金色の髪と白い肌
【前話までのあらすじ】
ゼルドの地に入るための試練に打ち勝ったライス。それはライスの折れることない意志と仲間との強い絆によるものだった。ライスたち果樹園パーティは誰一人欠けることなく『刻印の扉』を通り抜けた。
◇◇◇
ライスたちが『氷結の盾』の中へ入った後、ビュルスはルヴァーに問い詰められていた。
「ビュルス、お前にはいろいろと聞きたいことがある。まずはその子供は何だ」
ルヴァーはビュルスの横で当たり前の顔でスンとしているリュキュエスを指さして言った。
「おっさん、人のことを指で指すなって親に教わらなかったのか? 育ちがわかるぞ」
「こら、リュキュ、お前は余計なこというな。だが、リュキュの言う通りだ。私の娘に対して失礼だ」
「そいつは.. 女なのか?」
「むかつくな、こいつ。そう言うこと言われると、あたしだって傷つく心あるんだぞ」
「ルヴァー、リュキュエスは俺がある村の孤児院から引き取った子供だ。幼少でありながら大人相手に喧嘩をしては、ケガをさせて厄介者扱いされていた」
ビュルスはリュキュエスのコンパクトにまとめた髪をといた。そして濡れたタオルで顔を拭いた。
櫛を通すとその金色の髪は光を放つほどキラキラしていた。泥の付いた顔を拭くとその下には『透き通るような肌』という飾り言葉が当てはまるほどの雪よりも白い肌が姿を現した。
「この子は13歳くらいだ。生意気で好戦的、そして雪のように白い肌。どうだ、ルヴァー、心当たりはないか?」
「まさか、この子はゼルド国の子供か? いや、ゼルドの子供が一般の孤児院いるはずがない。もしや『アーロス』からやって来た子供?」
「それはわからない。それを確かめるためにこの子を連れてきたんだ。それに、もしもこの子がお前らと同じ血を引くのなら、ゼルド国を知っておいても良いと思うのだ」
「なるほど。その子の事情はよく分かった。それで.. お前は何のためにここに来たのだ?」
「 ..」
「都合が悪くなると黙るのは相変わらずのようだな。私は名前を聞くまでは貴様の顔などとっくに忘れていた。だが、姉は違った。お前を遠くから見た瞬間に思い出していた。いや、ずっと忘れてはいなかった」
「ああ、わかっていたよ。それにルヴァー、お前にも悪いことをしたと思っている。勝負を反故にされることがゼルドの民の屈辱だということも知っていた」
「貴様! まだわかっていないのか。お前が謝るべきは俺ではない、置いて行かれた.. 」
ルヴァーは台座の方で作業をするフレイディスを見ると、それ以上の言葉を思いとどまった。そして最後にボソリと吐き捨てた。
「お前はいろいろ選択を間違えたんだ。まぁ、いい。どんな用件で来ようがここに貴様の居場所はないのだからな」
「ああ、わかっている。俺がいくつもの選択を間違えたのもわかっているよ」
「おっさん、あまりパパをいじめるなよ。相手になるぞ」
リュキュエスは拳をパキパキ鳴らし始めた。
「まったく生意気な子供だ。ランドでもここまで生意気な口はきかない。まぁ、ついて来い。ゼルド国を案内してやる」
一方、ルヴァーの姉である白い髪のフレイディスはランドと一緒に台座の血判本の確認をしていた。
血判本にはライスたちの素性が書いてあるからだ。
「あら、面白いわね。あのギガウという大きな男。名前が違うのね。本当の名前はギュルヴィ・グンナル。きっと孤児だったのね」
「へぇ、あのおっさんかなり強いぜ。まぁ、俺はその前にあっちにいるリュキュエスって女との再戦が楽しみなんだ」
そう言いながら拳を鳴らすランドを見てフレイディスは微笑んだ。
「おかしいわね。もうひとつ妙なことがあるわ」
「なんだよ。また名前が違うのか? 孤児には珍しくないことだぜ」
「違うのよ。名前が浮き出ていないの。空白なのよ」
「そんなはずねぇ。この血判本に嘘はつけない。空白何て.. あれ、ほんとだ。面倒くさいから俺が書いておく。何て名前だっけ?」
「確かライスって言ってたわ」
ランドはペンでライスのページに名前を書き込んだ。ついでに名前の横に適当に17歳と記入した。




