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現人神様の暗躍ライフ  作者: 白神 怜司
大和連邦国編
14/220

閑話 動き出す時代 Ⅱ

「すぅ……――はあ……っ!」


 深呼吸をして魔力を集中させる。

 漠然としていた今までとは違って、もっと押し固める(・・・・・)イメージ。

 鯨みたいな形をしたルイナーとの戦いの時に再会した男の子――ルオくんが言っていた言葉を思い出しながら。


 ――「ルイナーの纏う障壁を破る上で意識するのは硬さ(・・)じゃない、密度(・・)だよ」。

 そんな言葉を告げて、私たちの魔法が通用しなかったルイナーをあっさりと押し返し、まるで苦もなく倒してみせた実力。

 あの後のルーミアさんっていう女の人との戦いで二人が見せた魔法は、ルイナーに向ける以上に強く、思わず見惚れる程の鮮烈さがあった。


 まだまだあの実力には届かないけれど、いつかは……。

 とは言っても、私には魔力がどういうものなのかいまいち分からないから、あくまでも炎を生み出して、それを操って練習するっていう形になっちゃうけど。


 手のひらの上、不思議と自分で出した炎はまったく熱を感じさせない。

 今まではこの炎を出せるっていうだけでも充分に「私、魔法使ってる!」と感激していたのに、あの戦い以降、どうしても「これじゃダメ」っていう気持ちを思い出してしまう。


 戦いの中で負ければ、死んでしまう。

 覚悟が足りないと告げたルオくんの表情は、怒りとか呆れ、哀しみとか、そういうものを湛えていない、どこか寂しそう目をしていた。


 夕蘭様はルオくんの事を警戒はしているけれど、感謝していた。

 私を、私たちを助けてくれたルオくんは、馴れ合いこそしようとはしないけれど、敵対はしないでくれるだろうと考えているらしい。でも、何かを間違えてしまえば、容赦なく私たちの前に立ちはだかるだろう、とも言っていて、どうにかゆっくりと話す機会を得られないかとぼやいていた。


 私も、会ってお礼が言いたい。

 そんな事を考えていたせいか、集中力が途切れてしまったらしい。


「ひゃぁっ!?」


 押し固めるように魔力を込めていたせいか、集中力が途切れたせいで火柱のように大きな炎があがって、そのまま消えてしまった。


 一瞬集中力が途切れてしまった、ただそれだけで失敗してしまうなんて……難しいなぁ。

 悔しさに口を尖らせながらふっと夕蘭様を見ると、夕蘭様も難しい表情を浮かべて自分の手を見つめていた。


「……魔力を収束させ、密度を集中させる。よもや、ここまで難しいのとはの……ッ」


「夕蘭様、どう?」


「確かに成果はある。が、あれ程あっさりと使いこなすとなると、しばらくは訓練が必要じゃろうな。まったくもって、妾も未熟なものじゃな」


 季節は初夏。

 あの鯨みたいな形をしたルイナーとの戦いから、もう二ヶ月が過ぎていた。

 暖かな日差しの下で集中しているせいか、かなり身体が汗ばんでいるけれど、人のいない神社の境内は涼しい風が吹き抜けて身体の火照りを冷ましてくれる。


 夕蘭様と一緒に魔力を収束させる練習を始めてから、ずっと似たような状態が続いていて、なかなかうまくいかない。

 私の場合、炎を使うしかないから家でやる訳にはいかないし、学校もあるから、こうして外に出られる時間しかできない事もあって、どうしても焦ってしまう。


 もし、あのルイナーがまた現れたら?

 もし、ルオくんと戦っていた、あの女の人が私たちを襲ってきたら?


 そう考えると気持ちが焦ってしまう。


「もう一度……ッ!」


 ――焦る。

 もし間に合わなかったらと思うと、怖い。


 あの男の子が言っていた。


 ――「戦える魔法少女は少ない。それはルイナーの数が少ない今だからこそ、まるで拮抗しているように見えるね。だけど、ルイナーの侵攻が本格化すれば、この程度のルイナーはいくらでも出てくるだろうね。その度に、キミのように諦め、死んでいく魔法少女が増えていく。魔法少女を守れずに死なせてしまう精霊も」。


 ――「実力が足りないってだけなら、まぁしょうがないかもしれないね。でも、キミ達はそれ以前の話だ。覚悟が足りない。ルイナーを殺し尽くすという覚悟が。大切なものを守り抜くという覚悟が。そして、生き抜くという覚悟が」。


 ……そう、あの子が言っていた言葉は、紛れもなく現実で。

 どうしようもなく、考えれば考える程に怖いものだった。


 あの時、私は初めて理解した。

 私自身、嫌という程に理解しているはずの『残される側』の痛みを、悲しみを、みんなにも背負わせてしまうかもしれなかった、という事を。


 魔法少女になって、どこかふわふわとした夢のような、物語のような世界にいる気がしていた。

 けれど、そんなものじゃないんだと、あの男の子に突き付けられて。


 ――あの日から、ルイナーと戦うのが怖くなった。 

 夕蘭様も気を張っているような気がする。


 強くならなきゃって、そう思うのに、どうしてもうまくいかない……ッ!

 どうして……! なんで……ッ!


「――おーーい、明日架ーー!」


「っ、伽音(かのん)ちゃん……?」


 境内の階段を登ってきたのに元気に手を振って声をかけてきたのは、伽音ちゃん――(なぎ) 伽音(かのん)――。魔法少女エレインである彼女は持ち前の明るさと、どこか男の子っぽい明るい子だ。

 階段を登りきり、汗をかきながらも元気いっぱいに走ってきた伽音ちゃんは、私たちの前で足を止めると、疲れた様子も見せずににっこり笑った。


「アタシもしゅぎょーするぞ、しゅぎょー!」


「あはは……修行って、そこまで大げさなものじゃないけど……」


「いいんだ! あの男の子みたいに強くなるんだ! やるぞーっ! ……ほら、明日架っ! おーっ、ってやらないと!」


「お、おーっ!」


「おーっ、やるぞーっ!」


 伽音ちゃんに言われて一緒になって手をあげて声をあげると、なんか楽しくなって笑っちゃう。


 あの時、私たちとは別行動をしていたから実際にルオくんを見る事はなかったそうだけれど、ルオくんがルイナーを倒したあの時の話と合わせて、ルーミアさんっていう女性と戦う姿を動画で見て、目を輝かせていた。

 私みたいに怖いと感じる事もなく、「あれぐらいできるようにアタシもしゅぎょーするぞ!」が口癖になっている。


 そんな風に二人で笑ってると、伽音ちゃんの後ろに彼女の契約精霊である雷華ちゃんが姿を見せた。


「……はあ。明日架、伽音に無理に付き合わなくていいわよ?」


「えーっ!? 無理に付き合ってたのかっ!?」


「えっ!? べ、別に無理に付き合ってる訳じゃないよっ!?」


「無理じゃないって言ってるぞ! ほら見ろ、雷華っ!」


 うん、無理はしてないよ。

 伽音ちゃんのこういう元気な感じは、ちょっと落ち込んでたりしてても元気になれたりするもの。


「まったく……。夕蘭様、すみません。私の契約者があんなので」


「くくっ、なに、構わぬ。伽音の明るさは大切じゃ。憎まれ口を叩いておっても、おぬしとて彼奴の明るさが好きで契約したことぐらい分かっておる」


「ゆ、夕蘭様っ!? にゃにをっ!?」


「おーっ、アタシも雷華が好きだぞっ!」


「もーーっ! そういう恥ずかしいことを言うんじゃないわよ、バカノン!」


「なんだよーっ! ホントのこと言ってるだけだろーっ!」


「あーーーーっ、もうっ! 分かったからやめなさいよっ!」


「やだっ!」


「なんでっ!?」


 ぎゃあぎゃあとお互いに言い合う伽音ちゃんと雷華ちゃんに思わず笑っちゃう。

 いつもあんな風に言い合っているけれど、本当に仲がいいなって思う。

 夕蘭様もくつくつと笑って肩を揺らしていて、さっきまでの少し行き詰まった空気が押し流されていったのだと改めて思う。


「あっ、そうそう、明日架ぁ」


「うん?」


「楽しみだよなぁ。アタシらガッコー違ったのに、今度から一緒だもんなー」


 ……うん?

 確かに私たちは違う学校に通っているけれど、どういう意味?


「えっと、伽音ちゃん? 伽音ちゃん、もしかして私の学校に転入するの?」


「あー? 何言ってんだよー。アタシじゃなくて、明日架もだろー?」


「え?」


「だからー、魔法少女訓練校。魔法少女なんだから行かなきゃいけなくなるじゃんかー」


「…………まほうしょうじょ、くんれんこう……?」


「む。なんじゃ、それは?」


 聞いた事もない言葉を耳にして夕蘭様を見やると、夕蘭様もまた小首を傾げていた。

 そんな施設があるなんて聞いた事ないけど……。


「おいおい、二人ともちゃんとテレビ見ろよなー!」


「えっと。夕蘭様、知りませんか? かなり大きな話題になっていると思うんですが……」


「う、うむ。最近はテレビどころではなかったからの……」


 伽音ちゃんだけじゃなく、雷華ちゃんも夕蘭様にわざわざ問いかけていた。

 そういえば最近、時間があればずっと魔力の訓練ばっかりしてて、テレビとかもあんまり見てなかったけれど……。


 私と夕蘭様の反応を見て、伽音ちゃんがスマホを手にとあるニュース記事を表示させてこちらに見せてきた。


『――政府は今回の出来事を受け、魔法少女たちに対して軍が築き上げてきた戦闘技術を活かし、対ルイナー戦闘教育を主目的としつつ学力をサポートできる、魔法少女、ならびに魔法少女の素養ありと判断された少女達が通う魔法少女の訓練校――凛央魔法学園の設立を発表。ルイナーが現れて五年、この五年の間に魔法少女に協力を仰いで培ってきた戦闘用カリキュラムを教育に落とし込み、大和連邦軍との連携を意識した訓練を取り込んでいくという方針を発表しました。世間からは年端もいかない魔法少女への戦闘訓練の強要かといった批判の声も――』


 ――えっと、なにこれ……。

 思わず冗談か何かかと思って画面を確認してみるけれど、ご丁寧に信憑性の低いネットニュースじゃなくて、政府公認の新聞である大和新聞の文字があった。


「な、なにこれ!?」


「これはまた……思い切った変革だのう……。いや、些か遅かったという方が本音ではあるが……――む? 伽音よ、そっちの記事を見せてくれ」


「あぁ、これか? んーっと、なんか偉い人が捕まったってー」


 夕蘭様が言うままに開かれたのは、関連記事だった。

 なんでも大和連邦軍の偉い人達の多くが横領していたとかで、結構な人数が辞職になった、という記事だった。

 夕蘭様はその記事をしばらく読み込んでから、「なるほど」と小さく呟いた。


「夕蘭様、こういうニュースに興味あったの?」


「いや、そうではないのじゃがな。この記事を見れば、何があったのかぐらい想像がつくというものよ」


「どういうことだー?」


 伽音ちゃんと同様に雷華ちゃんも私も首を傾げて夕蘭様を見ていると、夕蘭様は私たちの視線に気が付いたらしく、「ふむ」と一度だけ納得したような声をあげてから、腰に手を当てた。


「この五年間、おぬしらや妾のような精霊に対し、国がやってきた事といえばなんじゃ?」


「おー、クイズだなっ? えーっと、うーんと、ルイナー倒したらお金がもらえるっ!」


「うむ、そうじゃ。それだけ(・・・・)じゃった訳だ。結果として、ルイナーと戦う魔法少女や精霊は基本的に変わらない日常を過ごし、ルイナーを倒せば魔法少女としてスマホから報告し、相応のお金を払ってもらう、というものじゃな」


 私たち魔法少女の存在は公表はしていない。

 けれど、夕蘭様のような精霊が魔法少女名と能力、見た目を精霊同士で共有しているらしい。

 そのおかげで、誰がどのルイナーを倒したのかを判断できて、精霊によって報告された口座に報酬が振り込まれる、という形になっている。


「これまではそれで良かったんじゃが、この前の戦いは魔法少女以上の脅威を示してしまった、という訳じゃな。結果として、少々強引な真似をしてでも風通しを良くし、しっかりとした環境を準備していく必要がある、と判断したのじゃろう」


「おー、そっかー。でもそうなると、アタシらの事知られるってことかー?」


「うむ、そうなってしまうな。じゃが、法も環境も整備されぬ状況で、大人に利用されないようにと対策を取るための認識阻害とこれまでのやり方の構築じゃったが、今では魔法少女の存在も広まり、黎明期のそれとは違うからの。ある意味、今後の脅威も考えると魔法少女の育成は最優先事項じゃ」


 確かに、私も訓練の時間がもっと欲しいって思ってたから、それは助かるかもしれない。

 夕蘭様だって私とはあまり離れないようにしていたし、さすがに人前では魔力の操作練習なんてできなかっただろうし。


「いつまで経ってもまともに動かんなという印象じゃったが、ようやく重い腰をあげたという事かの」


「そう、なんだね。うん、でも……強くなれるなら……」


 あの男の子が言っていたような戦いが増えてくるなら、強くならなくちゃいけないんだもの。

 一人でやるより、みんなで一緒に強くなれるなら……うん、私にとっても悪くはない、よね。


「引っ越しとか転校とかって大変だろー? 父ちゃんや母ちゃんに言わなくていいのか?」


「あ、うん。私はお父さんもお母さんもいないから」


「あ……。そっか……ごめんな」


「ううん、もう五年前の事だもん。夕蘭様もずっと一緒にいてくれてるから」


「うむ、妾が一緒におるからの」


 ……うん、そうだよね。

 五年前、ルイナーが最初に現れたあの日――災厄の日。

 あの日、お父さんとお母さんが働いている会社はまさにルイナー出現地域の目の前だった。

 瓦礫に呑まれて、お父さんもお母さんも死んでしまったのだと聞いた。


 急に一人ぼっちになって、けれど学校から避難先に連れて行かれた私は、自分がこれからどうなってしまうのかも何も考えられないぐらい、目の前が真っ暗になった。


 でも、そんな時に夕蘭様が現れた。

 夕蘭様は上位の精霊みたいで、精霊の中でもかなり上の立場にいるらしいけれど、そんな夕蘭様が、私が魔法少女として戦う為の力になってくれると、傍にいてくれると、そう言ってくれた。

 当時の私はまだ六歳で、戦いなんて言われてもよく分からなかったけれど。


 その後、私は政府の人達に魔法少女として夕蘭様と契約した事を報告してもらって、今はワンルームのアパートで一人で暮らしている。

 名義とか保護者とかは従姉妹のお姉ちゃんが引き受けてくれて、お姉ちゃんが暮らしているアパートと同じアパートを借りる事を政府の人が特例で認めてくれたのだ。


 もちろん、お姉ちゃんには私が魔法少女だって事は言っているけどね。

 じゃなきゃ特例が認められるはずなんてないってお姉ちゃんに追求されちゃって、逃げれなかったからね……。

 ただ、魔法少女になってルイナーと戦うって言った日、「無茶するな、バカ」と頭を叩かれて、その後に強く抱き締めてくれたのはいい思い出だったりする。


 だから、転校するのも引っ越すのも、お姉ちゃんには言わなきゃいけないけれど、そこまで大変じゃない。

 学校は魔法少女として動いたりするために誰かと遊んだりもしなかったから、特に仲のいい人もいないしね。


 ついつい懐かしく思って思い返していたけれど、伽音ちゃんが少し居心地悪そうに身体を揺らしていた。

 いけないいけない、年下の子に気を遣わせちゃったよ。


「そういえば、全寮制って書いてあるけど伽音ちゃんのお父さんとかお母さんはどうするの?」


「えっ? あー、んーっと、なんか敷地内に家があるらしいぞー。そこでみんなで暮らすんだってさー」


「ふむ、元は軍の基地だった建物を流用するようじゃな。敷地内にちゃんと家も一人暮らし用の寮も用意されておるようじゃな。なるほど、確かに建物をすぐに建てるような真似はできんか。妥当じゃな」


 夕蘭様が伽音のスマホを手に取ったまま色々調べてくれているらしい。


「家もあるって、それならもしかして、お姉ちゃんも一緒に住んだりできるのかな?」


「ふむ、家族ならば住めるようじゃし、問題なさそうじゃな。あの娘にも声をかけて一緒に住んだらどうじゃ? 妾の事も知っておるのじゃから、遠慮する必要もなかろう」


「……うん、そうだね」


 ――色々な事が変わろうとしていた。

 魔法少女としての戦い方はもちろん、私たちの生活も。


 それがいい事なのか悪い事なのかは判らなかったけれど、少なくとも今よりも前に進めるような、そんな気がした。






 ◆ ◆ ◆






「――首尾はどうだ?」


「はっ。すでに作戦は組み上がり、現在は参加する部隊の編成に進んでおります」


 展開されたデータを表示させた画面を見せながら、若い男が作戦の概要について説明を開始。

 画面上には衛星から撮影されたような俯瞰図に丸印と点線が記され、それぞれにアルファ、ベータ、ガンマといったポイントが記載されていた。


「――作戦のあらましは以上になります」


「そうか、ご苦労」


 椅子に腰掛けた四十代後半程の男性の野太い声は、作戦を説明していた若い軍人に威圧感を覚えさせるような代物であった。

 それでも、若い軍人はこの作戦のリスク(・・・)を無視する事はできず、意を決したように口を開いた。


「……閣下、今回の作戦は非常に危険です。魔法少女の同行による援護は――」


「――ならん」


 若い軍人の問いかけに、しかし椅子に座る男は断じる。

 怒気を孕んで告げられた一言は男の反論を封じるには充分な効力を有しており、男はびくりと肩を震わせて息を呑んだ。


 そんな男の様子など気に留める様子もなく、男は机の上で握り締めた拳に力を入れ、画面をまっすぐ睨みつける。


「……この作戦は秘密裏に行うのだ。作戦の成功をもって、大和連邦軍の威信を取り戻すのだ。故に魔法少女などという存在をアテにする事は許さぬ」


「……は、はっ! 承知いたしました!」


「……結構。下がれ」


 男に言われ、これ以上ここにいては機嫌を損ねかねないと感じたのか、作戦を説明していた男は慌てた様子で部屋を退出していく。

 一人部屋に残された男は握り締めた拳からふっと力を抜いて椅子の背もたれに上体を預けると、背後にあった窓へと振り返った。


「……大和連邦軍を裏切る愚か者め。今に見ていろ。魔法少女などという奇っ怪な能力を持っただけの小娘なぞに、この大和連邦を任せる事など有り得てはならぬのだ」


 大和連邦軍の改革が求められる今、それでもなお、粛清から逃れた者もいる。

 かつての栄光という妄執が生み出した無謀な計画が今、再び蘇ろうとしていた。

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