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現人神様の暗躍ライフ  作者: 白神 怜司
最終章 邪神の最期
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#128 ルオ一行@視聴中 Ⅱ

 魔王弱体化を図る為のギミックは、左右の塔の最上階に位置する部屋にある。

 いざそこに足を踏み入れたロージア班、リリス班のそれぞれの班が守護者役と戦いを始めた姿を、僕らは相変わらずの状態で水鏡を通して見つめていた。


「あそこに置いている守護者役はそれなりに力のある騎士種だから、多少は苦戦するかもね」


 僕らの見る水鏡に映る守護者役の騎士種ルイナー。

 その大きさは、高さ四メートルほどの巨大な甲冑を身に纏い、大剣を持った剣士の姿をしている。


 巨人をイメージして邪神の力を捏ねくり回して作った守護者役ではあるのだけれど、なかなかにうまくできていると言える。

 こう、鉄巨人って感じでいいよね。


 ただまあ、それでも『一対一だと厳しい』という程度のものになってしまうので、当然ながら魔法少女たちが複数いるとなると……。


「いっそ見事な程に綺麗に役割分担しているわね」


 そういうこと。

 結局ルーミアが言う通り、役割分担をして戦えるなら今の彼女たちの脅威にはなり得ないのである。


 ロージア班はスピードのある戦いを得意とするエレインが撹乱し、オウカが結界でうまく攻撃を止めてフォローをしている。


 ロージアは火力特化というタイプであったけれど、なんだか随分と戦い慣れた印象だ。

 遠距離攻撃に特化しがちな魔法少女だった彼女も、今では敵の攻撃を怖がらずに接近できている。

 ルーミアに集団戦に放り込まれていた賜だろう。

 たまに目が死んでいたと聞いていたけど、それぐらいで無事に経験を積めるのなら安いものだと思っておいてもらいたい。

 安い犠牲だよ。

 本当に頭おかしくなるレベルの入り口が見えたぐらいだね。


 一方、超速度特化、超近距離戦闘に特化しているのがエレインだ。

 素早く距離を詰め、楽しそうに戦う戦闘狂タイプ。

 ああいう純粋に戦いを楽しむタイプって疲れを知らないから僕は戦いたくないタイプだ。


 指示を飛ばしているのは恐らくオウカだろうけれど、エレインとロージアもお互いの位置をしっかり確認して動いているし、オウカに頼りきりという訳ではないらしい。いやぁ、チームワークの良さが窺えるね。


 回復要員のカレスもやる事がないだろうな思っていたんだけど、彼女は上手く遠距離から弱い攻撃魔法ではあるけれど、いやらしいタイミングでそれをぶつけて注意を削ぐというやり方で支援しているようだ。


 ……あの子、大人しそうに見えて煽ったりする才能あるんじゃないかな。


「ロージア班は安定そのものね。ルオ、どう?」


「うん、あれなら魔王とも戦えるんじゃないかな。守護者役ももうちょっと強くしても良かったかもね」


「ダメよ、あんまり強くしちゃ。だって、これからが大変(・・・・・・・)なんだから。あまり弱っていたらあっさり死んじゃうかもしれないじゃない」


 くすくすと笑ってそんな事を言ってみせるルーミアの言葉にちょっとした引っ掛かりみたいなものを覚えるけど、まあ実際魔王と戦うのは大変だろうし、と聞き流しておく。


 さてさて、もう一方の魔法少女リリス側。

 あちらも安定も安定でどうにかなっているらしい。


 リリスはやっぱり戦い方が上手い。

 なんとなくだけれど、教えに忠実に沿って戦っているとでも言うべきだろうか。

 安定して冷静に対処できていて危うげがない。


 そんな彼女を支えているのは、これまた戦い方に頭を使って器用に戦っているように見えるフィーリスだ。

 彼女は衝撃を発生させるという、一見すれば地味に思えるかもしれないけれど、不可視の一撃を放つという意味では相当に厄介な魔法を使える。対人戦であれば、ある意味彼女の魔法は凶悪過ぎると言えるだろう。

 うまく力を込める方向とは違う方向に衝撃を加えて体勢を崩したりと、あれは恐らく、武術に精通しているタイプだろう。狙いが巧い。


 後方からの攻撃支援を行っているのはエルフィンという少女だった。

 死角となるであろう場所から魔法を発生させて注意を散らさせつつ、リリスとフィーリスの動きまで把握しているかのようにがら空きのスペースを生み出させている。

 僕がかつて【天眼】を用いてシオン達と一緒に戦っていた際の戦い方に似てきているあたり、似たような能力を持った者同士、行き着く先はだいぶ近いらしい。


 騎士種に腕を吹っ飛ばされたから、てっきり心が折れるかなとも思ったんだけど……うん、強いね。

 瞳に僅かな恐怖は見えている、でも、それに絶対に負けてやらないっていう強い意志を見せている。


 一方で、最も悪辣(・・)な戦い方をしているのがアルテだ。


 あのマイペースそうな少女は遠距離から見える位置で魔法を放っておきながら、魔法そのものを転移させて時差を作ったり、死角に飛ばして攻撃したりと、ハッキリ言って弄んでいる(・・・・・)

 あんなに細かく転移魔法を展開した戦い方なんて、きっと僕だって集中しなくちゃできないかもしれないし、転移魔法を覚えたばかりの唯希にはまだまだ届かない領域での戦い方だ。


 魔法少女は固有魔法として魔法を覚えていたというけれど、あれは簡単に言えば適正が特化したものが強引に発現させられたものだ。

 才能が極端に振れているようなものを魔法という形で発現させるという代物であり、あそこまで完全に使いこなせるのは、魔法少女だからこそ辿り着ける境地だとも言える。


「――終わったね」


「えぇ、ああなってしまったらどうしようもないわね」


 完全にパターンに入った、とでも言うかな。

 魔法少女たちは戦いの中で成長し続けるようで、完全に巨人ルイナーは為す術がないままにサンドバック状態にされてしまっている。


「うーん、困ったわねぇ」


「うん?」


「正直、あの巨人型ルイナーにもうちょっと苦戦すると思っていたのよ。こんなにあっさりと倒されちゃうなんて、予定外だったわ」


 頭上から聞こえてくるルーミアの一言には、確かに僕も一理あった。

 うん、純粋に強くなっているもの、魔法少女たちは。

 僕がこの世界にやってきた当初とは比べ物にならない程に成長しているように思う。


 なるほど、これが若さか。

 見た目だけ若い僕のような存在と違って、伸び代を感じる。

 僕の見た目でそれを口にしたら笑われるだろうから言わないけどさ。


「魔王の結界をもうちょっと弱めてもいいかもしれないわね……。でも、魔王は倒してもらわなきゃ困るし、魔王自体を強くするのもどうかと思うのよね……」


「やはり二人にするべき(・・・・・・・)では?」


「うーん、そうね。その方がいいかしら。そうしましょうか」


 ブツブツと考え込み始めたルーミアに向かって何かの案をアレイアが提示した。

 二人が何を話しているのかは、僕には分からない。

 舞台演出、脚本は基本的にルーミアの担当だし、イシュトアとキャッキャして決めていたぐらいだし。


「アレイア、リュリュ。二人になる程度に増やして(・・・・)おいて」


「かしこまりました。では、その程度になるように間引いて(・・・・)まいります」


「あら、そっちなの?」


「はい。増やすよりも間引く方が早いですし、手間も少ないので」


「なるほどね。しっかりとこうなる可能性を考えていたのかしら?」


「メイドですので。では、行ってまいります」


「行ってきます~」


 相変わらずアレイアはルーミアが何かを言い出す事を読み取っていたかのように慌てずに実行してみせるよね。リュリュもそれが当たり前みたいな顔してたし。


 部屋に残される事になった僕と、そんな僕に相変わらず物理的マウントを取っているルーミア。そんな僕らに、ジルが目を向けてきたかと思えば好々爺然とした笑みを浮かべてみせた。


「ほっほ、では私は用意していた昼食をお持ちいたしましょうか。あちらの少女たちの戦いの後は、我々の番ですからなぁ」


「あぁ、もうそんな時間だったの?」


 早朝から始まった魔法少女による攻略活動だったけど、左右の塔の攻略を見ながらくっちゃべっている間に随分と時間が経っていたらしい。

 確かに窓の外にちらりと目を向けると、お昼頃であろう陽の入り方をしているのが分かった。


「アレイア達も三十分もしないで戻ってくると思うし、戻ったら食事にしましょうか」


「畏まりました。では、少々外させていただきますね」


「うん、ありがとう」


 ジルが影に消えるようにして部屋から去っていくのを見送って、僕とルーミアはそれ以上は特に細かく話すような事もなく、ぼんやりと映画を観るような気分で時折感想を口にし合っていた。


「それにしても、やっぱり音声がないのって不便ね」


「うーん、音を拾うだけなら難しくはないけど、そんな事しても創作物みたいにしっかりと音量バランスを調整しながら魔法少女たちの声が聞こえる訳じゃないよ?」


「そうなのよね……。イシュトア様はそういうバランスもしっかりと調整しているみたいだし、今度どうやっているのか教えてくれないかしら」


「……教えてくれるといいね」


 イシュトア、そんな事までやってたのか……。

 いや、動画で配信しているって話らしいし、さすがにその辺りはちゃんとやらないとコンテンツとして微妙ではあるだろうけども。

 それ、どう考えても神としての力の無駄遣いなのでは……?


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