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現人神様の暗躍ライフ  作者: 白神 怜司
魔法少女と夜魔の女王編
96/220

挿話 ダンジョンの裏事情

すみません。頭痛と吐き気、寒気と視界が滲んでいるため、短めです。

ピークを越えて少し楽になったのですが、ちゃんとした話は書けなかったので挿話だけにしました。





「ふむ、やはり第一階層と第二階層はもう少し強い魔物を配置した方がいいかもねぇ」


 第一階層、第二階層を順調に突破してみせた魔法少女たちと兄妹の姿を見て呟いたのは、この『夢幻廻廊』のダンジョンマスターである葛之葉だ。

 ダンジョンマスターとして内部の設計、魔物の配置や設定というものをダンジョンコアを通して行っている訳だけれど、サブカルなんて当然知らなかった葛之葉にはあまりイメージが掴めなかったようで、僕が刀術を教わる代わりに相談に乗っている。


 そんな彼女は片膝をついて座布団に腰掛けており、片足を胡座のように折り曲げて煙管(キセル)から煙を(くゆ)らせている。

 ちなみにあれ、煙草のような有害成分は出ていないらしいけれど、薄荷のような清涼感があるらしく、葛之葉のお気に入りだそうだ。

 お香のような独特な匂いがしていて僕も嫌いではない。


 そんな彼女の足、折り曲げて寝かせている方には胡狐がうつ伏せに泣きついていて、絽狐が葛之葉の後ろから抱き着いているような状態だ。

 どうやら胡狐はせっかくの晴れ舞台に堂々と「よっこそ」と言ってしまった件が恥ずかしいらしく戻ってくるなり泣きついたのだが、葛之葉に頭を撫でられてそのままの体勢で眠ってしまったようだ。


「魔物の強さはあんなものでいいと思うよ。あくまでも篩の場というスタンスを崩さないならね」


「そうは言うけどねぇ……。あれじゃあまりに簡単過ぎやしないかい?」


「んー、だったら第二階層にはトラップなんて設置したらどうだい?」


「トラップ?」


「うん。致命傷にはならないけど、トラップに引っかかったせいで面倒な事になる程度の嫌がらせみたいな感じで」


「そんな事ができるのかい?」


「うん、トラップなら後からでも追加できるしね」


 そう言いながら管理者権限を利用して葛之葉ダンジョン、『夢幻廻廊』の設定ウィンドウを中空に展開させてから、操作方法を説明していく。


 この世界のダンジョンの設定は、イシュトア謹製のラノベ仕様というか……どうにもゲームっぽい管理画面になっている。

 階層を選択して俯瞰した地図が開かれ、タップしてみると拡大化して選択が可能で、さらに何を設置するのかなどの選択肢が出てきてと、非常にやりやすいカスタマイズ機能がついたダンジョンコアをイシュトアに提供してもらっている。

 しかもダンジョンマスターの趣味嗜好に応じてマップ特性を編集したりもできるので、ちょっと僕もダンジョンマスターになってダンジョン作りたいとか思ったりもしたぐらいだ。


 ……というか、よくこんなものまでイシュトアも用意してくれたものだね。

 ダンジョンコアについてはイシュトアが生み出して僕に送ってくれているのだけれど、さすがにこれは僕も作れそうにない。


 そんな代物でもあるため、おいそれと人間の手に渡す訳にはいかない。

 ダンジョンにはコアを設置せず、スキルオーブという、使うとスキルを覚えられるというラノベ小説御用達の代物を最奥部に置いていて、それを取れば帰還用のポータルが出現するようになっている。

 この世界の戦力強化という意味ではちょうどいい代物なんだし、日本風に言えば超能力が一つ手に入るのだから、それだけでも充分な報酬だと思う。


 ちなみに、ダンジョン自体が『大源泉』の魔力を利用しているのでダンジョンポイントみたいなコストが決定していたりという訳ではない。

 もっとも、なんでもかんでも設定してしまうと魔力消費が大きすぎて、この世界に魔力を流し込むという目的が果たせないので、限度というものはあるけどね。


「なるほど、なかなか便利だねぇ」


 葛之葉も僕の助言に従う形で第二階層にトラップを仕掛け、第四階層以降にトラップを増やす方向で調整するつもりのようだ。

 早速とばかりに第四階層のトラップを先んじて調整しているあたり、なかなかに楽しんでいるらしい。


「そういえば、小ダンジョンにはコアはないのかい?」


「あぁ、あの兄妹が攻略したようなダンジョンだね。あれはどちらかと言えば模造品とでも呼ぶべき代物だからね」


「どういう意味だい?」


「ダンジョンっていう世界の法則が生まれた結果、その法則に倣うように魔力の淀みが形を成そうと生み出したカタチが、単発型のダンジョンなんだ。だからコアなんてないし、シンプルな構造で浅く、誰かが踏破したら魔力が拡散されて消えてしまうんだよ」


「あぁ、なるほど。だから模造品という訳かい。本物とはまったく質が違うね」


「まぁ悪いものではないけどね。『人類の魔力への適用を目的としている』というダンジョンの本質を模倣してくれているから、どうしようもなく勝てないような強さの魔物も生まれないし、戦うための魔道具だって生みだしてくれているからね」


 もっとも、それはあくまでも中に入った人間が魔力に目覚める事が前提だ。

 あの兄妹はどちらも魔力に対する適性があったから行動できたし適応できた訳だけれど、もしもそうではない一般人が中に入れば、そのまま気絶して魔物に襲われて死んでいただろう。

 実際、小ダンジョンの多くで犠牲になった人間もいるみたいだし、あの兄妹は運が良かったとも言えるかもしれない。


 そんな話をしている内に、どうやら一行は第三階層に足を踏み入れたらしく、中空に浮かぶ映像が切り替わった。


 座敷の室内、四方向にある同じ模様の襖。

 それぞれの襖の上には木彫りの文様があり、四隅には灯籠が佇んでいる。

 僕もこの部屋のギミックや内装は見た事はなかったけれど、これは方向感覚を失いそうだ。


「ふふん、どうだい? なかなか凝っているだろう?」


「うん、そうだね。面白そうだ」


「ちなみにここのギミックは絽狐が考えついたのさ」


「ぶい」


 葛之葉の首に手を回して抱き着いていた絽狐がこちらに向かって無表情ながらにピースサインをしてみせてくる。

 この子、最近外の文化にハマって色々調べてるんだよね……。

 そこで覚えたものなんかを胡狐と葛之葉に教えてあげているらしく、単語だったりを結構取り入れているんだ。


 ……おかしな組み合わせとかで言わないようにしてくれれば僕はいいけどね。

 どこぞの懐かしい芸能人みたいな謎の組み合わせを口にしたものだから、それはやめた方がいいとこの前注意しておいたけど、ちゃんと自重してくれているみたいだし。


「――さて、お手並み拝見といこうか」


 願わくばこの階層を越えて次の階層までは進んでほしいんだけど、どうなるかな。

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