Aクラス
入学式を終えたアブソリュート達はその場でクラスを言い渡された。受験時の成績順AからEと振り分けられる。勿論アブソリュートは上位であるAクラスだ。
もし私が、Aクラスから漏れたら原作ブレイク出来ただろうか……。
一瞬妙案だと思ったが、閃いた考えを即座に否定する。
いや、アブソリュートである私がAから落ちるのは流石にダサすぎる。
私みたいな偉そうな強キャラは一回格が落ちるとすぐにネタキャラ扱いされるからな。
「申し訳ありません。アブソリュート様を補佐すべき立場の私が、違うクラスになるなんて……」
落ち込んだ声でクリスが声をかける。
クリスは戦闘が苦手なので模擬戦の試験であまり評価が良くなくBクラスになった。落ち込むクリスの肩をレディが叩く。
「御安心下さいまし、クリス様。アブソリュート様の補佐はこのレディが務めますので! 何からナニまでお世話させて頂きますわ!」
レディがクリスを慰めるように言うが逆効果らしく、歯をぎりぎりと悔しいそうにならすクリス。
ばちばちの二人を無視する。
「他にAクラスになったのはウチの派閥からはオリアナとミストか……。二人とも良くやった」
アブソリュートはAクラス入りを果たした傘下の者に褒める。
オリアナ・フェスタ
父の側近であるスハイ・フェスタ男爵の娘である。
フェスタ男爵家はアーク家では諜報活動を行っている。
性格は大人しめでいつもレディの後をついていっているイメージだ。
ミスト・ブラウザ
ブラウザ子爵家の長男。
ブラウザ家はアーク家の裏の仕事に対して証拠の隠滅や死体処理を専門で行っている。
最近はアブソリュートの魔法で綺麗に片付いているためにあまり仕事がない。
裏の仕事の度に顔を合わせるようになって、それなりに話せる仲にはなった。
だが、ミストは糸目で腰の軽そうな話し方をするためにどうも信用できずにいる。もし裏切るなら此奴だろうな、と密かに思っている。
「いやいや、アブソリュート様の教育の賜物っすよ。自分一人じゃCがやっとですよ、ホント」
いかにもお世辞のようにおべっかを使うミスト。それに対して、無表情ながらも恐縮ですとでも言うかの様にひたすらぺこぺこ礼をするオリアナだった。
本当にミストはすぐ裏切りそうだよなぁ。言葉の端々と顔から伝わってくる。裏切りが発覚したら容赦しないからなマジで。それに比べてオリアナはいい子だ。
いつもレディと一緒に私をよいしょしてくれる。
「ふん、お前のお世辞はわずらわしいからやめろ。他の者もまだ学園は始まったばかりだ。これから上を目指せ、まだチャンスはある。クリス、レディいつまでそうしているつもりだ? 行くぞ!」
「「は、はいっ!」」
仲良く返事が揃うクリスとレディだった。
他の者達もそれぞれ自分のクラスに向かい、アブソリュート達もAクラスに向かった。
教室の扉を開く。
Aクラスに入ると既に中にいた者達から強い視線を向けられる。恐怖、侮蔑、殺意、興味様々な感情のこもった視線。
こういった視線に慣れてはいるが居心地が悪いのは頂けない。
(うわっ、めちゃくちゃ見られてる。ミカエルは親の仇に向ける顔しているし、あれ? 勇者もなんか睨んでない⁈)
お前との敵対イベントはこの後だろ!
敵対するの早すぎるだろ。いや、原作で最初から敵対してた気もするな、どうだろう。
「流石アブソリュート様、人気者は辛いですわね。大丈夫、私達が、ついておりますわ」
「まぁ、気楽にやりましょうや。アブソリュート様」
「…………………初日からオワコンくさい。帰りませんか?」
レディにミスト、オリアナがそれぞれ励ましてくれる。
気持ちはありがたいが別に傷ついたわけじゃない。
まぁ、慣れているし。ただめちゃくちゃ見てくるから驚いちゃっただけだ。
ていうか、ジロジロ見てくるなんて失礼じゃない!
一応上位貴族なんですけど。一回釘刺しておくか……。
スキル発動【威圧】。
「お前ら、何をジロジロ見ている? 殺すぞ」
(やべ、一言多かった。つい本音が出てしまった)
アブソリュートの威圧を受けてクラスの温度が一気に下がる。いきなりの威圧で、全員が冷や水をいきなり浴びせられたような衝撃を受けた。
震えてアブソリュートから視線を落とす者が多いなか、なかには威圧に耐えているものもいた。
(…………流石に勇者は耐えてるな。襲ってきそうだったが、婚約者のアリシア・ミライが羽交い締めで止めている。ミカエルも震えながら睨んでくるあたりちょっとだけ成長している。それに他にもちらほらと……かなり弱めに放ってはいるけど大したもんだ)
「あの、アブソリュート様……初っ端から喧嘩を売っていくスタイルすか?」
オドオドするミスト。
「この圧力……アブソリュート様ホントに素敵ですわぁ」
見惚れるレディ。
オリアナはレディに同調しコクコクと頷く。
そこで第三者が後ろから声を放つ。
「おい、お前ら入学早々暴れる気か? 元気良すぎだろう。後で発散させてやるから今は席についとけ。なっ?」
声の主は先程入学式で紹介にあった、Aクラスの担任であった。名前はティーチという。
「それは誤解ですわ、アブソリュート様は視線に敏感ですのよ。なのに、教室に入って早々に舐める様に見られるものですから少し注意しただけですわ。ホントに皆さん女性だったらセクハラですわよ」
アブソリュートに代わって説明をするレディ。嘘は言っていない。確かにアブソリュートは注意しただけで手はあげていない。
「いや、普通に殺すと言ってませんでした?」
余計な事をいうミストは放置する。
「そうか、お前らこれからクラスメイトになる人物が気になるのは分かるがあまりジロジロ見るのは失礼だからやめとけよ。アブソリュート・アーク。お前もクラスの連中を威圧するな。敵を作りすぎると今後大変だぞ?」
どちらか一方に偏らず双方に注意か……。
【絶対悪】のスキルで嫌われている筈だと思うが、この先生はかなりの人格者かな?
「肝に銘じておきますよ」
それだけいいアブソリュート達は席に着いた。
教室の中は戦々恐々としていたが、途中で入った担任の介入で事なきを得た。
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