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現人神様の暗躍ライフ  作者: 白神 怜司
最終章 邪神の最期
166/220

#113 プロローグ

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたしますm


という訳で(?)、最終章スタートです。




 新年から日常を取り戻し、一年でもっとも冷え込む時期とでも言える冷え込む二月へと入った。

 華仙防衛戦から二ヶ月、魔法少女らは突如助力を申し出てくれた、『最強』の呼び名を持つ魔法少女フルールによって【精霊同化】という方法を学び、それによって戦力を押し上げる事に注力してきた。


 そんな彼女たちを他所に、大和連邦軍、および神の下部組織である神祇院の協力のもと、現在魔王城への移動方法の確立に注力している。

 空から俯瞰して見れば「V」の字型をした島国である大和連邦国の中央上部、その上空に現れた魔王城に攻め込むには戦闘機やヘリコプターで近づこうにも、魔王城より現れる翼の生えた騎士種のルイナーによって迎撃され撃ち墜とされてしまうため、侵入は容易ではなくなかなかに難航していた。


 凛央魔法少女訓練校に所属する、転移魔法を得意とする少女、祠堂 楓ことアルテも転移魔法を用いて魔王城への侵入を試みた事があるが、大陸には結界のようなものが張られているためか、転移魔法が発動できず、正攻法にて直接乗り込む手段を確立しなければならない。

 しかし、如何せん戦力不足が否めない状況であるため、なかなかに作戦が立てられずにいた。

 というのも、現在もなお、大和連邦国内ではルイナーが発生しており、華仙ほどの激しい数ではないにせよ、中規模程度の集団侵攻が発生しているのだ。


 戦力不足により魔王城の攻略のみに注力できない今の状況。

 それどころか、すでに壊滅した都市部などもあり、民衆の中には暗雲が立ち込めていた。


 しかしそんな中、大和連邦国内には二つの吉報が齎された。


 一つは、現在は神祇院が保有していた戦力――つまりは妖怪と呼ばれるような類の、人外でありながら人と同等のコミュニケーションを取れる多種多様な者達の存在が公表されたことだ。

 彼らは神々の神使として元々は保護される代わりに仕事をこなしてきたが、この度の攻勢を受け、彼らもまた動き出すという事を大々的に発表したのだ。


 神は存在しているが、しかし直接的には人を助ける事はない。

 それがこの世界の不変のルールであったのだが、ルイナー対策に精霊という存在を生み出して以来、動こうとしなかった神がついに動き出した。

 戦力が増えるとはイコールして自分たちが守られるという事である以上、当然このような状況で人外種を拒絶するような動きはなかった。正確に言えば、こういう時であっても無闇矢鱈に噛みつく存在はいるにはいたのだが、黙らされたとでも言うべきだろう。


 これと同時に世界各国でも人型の強い力を持ったルイナーである騎士種と呼ばれる存在が非常に増え、同様にルイナーによる集団行動のようなものが増えた事から魔法少女と探索者だけでは戦力不足が否めない状況もあり、その地に伝承のみで伝わっていたような架空の存在と思われていた者達が次々と公表され、認められ、人間を守るために力を合わせてくれるヒーローとして人々に歓迎された。

 もしも平時であれば実験されるだのなんだのといった不安が付き纏い、排斥される可能性もあったため、隠れ続けなければならなかった者達が、大手を振って歩けるようになり、様々な人に受け入れられ、交流していけるようになりつつあった。


 この()を描いた張本()であるルオは、この状況に満足しつつも、敢えて悪人らしい顔を浮かべながら「計画通り」と言ってみせる場面があったが、それを見た仲間たちには元ネタが一切通じずに肩透かしを食う羽目になったが。


 そんな中、魔王を名乗ったルオが滞在すると思われる魔王城へと攻め込む為の作戦が実施される。

 天照が用意した『転移座標陣』を展開させるための槍を持ち運び、空を飛んでくる騎士種のルイナーを掻い潜り、魔王城の浮かぶ大地へとその槍を突き立てる事で、転移を可能にさせるというのが狙いだ。


 そして次に、量産こそできないものの、空を飛ぶルイナー達に対し、魔導具を弾薬の代わりに詰め込んだミサイルを放ち、討伐とまではいかずとも動きを封じられるであろう魔導具がジュリー・アストリーの手によって開発された、というものだ。

 これにより空を進む際に迎撃にやってくるルイナーへの対策を強化できるようになったのだ。


 そして凛央魔法少女訓練校には――――。


「皆様、はじめまして。今回の魔王討伐作戦中の凛央防衛、そして魔王城の浮かぶ大陸に突き刺した『転移座標陣』を守るために作戦に参加する部隊を指揮する、ニクスと申します」


「――ッ、ニクス、さん……!?」


 驚愕の声をあげたのは、凛央魔法少女訓練校の中でも最も戦闘能力の高い少女、火野 明日架――魔法少女ロージア――であった。

 かつて両親を失い、自分を助けてくれた魔法少女であるニクス。二年以上前から非公式魔法少女ファンサイトである『まほふぁん』にて、『活動不明』という、三ヶ月以上活動が確認されない魔法少女につけられる表示がついて以来、ずっと『活動不明』となっていたはずの少女である。


「……それだけではありませんわね。ここにいる方たち、全員がオウカさんに近い世代の魔法少女で、『活動不明』となっていた方々ですわ……」


 明日架の呟きに応じつつ、付け足すように告げたのは未埜瀬 律花――魔法少女フィーリス――。ニクス以外にも『活動不明』となっていた魔法少女たちがこの場にいる事に気が付き、一体何があったのかと訝しむ。


「彼女たちは二年半ほど前より起きたとある事件に巻き込まれ、意識を失っていました。その後、『次世代魔力学研究所』こと、かの有名な魔導具制作の第一人者であるジュリー・アストリー博士と連邦軍が共同で立ち上げた専用施設にて意識を取り戻し、リハビリをしてからは『次世代魔力学研究所』の魔導具テスト員として活動している方々です」


 この危機的状況まで情報の一切が出ていなかったはずの魔法少女たち。

 もしや彼女たちは政府に声をかけられ、秘密部隊として特訓をしていたのではと、まるでアニメのような展開を想像していた律花の妄想は、しかしあっさりと東雲 桜花――魔法少女オウカ――によって否定された。


 彼女たちはルイナーに負けてしまった訳ではなく、かつてルオが唯希を拾った際に叩き潰したり、ルーミアやリュリュが潰す事となった組織など、海外から手を伸ばしてきた犯罪者たちによって襲われ、精霊を無理やり封印されてしまった。

 そのため対人恐怖症とまではいかないが、他人に対する恐怖や忌避感を抱くようになった者もいるため、魔法少女として第一線での活動を控えており、そのままオウカの言う通り、戦闘の第一線を退いて『次世代魔力学研究所』で開発される魔導具のテストを行う従業員としてジュリーによって雇われつつ、カウンセリング等を受ける日々を過ごしている。


 その中でも対人恐怖症等に対して比較的症状のない生徒たちが、今回の部隊として配置されたのだ。

 これにより、凛央魔法少女訓練校の生徒らが全員で乗り込んだとしても、凛央の防衛に穴が空いてしまうような状態は避けられる。


 まさか『活動不明』であった面々が姿を現すとは思っていなかった明日架らが動揺の声をあげる中、その場にいた教官の鳴宮 奏が一つ咳払いしてみせた。


「魔王城へ直接乗り込み、戦えるのは実力的にもどうしてもあなた達だけになってしまうと思われるわ。魔王城の防衛を行っているルイナーが騎士種である通り、おそらくは最低でも騎士種クラスの巣窟となっている可能性が高い以上、探索者はもちろん、魔法少女も生半可な実力では足手まといとなりかねないもの」


 ――数を無理やり投入してしまい、犠牲を覚悟して見殺しにしてでも奥に進め。

 もしも軍人が相手であったのならそういった酷な命令を下す事もあったかもしれないが、目の前にいる魔法少女たちにそのような酷な命令を口にする事はできない。

 本音を言っても良いのであれば、もしも叶うのであれば、大人である自分たちこそがそれをするべきだというのに、戦場に子供を送り込まなくてはならない現実を呑み込むように、奏は一度言葉を区切った。


「明日の日の出と共に、大和連邦軍と神祇院所属の神使らによる『転移座標陣』を魔王城の浮遊大陸に撃ち込むべく、行動を開始。その後、『転移座標陣』を撃ち込んだ後、防衛部隊、および凛央部隊が転移し、魔王城への侵攻を開始。無理に撃破に至らずとも、偵察で無理をせずに戻ってきて構わないわ」


「おー? でも、早く倒せた方がいいんだよなー?」


 凪 伽音――魔法少女エレイン――の言葉に、奏は頷いて肯定してみせた。


「正直に言えば、早く倒せるに越した事はないわ。『転移座標陣』を守りきれるだけの戦力があるかどうかも不明だし、同時に、世界各国の状況もかなり厳しい状況に追いやられているのは事実だもの。けれど、あなた達を失ってしまったら、おそらく魔王に勝てる戦力は我々人類には残されていない。だからこそ、あなた達の命は何よりも重要視される」


 それは「誰を犠牲にしてでも生きて帰ってくる必要がある」といった意味の言葉ではあるが、これについては奏は敢えて口にする。世界の為にというのも確かにあるが、何より、この三年近い時間を共に過ごしてきた、妹のような子供たちに死んで欲しくはなかったからだ。


「魔王城のある浮遊大陸と、城内での戦闘はフルールさん、本当にあなた一人でやると?」


「問題ありません。騎士種程度なら、数秒で仕留められますので」


「す、数秒……」


「冗談だろ、とは言えねぇんだよなぁ……」


 教室の後方で目を閉じたまま座っていたフルールへと奏が問いかけ、それに対してフルールが何も気負う事なく告げてみせた言葉に月ノ宮 柚――魔法少女カレス――と、その隣に座っていた皐 弓歌――魔法少女エルフィン――の二人が苦笑を引き攣らせつつ呟いた。


「ん。実際、フルールは間違いなく最強」


「そう、ですね。私もかなり実力を向上させたはず。なのに……」


 楓の隣に座るクラリス・ハートネット――魔法少女リリス――もまた、序列第一位と言われてこそいるものの、ここまで実力を向上させてなお、まだフルールの実力の底が見えない事に驚愕していた。

 そんなクラリスと英霊召喚によって契約しているルキナもまた、素直にフルールの実力に対しては称賛していると同時に、彼女の使う魔法に対して違和感を覚えていた。


似過ぎている(・・・・・・)んだよねぇ……、あのフルールって娘っ子は。魔法の構築方法と得意とする戦闘方法がどうにも、ね》


 かつて弟子にしていた存在と、フルールの魔力の運用方法は酷似しているのだ。

 それこそ、偶然行き着いたのではなく、まるで直接そう教わってきたかのような酷似ぶりである。


 この二週間ほど、共に行動する中でルキナはそんな違和感をどうしても消し去る事はできずにいた。


「――ともあれ、全ては明日。今日はしっかりと休んで、明日に向けて英気を養うように。では、解散」




前話でも書きましたが、新作始めてます。

お時間がありましたらこちらも是非!


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