巻五 登場人物および関連地図
◎草原全土
■ジョルチ部
《フドウ氏》
インジャ……本編の主人公。のちのミノウル・ハーン。数多の盟友とともに草原を統一する英雄。称して「義君」。敵人からは「亡族の小僧」と呼ばれる。
タンヤン……身の丈八尺の長身。大将旗を護持する。
ムウチ……インジャの母。のちの聖母太后。夢に天王に会う。
ハクヒ……インジャの伯父。フウの兄。テクズスの追撃からムウチを守る。ウリャンハタ部との戦でインジャの身代わりになり戦死。インジャ即位に伴って「万戸侯神威将軍」に封じられる。
《ジョンシ氏》
ナオル……インジャの最初の盟友。胆力に卓れた智勇兼備の良将。諸将の信頼厚く、山塞では副主。インジャ即位に伴って「右王」となる。
シャジ……ジョンシの宿将。
テヨナ……ウルゲンの妻ボドンチャルの侍女。小ジョンシ滅亡の際、インジャに直言して感心される。
《キャラハン氏》
セイネン・アビケル……ベルダイ右派に敗れ、インジャに投じてその盟友となる。知謀衆に優れ、神算鬼謀を以てズラベレン氏を降す。近衛軍(紅袍軍)を統轄する。
《ズラベレン氏》
コヤンサン……ズラベレン三将の筆頭。勇猛にして豪放。神都では酒乱の悪癖が禍を招く。小ジョンシ戦で先鋒を願い出たが、ドルベンの策に嵌まり敗れる。
イエテン・セイ……三将の一。寡黙で冷静。
タアバ……三将の一。ひと言多い。
《ベルダイ左派》
トシ・チノ……「チノ」の号を持つ。ジュレン部に追われ、インジャの山塞に投じる。ベルダイの衆をよくまとめ、インジャ即位に伴って「左王」となる。
チハル・アネク……キハリ家の女将軍。二条の鉄鞭を操る。かつて密偵と誤ってインジャを捕らえる。山塞の戦で勇名を馳せる。インジャ即位に伴って、ハトンに冊立される。
キノフ……医道に通じた娘。「天仙娘」と称される。
サイドゥ……トシ・チノの片腕。知謀の将。ベルダイ右派との戦で先知の才を見せる。称して「長韁縄」。
トオリル……指揮統率に卓れる良将。献策するも容れられず、出奔してインジャに投じる。
カトラ……「双璧」の一。渾名は「隼将軍」。
タミチ……「双璧」の一。渾名は「鳶将軍」。
ナハンコルジ……部将。
ノイエン……身の丈九尺の巨漢。ナーダムの奉納相撲でカトラを破り、「飛天熊」と称される。
カナッサ……写生に長ける。称して「金写駱」。
アンチャイ……キハリ家の娘。野盗に襲われたが、ゴロに助けられる。マシゲル部のギィに嫁ぐ。アステルノに捕らえられたが、チルゲイのはたらきでギィのもとに帰った。ギィ即位に伴って、ハトンとなる。
《アイヅム氏》
コニバン……テクズスの子。仁に富む好漢。サノウの計で山塞に降る。山塞の守将の一人となる。
■タロト部
マタージ・ハーン……ジェチェンの第三子。インジャの盟友。ジェチェンに代わって即位。のちの「通天君王」。ウリャンハタ部に敗れ、インジャと行をともにする。タムヤを宰領し、広大な牧地を得る。
ゴルタ……猛将。インジャの初陣を輔ける。タロト部の左王。
マジカン……マタージの兄。タロト部の右王。連丘で火計に遭い、戦死。インジャ即位後、「鎮山侯」の号を贈られる。
ジェチェン・ハーン……「メンドゥの妖人」と称される。ウリャンハタ部の奇襲で命を落とす。インジャ即位後、「大王」の尊号を贈られる。
■カムトタオ(ジュレン部)
イェリ・サノウ……大興の王族の末裔。人嫌いだが知謀才略は傑出している。セイネンと同窓に学ぶ。招かれて山塞に投じる。ジョルチ部を国家とするべく大権を授けられ、断事官に任命される。
ハツチ……身の丈八尺。長髯を靡かせる好漢。「美髯公」と称される。コヤンサンの酒乱がためにインジャに投じる。
オガサラ・ジュゾウ……身も口も軽いが、異能の主。渾名は「飛生鼠」また「五技鼠」。小ジョンシとの戦ではドルベンの策に嵌まり捕らえられた。ジョルチ部にて諜報を司る。
トシロル・ベク……役人。ゴロたちと親しい。ヒスワに追われたがクニメイに救われ、山塞に投じる。
ゴロ・セチェン……神都一の富豪。奸計に嵌まりギィを頼る。
サルチン……商人。知謀衆に優れる。山塞の役敗戦後、ホアルンに難を避け、ヒィ、チルゲイらと交わりを結ぶ。北伐中危機に陥ったヒィに舟を調達してこれを救う。
ヘカト……商人。寡黙。コヤンサンと争った。ヒスワを諫めたあと、やはりホアルンに出奔してチルゲイと再会する。北伐より撤退するヒィに神都を囲む計略を示唆する。
カノン・ジュン……長身の女丈夫。ホアルンに向かう途中、ゾンゲルに襲われたが、ヒィらに救われる。
コテカイ……能書の佳人。渾名は「嫋娜筆」。
チャオ……商人。ミヤーンとは旧知の間柄。ヒスワ即位の報を携えて山塞を訪れる。渾名は「銀算盤」。
ヒスワ・セチェン……ゴロの家宰であったが、これを陥れる。「奸人」と称される。草原に覇を唱えるため計略を練ったが、山塞に敗れる。その後、セペート部と結んでヒィ・チノの留守を襲ったが失敗。ついに大院を廃して自ら皇帝を僭称した。
グルカシュ……カムタイ出身の将軍。渾名は「呼擾虎」。ヒスワに認められてナルモント部攻撃の大将となったが敗れる。ヒスワ即位後、衙門将に任命されて復権する。
ワラカン・ドルチ……元首。ヒスワに殺される。
■ウリャンハタ部
《スンワ氏》
カントゥカ……のちのエルケトゥ・カン。二丁の戦斧を操る猛将。オロンテンゲル山撤退の際、その武勇を示す。北辺を守り、クル・ジョルチ部の侵攻を防ぐ。渾名は「天護神将」、のちに「衛天王」。
ボッチギン……「渾沌郎君」の渾名を持つ知恵者。
エミル・ガネイ……不思議な魅力を持つ娘。渾名は「妖豹姫」。
ミクケル・カン……大カン。ヒスワと結んでメンドゥを渡り、草原制覇を目指すが、オロンテンゲル山でインジャに敗れる。その後は政事に興味を失い、奸臣を侍らせて暴君と化す。
ジャル……四姦の筆頭。山塞戦では留守地を守った。
フワヨウ……四姦の一。近衛軍を統べる。
チンサン……四姦の一。酷薄残忍。
シャギチ……フワヨウの甥。ミクケルの侍臣。
《イギタ氏》
クルド……四姦の一。奸智に長けている。
《シモウル氏》
ボロウル……チトボの子。二十斤の錫杖を使う。渾名は「醜面亀」。
《カオエン氏》
ジュン・ヒラト……ウリャンハタきっての知将。オロンテンゲル山撤退を指揮した。ミクケルに信頼されて政務を任される。
チルゲイ……弁舌巧みな「奇人」。諸方で好漢と交わり、神都でインジャに見える。その後、ヒィ・チノと旅に出る。ヤクマン部滞在中、「カラバルの同士討ち」を画策。また「チェウゲン・チラウンの盟」を斡旋。山塞ではタムヤを落とす計略を出す。
アサン・セチェン……衆望を集める聖君子。
サチ……男装の麗人。槍の使い手。渾名は「花貌豹」。
カコ・コバル……高潔有徳をもって知られる賢婦人。渾名は「雪花姫。
タケチャク・ヂェベ……慧敏にして敏捷。渾名は「矮狻猊」。
ササカ……知勇兼備の美しい女丈夫。鷹を調教する天才。渾名は「蒼鷹娘」。
ジュチ・クミフ……異能ある佳人。渾名は「娃白貂」。
クメン……「笑破鼓」の異名を持つ好漢。
ヘンケ・セチェン……アサンの父。名医。
《ウラカン氏》
カトメイ……ツォトンの子。小ジョンシを守るタムヤへ物資を輸送していたが、チルゲイの説得で密かに寝返る。渾名は「竜騎士」。
ツォトン……イシの知事。
ムカリ……喪神鬼イシャンの長子。戦斧の使い手。渾名は「亜喪神」。
《ネサク氏》
シン・セク……反ミクケルの急先鋒。軍馬に劣らぬ速さで駆ける異能を持つ。渾名は「麒麟児」。
タクカ……シンの参謀。地理物産に詳しい。酒に弱い。渾名は「知世郎」。
《カムタイ氏》
スク・ベク……勇将。長槍の使い手。渾名は「小虎公」、「一角虎」。
クニメイ・ベク……カムタイの商人。「紅大郎」と称される。トシロルを救い、草原へ逃がす。タムヤ攻略の際、火薬を調達する。
イェスゲイ……工人。兵器製造に長ける。
ハヤスン……医人。民政の才を持つ。
オクドゥ……商人。文武に秀でる。
ズキン・ヂドゥ……カムタイの前知事。スクの父。渾名は「鎮西虎」。
ボルギン・サハル……四姦の腹心。渾名は「蝮蠍大人」。
《チダ氏》
カムカ・チノ……若き族長。渾名は「牙狼将軍」。
《ダマン氏》
ヨツチ……直情径行で急進派の筆頭。渾名は「急火箭」、または「矮豹子」。
■マシゲル部
《カンダル氏》
マルナテク・ギィ(アルスラン・ハーン)……「獅子」と称される傑物。アンチャイを娶る。チャテク家との内戦中、ムジカに攻められ一度は退けたが、バラウンが策に嵌まり敗れる。その後、ムジカと和し、「チェウゲン・チラウンの盟」を結んだ。かつてのタロト部の牧地を収めて即位する。
《ジャルム氏》
コルブ……弓に優れる。ヤクマン部との戦で本隊と離れ、野盗になっていたが、チルゲイに会ってギィとの合流を果たす。ギィ即位に伴って族長となる。
《クルベイ氏》
バラウンジャルガル……ヤクマン部との戦では策に嵌まって同士討ちを演じる。その後、遁走して現在は行方不明。
《キライ氏》
ハリン……アンチャイの側に仕える。渾名は「赫大虫」。
《チャング氏》
ウチン……賢婦人。ギィ即位後、族長を説いてこれに帰順させる。アンチャイの側に仕える。
■ナルモント部
《ムヤン氏》
ヒィ・チノ……若き英傑。「神箭将」と称される弓の名手。チルゲイと交わり、不浄大虫を討って旅に出る。ホアルンの前でカノンを救い、ゾンゲルを降す。ヤクマン部滞在中、マシゲル部との戦で名を成し、その後、ギィ、ムジカと「チェウゲン・チラウンの盟」を結ぶ。父の負傷で帰還。ハーンとなり、セペート部に出征するも失敗する。
キセイ……日に千里を行く早足のもの。渾名は「神行公」。
ゾンゲル……ホアルン近郊の野盗。ヒィに私淑する。渾名は「病大牛」。ヒィが即位すると近衛軍の将となった。
《サトラン氏》
ツジャン・セチェン……ヒィの友人。知謀に優れる。エルゲイ・トゥグの戦で見事な采配を振るう。撤退の際は殿軍を務めた。
《タラント氏》
モゲト……ヒィの友人。膂力衆に優れる。先鋒を任される。
《アケンカム氏》
ショルコウ……名将ベルン・バアトルの娘。文武両道の女傑。留守地がジュレン部に攻められた際、迎撃する策を立案した。「司命娘子」と称される。
ゴオルチュ……ベルンの末弟。北伐の留守を預かる。
ムバイ……信頼おける老将。
イドゥルド……ベルンの遺児。北伐後、族長となる。
《オラザ氏》
ワドチャ……族長の嫡子。ギィの知己。氏族を挙げてヒィを支援する。
ミヒチ……白面の女丈夫。渾名は「白夜叉」。
■ヤクマン部
《ヤクマン氏》
トオレベ・ウルチ・ハーン……ハーン。梁と結んでジョルチ部を分裂させた。テンゲリを祀り、章宗より「英王」に封じられる。
《ジョナン氏》
ムジカ……族長。仁義に厚い。チルゲイと出会い、これを客とする。マシゲル部を攻めてチルゲイらの力で勝利を得る。アンチャイを庇護し、のちにギィ、ヒィと「チェウゲン・チラウンの盟」を結ぶ。
タゴサ……ムジカの妻。男勝りの女丈夫。渾名は「打虎娘」。
オンヌクド……部将。渾名は「奔雷矩」。
マクベン……部将。渾名は「皁矮虎」。
アルチン……部将。渾名は「笑小鬼」。
《セント氏》
アステルノ……迅速機敏。称して「神風将軍」。マシゲル部のチャテク家を攻める。カラバルの同士討ちのあと、留守地を接収してアンチャイを捕らえる。
■セペート部
エバ・ハーン……セペート部ハーン。「鎮氷河」の異名を持つ。ケルン・カーン、ヒスワと結んでヒィ・チノを迎え撃つ。
ドブン・ベク……エバ・ハーンの寵臣。謀略家。
ズベダイ……エバ・ハーンの腹心。
■その他
エジシ……タムヤに住む学士。ムウチらを援助。小ジョンシ来襲の報を携えて山塞へ来る。インジャ即位後、「太師」の号を贈られる。
ハレルヤ……放浪部族ダルシェの若き将軍。インジャ初陣の際、言葉を交わす。チルゲイに出会う。
タルタル・チノ……放浪部族ダルシェの族長。
ドクト……オロンテンゲル山のカミタ氏族長。勇将。
オノチ……カミタ氏の将。弓に優れ、「雷霆子」と渾名される。ナーダムの騎射で優勝する。
テムルチ……ドノル氏族長。知将。
マルケ……イタノウ氏族長。山塞の守将の一人となる。
シズハン……イタノウ氏の娘。渾名は「小白圭」。連丘で敗れたインジャを迎えに行くようマルケに勧めた。
ミヤーン……イシ出身。チルゲイと旅に出る。
イェシノル……イシの文官。渾名は「瑞典官」。
ヤムルノイ……イシの武官。渾名は「鉄将軍」。
ナユテ……ホアルン出身。占卜に長じる。チルゲイと旅に出て、幾度もその異才をもって彼らを助ける。インジャの下に留まり信頼を得る。渾名は「神道子」。
ケルン・カーン……北の異族の族長。セペート部と結ぶ。渾名は「金杭星」。
ドルベン・トルゲ……テュルクダイ氏族長と称する。「四頭豹」の渾名を持つ奸智に長けたもの。小ジョンシにあってインジャらを苦しめる。撤退の際にはインジャを射て去る。
章宗……中華を統べる梁の皇帝。トオレベ・ウルチを英王に封じる。




