表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現人神様の暗躍ライフ  作者: 白神 怜司
最終章 邪神の最期
201/220

#148 邪神の最期 Ⅰ

「――アレイア」


「こちらにおります」


 激化する戦いの中にありながらも、リュリュと唯希、そしてジルを前衛に後方から支援するルーミアと、遊撃として自由に姿を出し入れするアレイア。

 そんなアレイアへと小さく声をかけてみると、即座に僕の足元にできた影が伸びてアレイアが姿を現した。


 忙しそうならいいかと小声で声をかけてみて、反応がなければもう少し待っていようかな、なんて考えていたのに、相変わらず完璧に応えてみせるんだよね、アレイアは。


 メイドという基準が最早僕の中ではおかしな事になっている気がする……。


「魔法少女のフォローに――」


「――かしこまりました。唯希をそちらに合流させ、少し休ませます」


「……アレイアも――」


「――我が主様の周囲の騎士種を封じよ、と。承知いたしました」


「……なんで」


「メイドですので」


 ……会話のいらない新種族とか、そういう存在なのかな、メイドって。

 アレイアが澄ました表情で手元に手を当てたかと思えば、唯希がこちらに振り向いてこくりと頷いてから後方へと下がり、それと同時にジルがそこに入った。


「魔法少女は大丈夫そうだね」


「ルーミア様が数を限定して戦わせ、体制の確立を急がせております。おそらく、そう時間もかからず放っておいても対応は可能な状態にはなるかと。唯希もそちらに入れば、唯希を主軸に戦う事も可能です」


「そうなってもらえると助かる。ある程度魔法少女が慣れたら、横に広がって層を薄くできるかい?」


「承知しました」


 魔法少女にどの程度まで任せる事ができるか、戦えるかが分からないためか、ジルとリュリュを先頭にルーミアが間に入り、その後方に魔法少女たちという具合に邪神から見て縦長に展開している状態だ。


 今は僕もルーミアから少し離れた位置に横並びになっているような状況だけれど、やっぱり邪神は比率としては僕を最も警戒しているらしく、次いでルーミアを警戒しているらしい。おそらく魔力量によって脅威かそうじゃないかを判断しているのだろう。


 騎士種の襲撃対象は僕に五、ルーミアに三、ジルとリュリュに二、といったところ。

 ルーミアがその三を捌きつつ、魔法少女側にいくつか流して戦いの感覚を掴むよう促している。

 いきなりフルスロットルで邪神が次々生み出している騎士種を受け持って戦えと言えるほど、魔法少女たちはまだ強くない。魔王城にいた騎士種とは強さが違うしね。


 ともあれ、彼女たちの戦い方を確立するまでは膠着状態もそうそう抜け出せない、かな。


「エレインさん、突出せずに維持を!」


「おー!」


「ロージアさん、小さ過ぎる魔法は効果がありません! 密度を上げるか威力を重視して対応を!」


「はい!」


「フィーリスさん、相手の反応速度が想定以上です。エレインさんのフォローを最優先、体勢を崩す事に注力を」


「了解ですわ」


 魔法少女オウカの指示の下、凛央の魔法少女たちもよく喰らいついている。

 分析、指示、対策の打ち出しを続けて戦い方を魔法少女オウカが確立させようとして、その指示を疑わずに実践できている辺り、なかなかにチームとして戦う姿が様になっている。


「リリスさん、騎士種は武器によって戦い方が異なっている印象です。リリスさんが対応しやすいタイプはどれでしょう?」


「剣、槍なら持てますね。双剣は素早く、斧は一撃が重い印象です。速さと手数が必要になるので、私は苦手な分類になります」


「分かりました。――エレインさん、双剣と斧を優先的に対応してください! フィーリスさんがフォローに入りますので、崩せない時はフィーリスさんと連携を取ってください!」


「わかった!」


 ……いいチームだね。


 騎士種はその名の通り、人型で武器を持った存在だ。

 そのおかげ、というのもなんだけど、攻撃パターンが同一の記憶を参照でもして作られているのか、武器種毎に戦い方の特徴はどの個体も同一のものになっているので、対応の得手不得手がハッキリと理解できれば、どれが自分にとって戦いやすい相手であるかの判断は容易い。

 そうして、得意な相手と苦手な相手を即座にカテゴライズしつつ、不得手な相手は味方に託す。


 それぞれの弱点、得意分野を理解した上で分担して対応し、リスクを避ける選択ができるという訳だ。

 彼女たちのそれぞれの得意分野があまり被っていないおかげで、様々な状況に対応できるという強みは活かすべきだという事を理解し、実践している。


 その為に、選択基準をしっかりと設けて徹底する。

 それを声を掛け合って周知し合う事で、無理を通そうとはせずに切り替えやすくしているのだろう。


「あの調子なら、対応しきる事もできそうだね」


「はい。私も少々手合わせしてみましたが、お互いの長所を十全に活かし、短所をカバーし合う良いチームです」


「……ちょっと待って。手合わせしたの?」


「はい、魔王城で少々。もっとも、実力を図りながら足止めした、という程度ですが」


「……そっかぁ」


 それはなんというか……魔王よりも強い存在が足止めに入っちゃった訳だね。

 足止めされた側は可哀想な事になったんじゃないだろうか。

 まさかメイド服を着こなした彼女が魔王よりも強いなんて思いもしなかっただろうし。


「――まあ、そろそろ僕も仕掛けるかな」


 万が一魔法少女たちが対応しきれなかったらフォローに入るつもりで様子見していたけれど、魔法少女たちも少しずつ安定してきたというか、しっかり対応できそうな空気もあるみたいだし、ここからは少しずつギアを上げていってもいいだろう。


 ルーミアから離れるように駆け出しつつ手に持った『黄昏』に魔力を込めて、今にも動くぞと言わんばかりに魔力を解放してみせれば、邪神と騎士種の軍勢が僕に気を取られるかのように顔を向け――


「――ふふ、お馬鹿さんね」


 ――僕の動きに釘付けになったその反対側、横合いから飛び出したルーミアによって、邪神の身体に大鎌が当たり、その勢いのまま吹き飛んだ。


 今の今まで最小限の力で戦っていたのはルーミアも一緒だ。

 僕だけを強く警戒するような素振りを見せていた邪神にとって、僕は最も警戒すべき相手と認知されている。

 だから、僕がこうして動きを見せれば無視はできない。


 要するに、ブラフが通用しやすい状況だったという訳だ。


 ルーミアの力があれば、邪神にも相応のダメージを与える事ができる。

 この一撃はそれを邪神に知らしめ、僕だけを警戒する事で僕を抑えようとしていた邪神に対する揺さぶりでもある。


 ルーミアに集まった一瞬の注目。

 騎士種の注目が僕からルーミアへと外れる僅かな隙を突いて、上空へと転移して魔法を構築させていく。


 目の前から順に大、中、小と縦に展開された魔法陣。

 先端の小さな魔法陣の中心部に黒い炎が生み出され、激しく燃え盛りながら少しずつ大きくなっていく。


 そんな僕の魔法に気が付いたのか、騎士種が一斉にこちらに向かって飛ぼうとして――即座に細切れにされて落ちていった。


「申し訳ございませんが、我が主様の邪魔はメイドとして看過しかねます」


 いつの間にか僕のフォローに回っていたらしいアレイアが、上空から落ちてくる騎士種の破片が霧化して消えていく中で静かに告げて、僕に向かって頭を下げた。


 オーダーを見事にこなしてみせた、という報告なのだろう。


「――準備はできております」


 短く告げられて、遠慮なく魔法を放つ。


「――【黒竜の憤怒ニグルドラ・オ・イゥラ】」


 前世、師匠の下で解析し、僕の魔力では決して放つ事のできなかった【禁呪】。

 膨大な魔力を強引に喰らう魔法であり、術者の魔力が足りなければ命を喰らい、それでもなお止まらずに大爆発を引き起こすという危険性と、まともに放てば全てを焼き尽くすと言われたその威力から、禁呪指定された魔法だそうだ。


 それが、この【黒竜の憤怒ニグルドラ・オ・イゥラ】という魔法。

 師匠も途中までは解析していたみたいだけれど、危険性に気が付き解析を敢えて中断した魔法なのだけれど、どうせ実践できないので知識だけで解析ついでに学んだ禁呪だ。


 全てを喰らおうとする邪神へと向かって、全てを喰らおうとする黒炎が魔法陣から放たれる。

 真っ黒な炎が球体となり、激しく球体の中で暴れ、燃え盛りながら邪神に向かって飛んでいく。


「――ッ! 全員、魔法少女の近くに寄って結界! 本気で耐えなさいッ!」


 刹那、ルーミアが切迫した声をあげてリュリュとジル、そしてアレイアに向かって声をあげる。

 同時にリュリュとジル、それにアレイアが魔法少女達の前に移動し、強固な結界を張るのが見えた。


 騎士種もまた邪神を庇うためにと一斉に僕の放った魔法に近づくが……近づいた端から黒炎が身体に着火し、ぼろぼろと崩れていった。


 ……何あれ。こっわ。


 そして、着弾。

 黒い炎がずん、と腹の底まで響くような振動音が響くと同時に、黒炎が一瞬で膨張する事を感じ取り、僕もまた慌てて結界をドーム状に展開し、黒炎を抑え込む。

 真っ黒な炎が、ドーム状に展開した結界の中で暴れ回り、ギシギシと僕が張った結界を軋ませる中、僕のドームを補強するようにルーミアまで結界に力を注いで抑え込み始めた。


 そうして一分程経っただろうか。

 黒炎がようやくある程度落ち着いて、これ以上は広がらないだろう事を察知して結界を解くと、僕の隣にやってきていたルーミアが酷く息を乱し、まるで全力ダッシュを数十本程度こなした後のようにぐったりと項垂れてから、ゆっくりと僕に顔を向けた。


「いやぁ、思ったより凄かったね。さすが禁呪」


「……ルオ。あなた、後で、覚えてなさいよ……?」


「ア、ハイ」


 怒る気力もないのか、恨み節全開でルーミアに睨まれた僕が答えられたのは、その一言だけであった。


 ……うん、ごめん。

 使った事のない魔法だったんだけど、ある程度力を削ぎ落としたくて張り切っちゃっただけなんだ。


お読みくださりありがとうございます。


最近リアル都合により時間が取れず、感想返しはできていませんが、感想ありがとうございます。

目は通させていただいています。


また、先日はレビューもいただきましてありがとうございました。

評価、いいね、ブクマ登録等も改めてありがとうございます。


年度末が近い事もあって少しバタバタしているので、今後もしばらくは感想返しはできないかと思いますが、とりあえず最終話に向けてこのまま更新最優先でペース維持していくつもりです。


取り急ぎ、その報告でした。

引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ