表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/75

固有魔法継承

 アブソリュート・アーク十五才。

 

 ついにアブソリュートは十五才となった。

 今年の春から王都にある学園に三年間通うことになり、入学からが原作のスタートになる。勇者と戦う為の準備は着実に進んでいる。

 クリスとレディが仲を取り持つ形で傘下の貴族との仲は良好だ。原作では勇者の仲間であるマリア・ステラを奴隷にして側に置くことに成功した。仲も良好でマリアが勝手に入ってくるのだが、お風呂もいつも一緒だ。

 

 えっちだなぁ。

 

 更に一番大きいのが、ミカエル王子を王太子の座から下ろしたのが大きい。これで大軍を動かすことが出来なくなった。

 後は、学園で勇者の成長イベントを潰して、勇者の邪魔をしながら聖女への工作を行っていく計画だ。

 十五才になったアブソリュートは、今日アーク家の固有魔法を継承する為、父ヴィランと殺しあわなければならなかった。

 アーク家の屋敷の中にある室内習練場にて親子は向かい合っていた。

 嵐の前の静けさというものか、空気は張り詰めている。

 

「アーク家の固有魔法『精霊召喚』は高位精霊を呼び出して使役する魔法だ。この魔法は初代アーク家当主が精霊王と縁を結び、受け継がれてきたものだ。それを継承するためには現在の所有者を殺し、この体に埋め込まれた精霊紋を奪い取らなければならない。もちろん私もただで殺されてやるつもりはない。アブソリュート、覚悟を決めろ」

 

(……まさかアーク家の魔法がそこまでヤバイものだとは思わなかった。原作でヴィランが出てこなかったのは、継承の際にすでに死んでいたからだったのか。なんかアーク家ってめちゃくちゃ血に塗れてるよなぁ)

 

「父様、覚悟はできていますよ。そういえば、最後に手合わせをしたのは十才の時でしたね」

 

 両者は仕掛けるタイミングを計るようににらみ合う。

 場が静まり返るなか、初めに仕掛けたのはアブソリュートだった。

 

「ダーク・ホール」

 

 アブソリュートは開幕から得意魔法を使う。闇の魔力の中からおびただしい数の魔力の腕が生えヴィランを襲う。

 だが、ヴィランは動じない。

 抜刀し、自身の剣に魔力を込める。

 

「黒炎斬」

 

 ヴィランは剣に黒炎を纏い、炎を纏った斬撃を飛ばし魔力の腕を切っていく。

 アブソリュートは驚く。今のアブソリュートのレベルは九十を超えている。そしてこの世界の兵士の平均レベルは20。ライナナ国物語の原作ではレベル50以上のキャラクターはアブソリュートしか知らない。だが、ヴィランの力は確実にレベル50以上だと感じた。

 

「アブソリュート、お前は親の目から見ても強い。だが、俺とお前では潜ってきた修羅場の数が違う。若いお前に言うのは酷だろうがな。さぁ次は私からいくぞ!」

 

 ヴィランが剣を上段で構え、一気に距離を詰めてアブソリュートに斬りかかる。アブソリュートも剣で応戦し、二つの刃が合わさる。

 

 キィーーーーーーーン

 

 力は互角に見えた。

 だが、攻めているのはヴィランだ。

 防ぎにくい下段への薙ぎの斬撃を、アブソリュートの足元に飛ばす。

 地面を蹴り、空中へ回避するがそこを狙っていたかのようにヴィランの突きがアブソリュートを襲う。

 

「ダーク・ホール」

 

 魔力の腕で自身の身体を勢いよく突き飛ばし突きを回避する。ヴィランの突きが空を切り対象を失った突きが壁を突き破る。

 当たればただではすまない威力を誇った攻撃だった。

 アブソリュートは、レベル差があるだろう父がここまで強いとは思わなかった。

 

(長年にわたり、ライナナ国を裏で守ってきた男だ。強いとは思っていたがまさかこれほどとは……)

 

 ここまでは二人の力が拮抗していたが徐々にヴィランが押され始める。アブソリュートも本気ではあったがまだどこか余力を残していたのに対して、ヴィランはアブソリュートの圧倒的な力に全力を出さざるを得なかった。つまりは、スタミナが切れてきたのだ。


「流れはこちらにある。いくぞっ!」


 アブソリュートによる圧倒的な力の差による蹂躙がヴィランに襲いかかった。


 ♢

 

「強くなったなぁ……アブソリュート」

 

 予想以上の強さを見せる息子に胸が熱くなる。

 息子の母親はアブソリュートを生んですぐにアーク家を去っていった。父である自分も、仕事にかまけてあまり相手をしてやれなった。アーク家という特殊な家で、幼い頃から戦場に立たせてきた。

 他国の勢力から国や領地を守る為とはいえ、アブソリュートには申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 ヴィランはアブソリュートの強さに素直に成長を喜ぶ親心と、幼いころからアーク家の重責を背負わせ、強く成らざるを得なかった申し訳ない気持ちを感じていた。

 ヴィランの心は複雑であった。

 

「これで最後だ! 私を越えろ、アブソリュート‼︎ 固有魔法『精霊召喚』≪アーク・サモン≫いでよ、『開闢の精霊』」

 

 精霊を呼び出し使役する固有魔法『精霊召喚』≪アーク・サモン≫。

 呼び出される精霊は『精霊王の系譜』といわれる精霊王直轄の十二体の中から選ばれる。

 精霊のランクとしては精霊王の次に高いランクを誇りその力は強大だ。

 だが、本人の資質や精霊との相性により呼び出せない精霊も多く、ヴィランは十二体のうち三体までしか呼び出せない。

 今回呼び出された『開闢の精霊』。戦闘に特化した精霊である。

 解放されたことにより、ヴィランに呼び出された精霊が姿を表す。人型の、白い色をした騎士のような見た目。それは人では及ばない美しさを持った存在であった。

 開闢の精霊が多数魔法陣を展開し、上級魔法を次々と放ってくる。

『バーニング』『アクアコール』『アースクラッシュ』『メテオ・ワン』

 業火が、津波が、巨大な岩が隕石のような魔力の玉がアブソリュートめがけて襲う。


「これは……災害か、何かか? 精霊王の系譜の上位精霊か……理不尽すぎる」

 

 レベルの高い者にしか使えない上級魔法を同時に展開できる無法技。

 その無法技を可能にする圧倒的な魔力。

 これが上位精霊の力である。

 

「ダーク・ホール」

 

 アブソリュートはそれをおびただしい数の魔力の腕で防いでいく。精霊とアブソリュート両者の魔法の実力は拮抗していた。

 

「強い力は持っているが戦い方を分かっていないな。強い魔法をただ撃っていれば勝てるわけではないぞ。開闢の精霊」

 

精霊は魔力の腕に気を取られるあまりにアブソリュートを放置しすぎた。アブソリュートは精霊との距離を詰めて精霊を殴り飛ばす。

 

「…………」

「終わりだ。ダーク・ホール」

 

 精霊が殴り飛ばされた所を魔力の腕で拘束し、精霊との決着はついた。

 

「ここまでだな。強くなったな……アブソリュート」

「勝敗はすでに決まりましたので、私としては死体蹴りのようなことはしたくないのですが。そもそも継承のシステムはどうなっているのです?」

「甘いことを……そうだな。息子にそこまでの業を背負わせるのは忍びないな。私の父も同じ気持ちだったのか」

 

ヴィランは自分の心臓を自らの剣で突き刺そうとする。

 

「なっ⁈ 何故だ」

 

 ヴィランは胸を貫くはずが、アブソリュートの魔力の腕によって自害を阻害された。

「何をしているアブソリュート! 私が死なねばお前は固有魔法を継承できなのだぞ!」

「……父よ。貴方はこの国の為に自らの人生を棒に振ってきました。なのに、最後は固有魔法を継承するためだけに命を落とすなんて、あんまりではないですか。私は自らの親を犠牲にしてまで得た力など欲しくはありません」

 

 原作のアブソリュートは恐らく、死が日常になっていたことでこの力を継承することに躊躇いはなかったのかも知れない。だが、前世の価値観を併せ持つ現在のアブソリュートはそれが受け入れられなかった。

 

「……本当に甘いな。だが、どうする? 私が死なないと精霊と契約できないぞ」

 

 アブソリュートは解決策を既に出していた。

 

「それについては考えてあります。父様が呼び出した精霊と契約を直接結ばせて下さい。固有魔法と比べて契約した精霊しか使役出来ませんが、それをもって継承の儀としましょう。固有魔法については父様が老衰で死んだ後、受け継がせてもらいます」

「高位の精霊と契約するには莫大な魔力がいる。人間では無理……いや、異常なほどの魔力を有しているお前なら可能か」

 

 考えもしなかった発想にヴィランは笑った。

 

「そうか……敗者は勝者の言うことに従うことにしよう。アブソリュートよ。本格的な継承は出来なかったが確かにお前は精霊の力を手にすることになる。三年後、学園卒業と同時にアーク家の当主はお前だ」

「謹んでお受け致します」

 

 こうして、固有魔法継承は本契約を精霊と交わすことで疑似的にアーク・サモンを再現することで決着した。



◇ヴィラン視点

 ヴィラン・アークは現在王城にて国王とあっていた。

 

「生きてまた会えるとはな……何はともあれ君が生きていて良かったよ。ヴィラン」

 

 国王とヴィランが堅い握手をかわす。二人は幼い頃から共に育った幼馴染だった

 

「あぁ、死に損なってしまった。多くの人を殺し、実の父をも手にかけた私がまさか生き残るとは思わなかった」

 

 ヴィランは自嘲した。

 

「そんなこと言わないでくれ。君は、君達アーク家は国の為に誰よりも貢献している。幼馴染というだけで君は私を何度も助けてくれた。私は本当に君が生きていてくれて嬉しいよ、ヴィラン!」

 

 二人は幼い頃から一緒だった。それは友人という関係でアーク家を王家に縛る為のものだったが、それでも二人は確かに友人だ。

 

「本当はミカエルにも、私とヴィランの様にアブソリュートと上手くやって欲しかったのだがな。アブソリュートは国王の私から見ても優秀すぎる。ミカエルは劣等感と偏見のせいでもうアブソリュートとの良い関係は望めないだろうな。なぁ、アブソリュートと娘のハニエルの婚約考えてくれたか?」

 

 国王はアブソリュートをなんとしても王家に縛りつけたかった。ミカエルとの友人関係を築くのは諦め、娘ハニエルの婿に迎えることを画策していた。

 

「すまんな。俺はすぐに死ぬつもりだったから忘れてたよ。死んでからアブソリュートに丸投げしようと思ってな」

 

ヴィランはあっけらかんと笑ったが国王はその答えに肩を落とした。

 

「まぁ、アブソリュートは言葉には言わんが私の様に王家や国の為に裏で手を汚すことに辟易している。アブソリュートが当主になったら、自分となんの関係もない王家の為には働かないだろうな。もし、アブソリュートの納得する見返りを王家が用意できなければ、私の代で裏の仕事は廃業だよ」

 

 ヴィランの言葉に国王は頭を抱えた。

 現在のライナナ国の国防を裏で守っているアーク家の次期当主が、王家に不満を持っているのだ。ミカエルの件での失態もある。 

 国王はなんとしてもアブソリュートと娘を婚約させようと策を練るのであった。



 ついにアブソリュートは精霊と契約を結ぶことができた。この力は今後勇者と戦ううえで大きな力になるだろう。 

アブソリュートは父が『精霊召喚』≪アークサモン≫で呼び出せる十二体の内の三体から一体を選び契約した。

アブソリュートは契約した精霊の能力を確認する。

 

「精霊の種類は『献身の精霊』か……サポート特化の精霊。能力は魔法範囲の拡張に身体強化そして献身? こいつが戦えるようになる能力か。ちなみにお前名前はあるのか?」

 

 精霊は首を振る。

 精霊にはこちらの言葉は通じるが人間界では話すことができない。

 いつか精霊界に言って会話してみたいものだ。

 

「そうか。ならお前はトアと名付ける。トアは小さくなれるか」

 

 トアはコインくらいの大きさに変化した。

 

「そうか…お前には今後私と常に一緒にいてもらう。外にいる時は身体を小さくして私の肩にいろ。これから学園に入学して忙しくなるからな。頼んだぞ、トア」

 

 トアは小さく頷いた。 



※アブソリュート・アーク

15才

・カリスマV9…魅力にかなり補正がかかる

・王の覇道V9…自身のステータス上昇

       敵のステータスを下げる

・絶対悪V9…ステータスが伸びやすくなる

       相手への印象が悪くなる 

       聖の者への特別補正 

ステータス 

レベル  :91

身体能力 :500

魔力   :3400

頭脳   :100


契約精霊 

『献身の精霊』(トア) 

能力

魔法範囲の拡張 身体強化 献身


習得魔法

火、水、土、風、回復、闇


技術

剣術、拷問、グロ耐性 精霊使い 


少しでも面白い!と思っていただけたら


『ブックマーク』の御登録と広告下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
akuyaku  書籍第三巻予約開始です。発売日は1月31日です。  よろしくお願いいたします。 akuyaku  夏野うみ先生が描くコミカライズ版第2巻発売中です。 コミカライズ化されたアブソリュートを是非見て下さい!   
― 新着の感想 ―
[良い点] えっちだなぁ。からの継承という名の殺し合いは落差がひどすぎるんですよね……お父様生きててくれて良かった! 国王様お前親友だったんかい!そういえば息子自慢を聞かされてたね! [一言] 経験…
[良い点] ほんとだよ、国のために汚れ仕事して最後は息子に殺されるのを受け入れるなんてあんまりだ 生きてて良かった
[良い点] ヴィランが死ななくて良かった〜っ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ