?」
「……あまりよく思っていません。彼等も……貴族ではありますが、彼等からは民に奉仕する姿が感じられません」
ありがとう――そう言って彼を座らせるとミカエルは全体を見回し話を続けた。
「彼の言う通り、君らのアーク派への嫌悪の原因がまさにそれだろう。奴等は私達が本来守るべき弱者から搾り取り、貴族を名乗っているのだ!」
ミカエルの演説に熱が入る。
「アーク派閥。奴等も貴族に名を連ねる者達だがその実態は薄汚い下賎な者達の集まりなのだ!」
奴隷商から成り上がった人買い。
娼館で稼ぎを得る売女。
悪質な品を高額で売り渡す商人紛い。
どいつもこいつも闇組織と繋がり弱者から金を巻き上げ成り上がった小狡い悪党ども、それが共通の認識だった。
「俺は許せない……昔、爵位が金で買えた時代の名残で、奴等のような悪党が貴族然として大手を振るって街を歩けることが。薄汚い悪党と、誇り高い貴族の君達が同列として扱われていることが――」
そう、なぜ貴族達がアーク派閥を毛嫌いし見下しているのか。
それは彼等の所業が原因の一つとなっている。
本来守るべき弱者を喰い物にした稼ぎで貴族を名乗っていること。それは過去に偉大な功績を立てて、貴族になった武家や長年国のために尽くしてきた高位貴族からすれば、目の敵で済まないほどの許し難い誇りを穢す所業だ。
故に、全ての貴族の共通の敵としてアーク派閥が取り上げられている。
『弱者を喰い物にする悪党であると』
「歴代の国王も本来ならすぐに爵位を取りあげるべきだった。だが、生憎それは出来なかった。――憎いアーク公爵家によって!」
熱く語られるミカエルの声が講堂に響き渡る。
誰もがそれを食い入るように見つめ、耳を傾けている。
聴衆は思い浮かべる憎き敵の姿を。
アブソリュート・アークの姿を。
「アーク公爵家の力は強かった。当代も現当主ヴィラン・アークによって彼等は保護され、今も弱者から搾取を続けている。許せるか? 弱者から搾取をしている薄汚い小悪党どもを! 認められるか? アイツらが誇り高い貴族を名乗ることを!!」
――許せない。
どこからかポツリと聞こえた。
そしてその一言が、水面に落ちた雫が波紋を描くように怒りとなって広がった。
許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない。
もとから、アーク派閥に不満を抱えていた者達が多かった。加えて、アブソリュート・アークの【絶対悪】の効果もあり、本来の悪印象がそれを増幅させ、さらに印象が悪くなっていた。
その目からはさきほどまで滲んでいた恐怖の色は消え去り、怒りと強さがあった。
「彼奴らはアブソリュートという大きな光に群がった虫のようなものだ。だが彼等の後ろ盾だったアブソリュート・アークは今学園にいない。潰すなら今の機会をおいてほかにないだろう。安心しろ責任は俺が持つ」
そして責任を自ら背負うというミカエルの言葉が後押しとなりここにいる全員の心が一つとなる。
王族というアーク公爵家よりも強い権力をもつ彼が後ろ盾になることで彼等が内心怯えていたアーク公爵家による報復の心配が無くなった。
リスクなく動ける、それが大きく作用していた。
「亀裂を入れ、反目させ、疑心暗鬼を植え付け――派閥を崩壊させよう」
そして、アーク公爵家からの庇護をなくした奴らは、将来的に貴族を名乗れないほど弱体化し消滅するだろう。
「さぁ始めよう諸君。今こそ貴族の誇りを取り戻す時だ」
賛同する派内メンバーの雄叫びが講堂に響き渡る。
その日からアブソリュート不在のアーク派閥への攻撃が幕を開けた。
♢
アブソリュートへ処分が下された翌日、レディとオリアナ二人で学園へ登校した。
早朝ということもあるだろうが、いつもよりも足取りは重く、二人の雰囲気もどこか重いものがあった。
「はあぁぁぁぁぁ〜〜」
「……」
重く、だがどこか艶のあるため息が廊下に吐き出される。出どころはレディ・クルエル、彼女からだった。
陰鬱な雰囲気すらも絵になる称されるレディは、その容姿端麗さゆえに廊下ですれ違うたび、異性を振り向かせ虜にする。
学園でも一、二を争う可愛らしさと美しさが両立した見た目に、品のある所作。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花とはまさに彼女を形容するのにふさわしい表現だ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はあぁぁぁぁぁぁん」
「……駄目だよレディちゃん。ため息をつきすぎて喘いでいるように聞こえるよ。えっちだよ」
彼女の艶のあるため息は廊下にいる男子達の視線を釘付けにするが、当の本人は気にする様子もなく、湧き出る憂鬱をため息として吐き出していた。
だがそれにも理由がある。
「だって……だって、アブソリュート様が――」
「……うん。まさか屋敷に行っても会えないなんてね」
レディの不調の原因――それはアブソリュートの不在にあった。
先日、放課後で集まった彼女達はアブソリュートに会いに屋敷を訪れた。唐突な無期限の停学を受けたアブソリュートの様子の確認と、彼が不在中の学園での派閥の動きについて相談もかねて赴いたのだ。
勿論本人たちも、頼れる主に会いたいという思いも当然あった。
だが、いざ着いてみると屋敷にはメイドのマリア・ステラしかおらず、目的としていた当人は不在という理由で会うことは叶わなかった。
――いつ戻るのか。
――どこにいるのか。
そしてアブソリュート様は無事なのか。
各々マリアに問いかけるも、彼女から明確な答えは得ることが出来なかった。それがより彼女達を不安にさせ、気分を悪くさせた。
マリア自身も、アブソリュートが極秘任務で他国に赴き、しばらく屋敷を留守にするとしか聞いていなかったため上手く誤魔化せなかった。
そうして彼女達は会うことが叶わぬまま今日を迎えたのだ。
そしてそんな彼女達に畳み掛けるように不幸は訪れた。
廊下の向かいから女子の集団が歩いて来る。
横に広がって歩く彼女達をレディ達は端に避けるも一人がすれ違い様にレディに足をひっかけた。
「アブソリュート様……一体いずこに……っキャア!」
「レディちゃん⁈」
バランスを崩したレディはうつ伏せに転び廊下に体を打ち付けた。
「レディちゃん今……足を引っ掛けられて――」
「ちょっと! どこを向いて歩いているのよ!」
ぶつかった女子生徒がレディに向かってきつく言葉を投げる。
その女生徒は知り合いではないが、相手は王族派閥伯爵家の三女ということは知っていた。明らかに絡みにきているが、爵位を持ち出されれば不利になるということに、僅かにやりにくさを感じていた。
ちなみにオリアナはその女生徒の剣幕に怯えきってしまい、震えて言葉も出せず置物状態になっていた。
「ぶつかったなら謝りなさいよ」
「なっ――足を引っ掛けたのは貴女じゃなくて?」
レディは反抗しようと反論した。
だが、相手の周りの者達が反抗するレディに気を立て、起き上がれない彼女を取り囲むと彼女を責めたてた。
「そうよ、謝りなさいよ!」
「淫乱子爵家の人間のくせに私達に口答えする気?」
「ちょっと顔がいいからって調子に乗らないで」
「ッ⁈」
数の暴力に押されるレディ。
加えて向こうには、人数も多ければ自分達より爵位が上の令嬢もいる。これ以上言い返すことも、被害者として強く出ることも憚られた。周りに助けを求めようとするも皆知らないふりをして歩き去っていく。
(なんなの⁈ こんなの明らかに言いがかり……しかも周りにいる人も誰も止めないだなんて)
確証はないが、明らかに向こうから絡みにきているフシがある。何より、朝の人通りが多い廊下で誰も見て見ぬふりというのも変だ。
(どうしよう……)
分の悪い状況に苦慮しているレディに、一本の蜘蛛の糸が垂らされた。
「貴女達何をしているの?」
芯の通った耳触りのいい高い声がかかる。
揉める少女達の前に現れたのは、燃える炎を彷彿とさせる赤い長髪が特徴の少女。
アブソリュート・アークと同格の公爵家の一角、ゼン公爵家の跡取りであり、自身の派閥に一切の関心も持たないその姿を見て、人は彼女を『孤高の淑女』と呼ぶ。
彼女の名はクリスティーナ・ゼン。
公爵家の人間にして、学園の貴族派閥のトップの才女だ。
「クリスティーナ様……」
さすがに公爵家の人間に噛み付く気はないのか、彼女達に先程までの威勢消えたじろぐ。
「そろそろ授業も始まるし、それぐらいにしておきなさい。まぁそれでも続けるというのなら――五月蝿いから燃やすわよ?」
クリスティーナの周りに熱気に満ちた魔力が、陽炎のようにユラリと流れる。
明らかに本気で燃やす気のクリスティーナに彼女達は青ざめ、固唾を呑んだ。
「失礼いたしました、クリスティーナ様……い、いきましょう皆さん」
クリスティーナの警告を受け、彼女達は足早にレディ達の前から去っていった。
「あ、ありがとうございます。クリスティーナ様」
「貴女も早く教室に来なさい。それと、気をつけなさい。あなた達、狙われているわよ」
そう言葉を残し、クリスティーナは教室へと向かっていった。
授業開始前となってひとけのない静かな廊下には、レディと置物になっていたオリアナだけが残っていた。
レディは緊張感から解放され息をついた。
「ふぅ〜……」
「大丈夫? レディちゃん……」
「えぇ大丈夫、なんともないわ。《《よくあることよ》》」
立ちあがりスカートの汚れを払いながらオリアナに返す。
そう、アーク派閥の自分達にはよくあることだ。アーク派閥は、他の貴族からは毛嫌いされているのだから。
アブソリュートといる前は今以上に酷いものもあったし、暴力や辱めを受けたこともあったーーだが、こんなにもあからさまに仕掛けてくることは最近ではなかった。先ほどの事も偶発ではなく、明らかに向こうには悪意があった。
レディのなかでもやもやとした嫌な予感が頭の中に渦巻く。
しかし、主であるアブソリュートがいない、確定した情報もない今の状況で考えることではない。後でクリス達に話そう。
今日はついていない……、レディはそう切り替えることにした。
「行きましょうオリアナ。遅れてしまうわ」
「う、うん」
そして二人は教室へと歩き出した。自分達の足取りが先程よりも重くなっていることに気づかず――
先程の諍いに心に蟠りを抱えつつ、レディ達は教室へと向かった。
♢
成績優秀者上位四十名が選出される一年Aクラス。それがレディ達のクラスだ。
時間に余裕がなく少し急ぎながら教室の扉を開く。
すると、既に中にいたクラスメイト達がレディ達を見た。
(まただ――なんなの? この感覚は……)
先程絡まれた時と同じような悪意ある視線をレディはクラスメイトから感じる。そんなレディとオリアナは居心地が悪そうに自分の席へついた。
「あっ、おはようございます"リンジーさん"」
自分の隣の席にいたクラスメイトに挨拶をするレディ。
リンジー・カムサス――レディと同じく子爵家の娘で、王派閥に属している。しかし、大人しく気性の優しい彼女は、派閥が違うのでそこまで深い仲とは呼べないが、会えば挨拶もするし雑談もできるほどの関係性だ。
クラスに漂う居心地の悪い雰囲気について、優しい彼女であれば何か聞けないか。そう思っていた。
だが――
「リンジーさん?」
彼女はレディに挨拶を返すことはなく、どこか申し訳なさそうに俯くだけだった。
(無視されている?)
昨日までは普通に話していたのに。避けられるような理由に思い当たるものはない……いや、あった。
「えっ……嘘、なんで――まさか⁈」
レディは気づいた。
別の派閥から、自分達アーク派閥に対してなにかしら命令がでているのではないか。
周りを見渡すと、王派閥の者達がこちらを警戒している。
もしそうだとしたら先程の廊下の件も、リンジーの態度も説明がつく。
これは想像以上にまずいことになっている。
「おはよっす! レディ、オリアナ! どうかしたっすか?」
「ミスト――ちょっと来て!」
「へっ? 授業は?」
「いいから!」
ミストの袖を引っ張り廊下に引きずりだす。
ひと目のつかない廊下の端で今朝遭ったことと教室で感じた違和感を話した。
ミストも普段の糸目を驚きで見開き動揺した。そして真剣な面持ちで考えた。
「この話は、クリスにも共有した方がいいっすね」
「お願い――勘違いだったらいいのだけど……」
その考えも空しい願いでしかなかった。今話し合うもどれも確証もないそしてチャイムがなり二人は急いでクラスに戻っていった。
♢
授業の空き時間、レディとミストはアーク派閥の全員に注意勧告をすると、他のクラスの者達も、皆絡まれたり無視されたりと攻撃を受けていることが分かった。
それでも、こちらに出来ることはない。
直接的な被害が出ていない以上教員も動かないし、最悪なにかあっても後ろ盾の大きな派閥が相手ならもみ消される恐れがある。
今の自分達にできることは、派閥の者同士で固まり、なるべく他の派閥への接触は最低限に控える。これぐらいしかやることがなかった。
昼休みになり私達アーク派閥は寝坊しているウリスを除き、いつものように中庭で集まって昼食を食べていた。
皆、授業中も何かしら被害を受けたようで、愚痴やストレス発散の場へと変わっていた。
だが、仲間達が集まることでどこか皆安堵していた。
ここには仲間しかおらず突っかかてくる人物もいない。
この時間がずっと続けばと中には思うものもいた。
だが、奴等は安息の時間など与えない。
本当にタチが悪い者とは安心しきった時に唐突と訪れるものなのだ。
例に倣い彼等を邪魔する者達が当然のごとく現れた。
「おいおい、君達。誰の許可を得てこの場で食事をしているのかな?」
どこか悪意のある声がクリス達にかけられた。
声の方を見ると十名ほどの王派閥の生徒が、バカにするかのようにニヤニヤしながらこちらに見ていた。
明らかに悪気のある発言に、クリスが怪訝そうに眉を顰めそれに答える。
「どこで食事をしようとこちらの自由ではありませんか? 学園の生徒であれば敷地内には制限などありませんが?」
学園では何処で食事をしようがそこがモラルに反しない限り問題はない。
それを理解しているクリスは毅然と対応し他の者も当然だと言わんばかりに頷いている。
しかし、彼等はそんなことは関係ないと言わんばかりにクリス達へ告げた。
「悪いが今からここは俺らが貸し切る。君達は別のところに行ってくれないか?」
先に食事をしていたクリス達へ邪魔だと。
あまりに傲慢な発言にクリスは当然待ったをかけた。
「いま我々は食事をしています。お使いになられるならお時間を変えていただけますか」
王派閥の上からの要求はクリスが拒否する。
だが彼らはクリスの拒絶にさらに見下したように鼻で笑うと、絶対的な切り札を持ち出した。
「お前達、俺が誰か分かってるのか? 俺はーー《《侯爵家の人間だぞ》》?」
瞬間、クリス達の顔が強張る。
目の前の男の言う通り彼は確かに侯爵家の四男だ。家督を継ぐわけではないし、社交界でも影響力は弱い。だが、侯爵家の人間に変わりはない。
侯爵家はアークやカコといった公爵家に次ぐ立場だ。当然その権力は絶大でありその気になれば下手な下級貴族など潰せるぐらいの力は持っている。
故に彼の脅しの効果は絶大であった。
アーク派閥には爵位の低い者達しかいない。もしクリス達が逆らったとして彼の家が本気でアーク派閥を潰すかは定かではないが、もしかしたらを考えるとアブソリュートがいない彼等は権力的な圧力をかけられるとどうしても弱かった。クリス達が詰まったのをみてニヤリと笑い侯爵家の彼はそのまま畳みかける。
「君たちもことを荒立てなくないだろう? 何、たかが場所じゃないか。今日は別の場所で食べてくれたまえ、まぁ他に場所があるかは知らないがね」
「……あくまでこちらの嫌がらせをしたいわけっすね」
ミストがそう吐き捨てた。
例えこの場を譲っても次は別の者が邪魔しに来るだろう。アーク派閥の居場所をこの学園から無くすまで……。
かといって抵抗しても爵位を持ち出され強く返せない。だがここで引けば味を占めた彼らは今後食事のたびに嫌がらせが続ける。
彼等は行き場のない袋小路に立たされていた。
この状況を打開する術を真面目な彼等は持ち得ない。
このまま場所を明け渡し、嫌がらせを受け続けるしかないのかと真面目なクリス達は考えていた。
だが《《爵位の差を気にしない》》不良ならどうだろうか?
クリス達がどうしたものかと押されていると、この場に遅れて参戦するものが現れた。
「おーす、何を騒いでんだ?」
混沌とするその場にぬるりと現れたのは、虎の獣人の少女。
アーク派閥も含めた全ての派閥で要危険人物としてマークされている女――ウリス・コクト。
学園の問題児がそこに現れた。
少しでも面白い!と思っていただけたら
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