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現人神様の暗躍ライフ  作者: 白神 怜司
魔王降臨編
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#088 プロローグ

 探索者ギルドによる探索者公募は各国で第一陣を一万人までと区切っての応募で幕開けとなったものの、そこから三ヶ月後にはテスト期間の完了を告げ、一般人の参加を引き受ける事となった。


 どちらかと言えばテスト期間というのは魔導具の性能、【覚醒者】が生まれるかどうかという意味で行われると共に、ダンジョン素材の流通に対する改善等も踏まえてのものではあった。

 そういった裏事情を知らない人からすれば「へー、やっとか」と他人事よろしく受け入れられる内容ではあるだろうけれど、各国の神宣院相当の機関や軍なんかにとっては「も、もう三ヶ月も経ったのか……?」と愕然とする程に忙しい日々を送っているような状況だったりしたようだ。


 まぁ実際、天照のところで神楽の当主は死にそうな顔してたしね。

 急かして悪いとは思うけれど、こればっかりはキミたちの世界の事なんだから、キミたちがどうにかするべきものだ。


 そんな忙しそうな彼らを横目に緑茶をすすっていた僕に一瞬恨みがましい視線が向けられた気がしなくもないけど、きっと気のせいだと思う。


 探索者たちの成長も想定していた範囲での推移というところだろうか。

 やはり日本と同じようなこの国、大和連邦国はどうにも平和ボケしているというか、探索者の応募総数は他の国に比べても少ない。


 血気盛んな国や、もともと国としてもかなり厳しい状況に追い込まれていて、ハングリー精神が強い国では国民の七割以上が探索者登録をしている。

 目立った産業もなければ技術もない国の場合、ダンジョン素材が高額で取引されているというならダンジョンの方がよっぽど稼げるという考えだろうし、悪くはない選択だと思う。


 そんな国に感化されて負けられないと感じたらしいある国では、探索者登録義務なんてものまで発令しようとしたりという事もあったぐらいだ。

 まあ、さすがにそれは多くの反対の声があがったせいで霧散していったけども。


 魔導具の基礎構造はジュリーが技術公開に踏み切った。

 あくまでも基礎の基礎という技術ではあったものの、これで国、あるいは会社といった組織もまた様々な魔導具を生み出す事になるだろう。


 もっとも、魔力障壁については魔導具として一切表には出していない。

 魔導具を犯罪に使われるという事がジュリーとしては許せないようなので、もしも作るとしたら【覚醒者】が当たり前に魔力障壁を作れるような時代になってから、という考えのようだ。

 僕個人の感想を言えば、所詮は道具なのだからあとは使い方なんてそれぞれ人次第で如何様にも変化していくだろうし、どっちでもいいと思うけどね。

 悲惨な事件が起こったとしても、そういう事件があったからこそ人は学ぶものだとも言えるし、実感するものだと思っているからね。


 実際、【覚醒者】による犯罪というものはゼロではない。

 すでに何人かの【覚醒者】が犯罪を犯して、警察組織、または軍の【覚醒者】対策班によって殺されている。

 というのも、【覚醒者】が魔力を利用して犯罪を犯した場合、その罪は非常に重いものとなるし、無理に取り押さえようとするよりも殺してしまった方が簡単だったりもするからこそ、生死不問で解決するよう亜神を通して通達させた。


 正直、犯罪者なんていう存在を殺さないように逮捕しようとして対策班側の【覚醒者】が何人も犠牲になってしまうというのは、僕から言わせてもらえば割に合わない(・・・・・・)のだ。

 倫理やら未来やらなんて綺麗事を言いたければ、それは勝手に人間の領分の中でやっていればいい。そもそもそんな事に慮っている暇があったら、さっさと魔力に馴染むようダンジョンに入ってほしいというのが本音である。


 あぁ、あとなんかおかしな宗教とかも出てきたっけ。


 魔力に目覚めるとは神に近づくということで、魔法少女を聖女として崇め、【覚醒者】を新人類として敬うだとかなんとか言ってる『神魔教』とかいう謎の宗教だ。


 別に好き勝手言うのは構わなかったんだけど、その宗教が何を勘違いしたのか、海外で【覚醒者】に対して未覚醒の普通の人間を奴隷のように与えていたみたいだ。そのふんぞり返っている映像がSNSで流れてきたんだよね。

 なのでとりあえず、その【覚醒者】と宗教の人間と思しき連中の拠点という拠点に雷を落とし、ついでに生存者はダンジョンの奥深くに放り込んでおいた。

 そんなに尊いだのなんだのと騒ぐなら、せいぜい生き残ってキミたちも【覚醒者】になればいいよ、という僕の優しさである。誰も出て来れなかったけど。


「さすがにやり過ぎでは……?」


「え? なんで?」


「いえ、警告から始めても良かったのではないかと……」


「わざわざ神託を下すっていうのも面倒だし、別に【覚醒者】も魔法少女も、魔力に適応すればなれるんだから、さっさと道を示してあげた方が手っ取り早いじゃない」


「……そう、ですか……?」


 天照が何故かドン引きしていた気がするけど、その理由はいまいち判然としなかった。


 確かに僕も【覚醒者】には増えてほしいと思っている。

 でも、それはあくまでも『【覚醒者】の中の上澄みとなる存在が育ってくれる下地を作りたいから』だ。沈殿してしまうような存在(モノ)までどうにか掬い上げるような趣味はない。

 だから、そういう存在を処分する事に対する否やはない。

 ただそれだけの話だったりする。


 世界の基盤、つまり魔力を放出させ【覚醒者】を生み出す体制は整えた。

 探索者ギルドでは未覚醒者と【覚醒者】でまずは分けて、【覚醒者】についてはその実力と魔力適正によってランク付け制度を開始したりと、探索者ギルドは僕が前にいた世界の冒険者ギルドみたいな役割をしっかり果たし始めている。


 あとはルイナーさえどうにかすればいいんだけど、なんだかんだ色々と準備を進めている内に二年という歳月が流れてしまった。

 その間、僕は一切魔法少女にも会っていないし、『みゅーずとおにぃ』の二人組の育成についても唯希を通しているので僕が顔を出すような事もない。


 僕が関わりのあるところだと、凛央魔法少女訓練校だろうけれど、あそこはどうやら一人の魔法少女が英霊召喚系の魔法に開花したようで、魔法技術はそちらが教えているらしい。

 そこにルーミアが戦闘訓練をつけているとの事なので、実力もかなり上昇してきているのか、ルーミアも楽しそうにしていたのが印象的だ。


 加えて、『みゅーずとおにぃ』の実力は【覚醒者】の中では確実にトップを独走している。

 あの二人はまあ、魔法少女に近い妹ちゃんの力が大きく伸びて、おにぃの方もかなり魔力を扱えるようになって、唯希から牽制用に軽い魔法を教わったりもしているからね。

 唯希自身も彼女の中にいた精霊を目覚めさせたおかげで魔力量が大幅に伸びる形になって、今ではかなりの実力者と言えるぐらいには成長した。


 あとは……『暁星(スティラ)』の活躍も凄い事になった。

 というのも、彼らは棄民街を完全に裏から牛耳る形になって、国との交渉についても棄民街――いや、元棄民街側の代表陣をコントロールできるようになっているという。

 ちなみに交渉なんかでの頭脳はジルが担ってくれているんだけれど、上手いんだよね、ジルは。

 執事とかより宰相っていうポジションがしっくり来るよ。


 そんな訳で、世の中はこの二年という歳月の中でかなり大きく変化したと言えるだろう。


 となれば……そろそろ動けると考えてもいいかな。

 まずは手始めに、彼らの実力を見せてもらうとしようか。


 そう考えて、僕は手始めに彼女たちに攻撃を仕掛ける(・・・・・・・)ことにした。

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