幕間 小話 天罰という名の荒業
「やあ、ボブ! 聞いてくれよ! 予約投稿が11/16日になってたんだってさ!」
「HAHAHA、そいつぁ傑作だぜ!」
はい、遅れてすみません。
今気付きました_(┐「ε:)_
「うーん、これってやっぱりそういう事なんだろうなぁ……」
「あら、何を見ているの、ルオ?」
僕とルーミアにとっての拠点となっているマンションの一室。
そのソファーの上で胡座をかいてタブレット端末を見つめていた僕の後ろからするりと腕が伸びてきて、僕の手に持っていたタブレット端末が取り上げられた。
「……あら、この国ってダンジョンがないの?」
「いや、それはないね。実際僕そこの『大源泉』に行ったからね」
自国にはダンジョンは発生しなかったと発表しているようで、何故か他の国にダンジョン内の資源を共有してほしいと面の皮が厚いというか、被害者面をして声明を発表している。
うーん、この国の神祇院みたいな組織は影響力が低かったりするのかな。
この大陸を管轄としている亜神は確か二柱いて、片方は天照にもそれなりに似ていたけれど、もう片方は妙に腰が低いというか、自信がなさげだったのが印象的だけれど、もしかしたらあの亜神の管轄側の国、かなぁ。
「もしそういう国があったら魔物を放出する、っていう話じゃなかったかしら?」
「うん、そうだね。だからちゃんと釘を差した方がいいよって言ったんだけどね」
一応僕の方から、もしも国の駆け引きなんかで存在を秘匿しようとしたらダンジョンから魔物を放出するという点については、亜神たちにも伝えてある。
それを伝えてないって事はないと思うし、事実を知ってなお無視したって事かな、これは。
「……バカな国ね。って、あら……? この国……」
「ん? どうしたんだい?」
「私が釘を差した国だわ、ここ」
「あー……、なるほど。って事は精霊を捕らえていた国とやらだね」
多分だけど、葛之葉奪還作戦のために使われていたあの兵器を造ったのもその国だろう。
精霊を利用し、魔力だけを利用しようとしたあの無意味な兵器を生み出した国か。
「……いっそ滅ぼした方が早いかな」
ぽつりと呟いた僕の言葉にぎょっとした顔を向けたのは、僕らの話を聞いていたリュリュであった。
いや、滅ぼす程の事はするつもりはないけどね。
ただ、少し派手にダンジョンの存在を秘匿した報いみたいなものを受けてもらおうかなというだけで。
「魔法少女と契約している精霊を全て回収するっていうのはどうかしら?」
「うーん、それは難しいかな。精霊は亜神の直接的な支配下にある訳じゃないし、僕の正体にも気付けないみたいだしね」
「そういえばそうね。だったら、宣言通り魔物を放出しちゃう? でもそうなったら関係のない人間を巻き込むかもしれないし、魔法少女が犠牲になるかもしれないわね」
それはそれで趣旨が違うんだよね。
僕としては軽んじないでちゃんと足並みを揃えてもらいたいというのが本音であって、別に無差別に人間を減らしたいとは思わないし、その国の魔法少女が犠牲になっても構わないとも思ってはいない。
もっとも、必要な犠牲と割り切る事ができないっていう訳ではないけれど。
そう考えながら対策を考えていると、机の上に置いていた僕のスマホが鳴った。
◆ ◆ ◆
アルビシアと呼ばれる国。
国力は世界最大とは言えないものの、国土も広く人口も多いこの国は、周辺国への挑発行為なども多く、しかしながら切り捨てきる訳にもいかないという、他国から見れば『相手をするのが面倒な国』という印象が強い。
特に大和連邦国とは昔から何かと競い合う立場にあったため、ルイナーが出現したにも関わらず、何かと大和連邦国にちょっかいをかけたり、貶してみたりと、飽きもせずによくやるものだと大和連邦国の上層陣の頭痛の種となっている国だ。
そんな国が、自国にはダンジョンはないと声明を発表したかと思えば、ルイナーに対抗できる魔道具、それに魔法薬を、ダンジョンがなく手に入らない自国に融通しろと言い放ってみせたのは、何よりも亜神を神として祀り、信仰してきた神殿などを含め、世界各国にある神祇院と類似した組織に喧嘩を売るような真似であると言えた。
アルビシアにとってはお家芸とも言える面の皮が厚いやり方ではあったものの、彼らは今回、完全に読み違えてしまったのだ。
事は近隣諸国への情報戦ではなく、世界の重要組織へと喧嘩を売る形となっている上に、それ以上の存在――要するに、亜神の顔に泥を塗り、延いてはその上にいる管理者への叛逆を宣言するような愚かな真似であるという事を、彼らは理解していなかった。
そして――それは突然始まった。
《――宣告。ダンジョンの存在を秘匿し、神々の声明に泥を塗った罪は万死に値する。アルビシア国に生きる人類全てを天罰対象とする》
それはアルビシア国のみではなく、この世界に生きる人類全ての脳裏に直接響いた神託であった。
誰もが突然頭の中に直接聞こえてきた言葉に驚き、声をあげ、立ち止まる。眠っていた者の意識を強制的に引き上げ、直接意識の中に事実が刻まれる。
その宣告は三度にわたって繰り返され、聞き間違いでも幻聴でもないのだと誰もが悟った。
三度目の宣告が終わり、誰もがこれが現実だと悟ったその直後、神託の内容が変わった。
《――宣告。天罰免除の条件を告げる。二十四時間以内に以下を実行すること。一、世界に向けて真実を伝え謝罪せよ。二、我ら神々の使い、精霊を使った非道を行った存在をダンジョンへ投獄せよ。なお、対象者には、関与したもの、推し進めた者、黙認した者、情状酌量の余地なき者であれば全てを指す。一人でも残っていれば、国内の者全てを天罰の対象とする》
再び三度繰り返され、神託は続いた。
《――宣告。以上を実施できていないと判断した時点で、ダンジョンの魔物がアルビシア国内へと解放される。他国への逃亡、および虚言の一切は天罰の対象と知れ》
再び三度繰り返され、神託は続く。
《――宣告。二十四時間後、裁定を下す》
人類に告げられた神託は、世界各地で報道され、騒ぎとなった。
◆ ◆ ◆
「――……いやあ、大騒ぎだねぇ」
テレビを点けながら神の神託――もとい、僕の無機質な物言いによる僕の宣告は、大混乱を招いているらしい。
反応が見たかったのでテレビの生放送を点けていたのだけれど、速報が流れるわ番組は中断するわで何やら大混乱が引き起こされているようである。
……うーん、これならアルビシアだけに宣告でも良かったかもしれないなぁ。
《効果は絶大ねぇ》
「まあ、普通に考えて神の神託が人類全てに向けて発信されるって、どう考えても異常事態以外の何物でもないと思うしね」
《そうね。もっとも、管理者権限があるあなただからできるんだけどね》
僕のスマホに電話してきた張本人であるイシュトアの言葉に、僕はついつい苦笑した。
いや、さすがに僕も知らなかったしね、こんなことできるなんて。
《ま、でもこれで穏便に済ませられるでしょう?》
「うん、まぁね。助かったよ。ありがとう」
《どういたしましてー。ちゃんと何かあったら連絡してくるのよー》
軽い調子でのやり取りをして通話を切り、ちらりと横を見ればルーミアが苦笑――というか引き攣った笑みを浮かべていた。
ちなみにリュリュは僕が『天のお告げ』を実施する前にジルとアレイアに伝えに行ってもらったところだ。
さすがにアルビシアとかいう国の事なので大パニックにはなっていないだろうけれど、一応ね。
天照を通してこの神託が行われる事はすでに亜神には伝えられている。
なので問い合わせたとしても「これは神々による決定である」という同一の回答が返されるだけだ。
お役所勤めの人には凄まじく忙しい時間がやって来るだろうけれど、そこは我慢してもらうしかない。
「……えげつないやり方ね」
「でも、変な被害者は出なくて済むし、世界的にも神の存在を実感できる事件になるからね。僕としては楽に済んでるし被害者も無駄に出なくて万々歳だけど?」
「……まぁ、それはそうね」
余談だけれども。
この十三時間後にはアルビシア国から「ダンジョンの存在を秘匿した存在、及び非道を行った者達は神託に従い処刑した、愚かな者達に代わり心より謝罪させていただきたい」と声明が発表された。
国の上層部がほぼほぼ総入れ替えになったらしいけれど、僕には関係のない事なのでどうでもいい事であった。
ちなみに、ダンジョン内に投獄された連中については、まぁ、推して知るべし、というやつだろうか。
_(┐「ε:)_……明日から新章です




