王子からの呼び出し
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武闘大会から数日が経った頃、ミカエル王子からウルを連れて王城に来いと書簡が届いた。
ミカエル王子はパーティー等で何回か話したが年相応のクソガキな印象だ。
原作で、主人公の勇者サイドについておりアブソリュートを潰せるだけの兵力を出したのも恐らくミカエルだろう。
(どうせ碌な用じゃないだろうが、今はまだ敵対するわけにはいかないな…。しょうがない…行くか)
「ウル、これから私と王城に行くぞ。ミカエル王子が用があるとの事だ」
「え、え〜っ⁈ウル何かしましたの?殺されるの?」
分かりやすく狼狽えるウル。いきなり王城に呼び出されたのだから仕方ないだろう。
「お前に心当たりがないなら殺されることはないだろう。恐らく、この前の武闘大会でお前を気に入ったからよこせ、そんな感じだろう」
ウルは泣きそうになりながら上目遣いでアブソリュートをみる。
「ウル、捨てられるの?ご主人様はウル嫌いなの?」
(…中々グッとくるな。やはり女の涙は最強だ)
「安心しろ。私からお前を手放す事はしない。もし、ミカエル王子から来いと言われたらお前が嫌なら断れ。そうしたら私が全力で守ろう。お前は私の物なのだから」
「ウルは…ご主人様のものなの」
ウルは安心したのかアブソリュートに抱きつく。
(まだ幼いし、これくらい許してやろう)
しばらくウルの好きにさせてやったアブソリュートだった。
ライナナ国王城
「よく来たな。アブソリュート・アーク、そして奴隷のウル。歓迎しよう、まぁ座れ」
王城についた私達は客間に通され着席する。だが、その歓待は決して気の良いものではなかった。
「この大勢の近衛兵はどういうことですかなミカエル王子?護衛にしては多すぎるでは?」
客間に座る私達を囲むように近衛兵は待機していた。
(…脅しにしてはあからさますぎる。ミカエル王子はかなり危険だな)
アブソリュートは心の中でミカエルに対する警戒レベルを一つあげる。
「そうか?私は次期国王になる身だ。私の身に何かあっては大変だと護衛がうるさくてな。まぁむさ苦しいだろうが我慢してくれ?」
白々しく肩を竦めるミカエル王子。
ウルは警戒して尻尾を立てている。私さウルを落ち着けるために軽く背中を撫でる。
「承知しました。それで?本日の要件を伺っても?」
さっさと帰りたいのでサクサク話を進めることにする。
「何、すぐ終わるさ。お前がさっさと応じればな?お前の奴隷を俺に寄越せ。そうしたら無事に返してやるよ」
(…言うとは思ったが、ここまで高圧的な行動を起こすとは。コイツ頭大丈夫か?私はライナナ国を裏で国防を担っていりアーク家の次期当主だぞ?私にそっぽ向かれたらお前の代でこの国終わるぞ!
まっこれではっきりしたな。こんな奴の為に誹謗中傷を受けながら裏で働くなんて御免だ。これからは付き合いを考えさせてもらおう)
「お断りします。用件はそれだけですか?では私達はこれで失礼します」
席を立とうとするが、そこで私の首元に剣先が当てられる。
「…何のつもりですかな?近衛兵達は何故抜刀している?警告だ。2度目はないぞ?剣をしまえ。」
警告するが、近衛兵達は剣をしまう気配はない。
「くくっ!あの悪名高いアーク家の者がここまでバカだとはな!お前のようなガキが、この人数の近衛兵に何ができる?お前みたいなバカは痛い目を見せないとだめなようだな!どうだ奴隷、俺の元へくればお前だけは助けてやってもいいぞ?」
ミカエルがウルに問うが、もうウルの答えは決まっていた。ウルはアブソリュートの腕に抱きつく。
「ウルはご主人様の物なの!ご主人様はお前らみたいな奴らに絶対負けないの‼︎べーっだ」
ミカエルは額に青筋を浮かべる。
「ふん、そうか…どうやら主従揃って死にたいらしいな。お前らは私に向かって剣を抜いた所を近衛兵にやられて死亡。こういう筋書きだ。お前らコイツらを殺せ!」
「「「「はっ!!!」」」」
合図とともに近衛兵達が剣を振りおろした…。かのように思ったが彼らはアブソリュートに時間を与えすぎた。
「な、なんだこれは⁈身体に黒い手が巻きついて動けない!」
ダーク・ホール
アブソリュートの魔法だ。自身足元から闇の魔力を伸ばしこの部屋中に広げておいたのだ。
今はこの部屋の中ならどこからでも魔力の腕を生やすことができる。
「な、なんだ⁈これは一体何が起こっている」
ミカエルは状況が理解できずに狼狽えるだけだった。
全員動けないことを確認し、アブソリュートはウルに指示をする。
「ウルよ…この部屋からでて人を呼んでこい。ミカエル王子がご乱心になって近衛兵にアーク家の子息の殺害を命じたとな」
「はいなの‼︎」
早速とウルが出ていった。
(後は時間の問題だな…)
アブソリュートは近衛兵から剣を奪い取り近衛兵の腕を切り落としていく。
「ーんー!」
ダーク・ホールの腕で近衛兵の口を塞ぎ悲鳴を上げられないようにしたので唸り声だけが部屋に響く。
「…お前ら、何でこんなことをするって顔してるな、言ったよな?2度目はないと…」
近衛兵達の腕を切り落とし終えたら、ダーク・ホールで落ちた腕と血液を回収して近衛兵達への罰は終了だ。
アブソリュートはミカエルに向き直る。
「お前…結局何がしたかったんだ?奴隷1人の為に高位貴族の後継を殺そうとするなんてしないだろう?普通は」
ボソっ
「…気に入らないんだよ」
ミカエルが何か言うが聞き取れない。
「何だ?聞こえない」
「気に入らないんだよ!お前のその目がっ‼︎
態度がっ‼︎存在がっ‼︎目障りなんだよぉぉお」
(…すげぇ嫌われようだな。これも『絶対悪』のスキルのせいか?)
「………そうか。だがお前は私を殺そうとした。これからどうなるか…分かるな?」
アブソリュートは『王の覇道』のスキルを発動。この部屋全員を威圧した。
あまりの圧力に近衛兵とミカエルは顔を青くし、ただ怯えることしかできない。これではどちらが王族か分からない程の姿だ。
そこで勢いよく扉が開き中に人が入ってきた。
「そこまでだ‼︎双方剣を捨てろ」
入ってきたのは意外にも国王だった。
「これはこれは陛下ご機嫌如何ですか?」
不機嫌だったアブソリュートは皮肉を交えて言ってやった。
「…最悪だ!」
国王は腕を失った近衛兵達の惨状とミカエルの姿を見て恨みましげにアブソリュートを見る。
国王が来たと同時にスキルが解かれ安堵感に近衛兵とミカエルは気絶したのだった。