表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/14

8話 役立たず

 兄の強さは弟と比べ物にならなかった……



「ぐッッ!!?」

 

 俺の目前ではラインが手も足も出ずに蹂躙されていた。

 起き上がっては殴られ飛ぶ。

 起き上がっては蹴られ飛ぶ。

 頑張ってラインも反撃するが掠りもしない。

 

「ほれ、早く当ててみろ。まだ私は余裕だぞ?」

 本物の魔王はまだ本気では無かった。

 弟と一緒で嬲るのが好きなため、かろうじてラインは、俺たちは生かされていた。


 ラインもそろそろ限界が近い……


 タンクは既に大楯が壊された上に左腕と右足が千切れており、今にも失血で死にそうだ。

 そこをぎりぎりシャーロットが回復と癒しの魔法で生存させていた。


 ソフィアもなかなか隙が掴めず攻撃に出れていない。

 彼女の強さは死角からの攻撃であって、正面勝負は得意でないのだ。


 俺もさっきから、魔法を放っているが全然効いてる様子がない。


 その間にもアレンはまた吹き飛ばされる。


 

 クソっっ!

 あいつは人類最強なんだぞ!!?

 せめて「勇者の限界突破」が残っていれば……


 無い物ねだりをしても仕方ないが、願わずにはいられなかった。


 魔王が呟く。


「はぁ…今代に勇者が誕生したと聞いたからどんなもんかと思ったが……これは拍子抜けだな」


 ラインはもう虫の息だった…

 魔王は左手でラインの顔を鷲掴みにする。


「やめだやめ、興ざめだ。雑魚をいたぶるのは間に合ってる」


 例えばこんなふうにな…と魔王はラインの体に腕を突き刺した。


「あぐッッッッッ!!!?」


「「ラインッッッ!!!!!」」

「ラインさんッッッ!!!」

 俺とソフィア、シャーロットが叫ぶ。


 ラインの背中から魔王の右腕が生えていた。

 

「ぉ、お前、、ら。に、逃げ、、、、、ろ。こ、、、こいつは、、、だめ、、だッッッ!!!」

 ヒューッ、ヒューッと言いながら俺らの身を案じるライン


「ん?まだ喋れるのか…勇者は随分と頑丈なんだな……これは眷属にしたら面白そうだ」


 口を開けて魔王はラインの首に噛みつこうとする。


 

 そこへソフィアが飛び込んだ。

 一瞬で物陰から飛び出し、魔王の死角から短剣をふるう。

 綺麗な放射線を描いた短剣の軌道は魔王の首に………


 


 刺さらなかった。



「目障りな蝿だな…鬱陶しいぞ!」


 左腕を剣のように振るい、ソフィアを吹き飛ばす。


「ソフィア!!!!」

「ソフィーー!!!!」


 壁に強く激突した彼女は気絶していた。

 彼女のお腹はぱっくり横に割れ、止めどなく血が流れる。このままだと彼女の命も危ない。

 

 右腕をラインの体から抜いた魔王はこちらに振り返る。

 ラインの体の真ん中には空洞が出来ていた。

 でも辛うじて肩が上下しているため、生きている。

 だがラインも時間の問題だ……



「さぁ、後はお前たちだけだぞ?仲間の仇は取らないのか?」

 

 その問いに俺たちは答えられなかった。

 俺はシャーロットを横目で見る。

 彼女は恐怖に震えて声が出ないようだった。


 俺はとりあえず彼女を庇うように前へ出る。


「ん?お前が出てくるのか?見たところこの中で1番弱そうだが……その勇気は大したものだ」


 魔王に褒められるが全く嬉しくない。

 少しばかりの膠着が続く。

 このまま、下がってくれれば良いが……

 そんな馬鹿なことを考えていると、


「お前から来ないなら、我から行こう!!」


 うっっ!来たッッ!


水の刃(ウォーターカッター)!」

 とりあえず横に広がる範囲攻撃を放つ。

 だが手応えはなかった。

 代わりに後ろから悲鳴が聞こえる。


「きゃっ!あゔぅぅッッ!!」


 すぐに振り向くと

 そこには魔王がシャーロットの首を掴んで頭上に持ち上げている姿が見えた。


「おい!俺が先じゃないのか!!?」

 思わず叫ぶ。


「こっちから潰した方が面白そうだったのでな。

 離して欲しければやってみろ!!」

 嘲笑うかの様に俺をみる。


 


 シャーロットはバタバタと苦しみながらもがいて拘束から逃れようとする。

 魔王は全く力を弱めず、逆に力を加える。


 シャーロットは更にもがく……が抵抗が少しずつ薄くなっているのが分かった。


 俺は死に物狂いで魔法を放つ。

 何度も何度も何度も。

 だが全然効かず、魔王は嗤うだけだった。


 くそっ!!このままじゃ!!このままじゃ皆死ぬ!


 どうする!?

 

 どうする!?


 何か起死回生の一手は!!?


 アレンはパニックになっていた。

 今までは仲間がいた為、どんな状況でも冷静に対処できた。


 だが今は?

 タンクは倒れ、ラインは貫かれ、ソフィアは切り裂かれ、シャーロットが窒息させられる。


 こんなことは今までなかった。

 未知の状況だった。

 

 


 やっぱり俺じゃダメなのか!?


 


 なんの役にも立たないのか!!!?


 


 唇を噛み締めすぎて血の味がする。


 

 関係ない!


 

 左手を握りすぎて血が滴り落ちる。


 

 関係ない!


 

 魔力がなくなってきて、魔力欠乏症になりかける


 

 関係ない!


 

 この状況を!!!!!!!!!


 どうか!!!!!







 



 

 



 ふと何かがキラキラと反射して視界に映った。


 


 


 








 思わず顔を上げると、そこにはシャーロットの首にかかっていたペンダントが外の光に反射して輝いていた。


「これだっっっ!!!!!」

 思わず叫ぶ。



 起死回生の一手。


 彼らを助ける方法。


 奴を倒す方法。


 あのペンダントと一緒に解決しよう。


 そこに躊躇いはなかった。

 それは初めて唱える魔法だった。

 失敗は許されない。


 だが、必ず成功する!!!


 俺は静かに、でも力強く唱えた。


俺の人生を全て力に(ライフバースト)


 

その瞬間、膨大な魔力がアレンから溢れ出した。



 


 


次回をお楽しみに。


少し時間空きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ