年に1度のハロウィン
「よっと…」
外に出た。外は寒く、白い冷たい粒が舞っていた。雪だった。
「今年は降るの,早かったんだね」
雪といえばクリスマスがこの国では喜ばれるらしい。知らないけど。
寒いであろうに、街の中では仮装した姿で歩く人で溢れている。それはもう普通の人なら歩けないくらいに。
「私には関係ないけど」
すいっと歩いた。人混みも、私には何の関係もない。この世界の人間に私を触れることなんてないのだから。
「それにしても」
と思う。ハロウィンとは元々この世界にお化けが溢れてしまうから、お化けのふりしてやり過ごそうというのが名目ではなかっただろうか。
それを何やら露出の多い格好で歩いて、中には男女で話をして建物に入っていくものも見えた。何がしたいのやら。
今回の鬼ごっこ、いや隠れん坊だろうか。それが終わるまで私はこの街中を見ていくことにした。
街中には酒の空き缶、沢山のゴミ、吐瀉物、なんなら人も転がっている。人が倒れてようと全く気にしなくなったのはいつからだろうか。
少し離れを歩いてみることにした。そこでは少し人が少なくなっていたが、騒がしい人たちはやっぱりいた。
そのうちの1人が昔聞いたことある曲を熱唱していた。誰にも気付かれないようにそっとお金を入れておいた。
「今年は来るのかな」
約束していたわけではない。ここに来ることを告げたわけでもない。
それでも彼は毎年私の前に現れた。だから私も毎年こちらに出るようにした。
この広い星から場所も知らせずに1日で見つけろ,なんて普通の人からしたらとんだ無理な話だよね、なんてちょっと笑ってしまう。
「まぁそれでもーーー」
「りあさん!すみません、遅くなりました!」
「うぅん、来てくれてありがとうー」
見つけてくれるのが彼なのだ、って思う。
毎年毎年,よく飽きないもので。
「今年こそりあさんを魔女の呪いから解いてみせますから!」
「私は今のままでも気にしないんだけど」
「そう、ですね。でも僕は、1年に一度しか会えないなんて嫌です。ずっと一緒にいたいです!」
我儘だなぁ、そう思った。でもその我儘も実はほんのり嬉しくて。それを悟らせるのは悔しい。
私は幼い時に魔女の呪いをかけられた。そのため魔女に近しい存在になり、この世界が魔界と近くなるハロウィンの1日しかこちらにいられなくなった。
私としてはそういうこともあるか、と思うし、魔法の力を使えるので不自由はないのだが、
彼だけはその現状に憤慨して、なんとか打開策を練っているらしい。色んなオカルトの知識を手に入れて、もう少しだ,とそう言っていた。
「うん、私も君が私の呪いを解いとくれる日、いつか来ること願っているよ」
なんて。本音だけど本音じゃないことを言ってしまう。
だって、私が呪われてる限り,彼は私のことだけを考えてくれるでしょう?
それならそれでいいかな、って思ってしまう。
それが私から彼への愛であり呪いなのだから。
「じゃ、今年はどこいこっか」
私は彼に手を差し伸べた。
彼は顔を真っ赤にしながらその手を取った。