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5話 魔王城

「みんな準備はできたか?」


ラインのかけ声に俺たちは良の合図を送る。


「よし…行くぞ!」


 お昼に差し掛かる前に、俺たちは魔王城に向けて歩き始めた。

 ちなみに、これが魔王の罠であることにみんな気付いている。魔大陸に入ってから凶暴な魔物とは何度か戦ったが、魔族に襲われることは一度もなかった。

 彼らのテリトリーに入って何もないことなどあり得ない。それがみんなの共通認識だった。

 でも乗らない手はない…絶好の機会(チャンス)だ。この機会を失えば次に挑むのはまた難しいだろう。

 それぞれがそれぞれの思いをのせて森の中を進んでいった。


「やっと着いたな…」


 目の前にある魔王城はとても大きかった。

 野営していた時でも遠目に見えていたが想像以上だな… 王都の王城よりでかいんじゃないか?

 ふと、そんなことを考えるが敵地のど真ん中にいることを思い出し思考を切り替える。

 

「じゃあ門を開けるぞ」

 

 ラインが着いてからすぐに門を開けようとする。


「あ、ちょっと待って」

 

 俺は門を開けようとするラインを止めた。なんだ?とラインは振り返る。


「これ、昨日作ったんだ。簡易障壁を展開する魔道具だから多少なりにも使えると思う。

 今からこれを4人に配るから首からかけておいて」

 

 そう言いながら例のペンダントを渡す。

 なぜこのタイミングで渡したかというと、ゆっくりしている時に渡すより急いでいる時に渡した方が何も聞かれないと思ったからだ。

 シャーロットを除いた3人はなんだこれ?みたいな顔をしていたが、思惑どおり特に理由も聞かず首からかけてくれた。


「まぁ、お守りみたいなものだから気休めにしかならないかもだけど…後、みんなもだけど特にラインは気を張り詰めすぎだな。適度な緊張感は大事だけど、張り詰めすぎたら本来のポテンシャルが出せないぞ」

 

 できるだけ笑顔で優しく諭すように話しかける。

 一般の魔法使いごときが勇者に何を言ってるんだと思うかもしれないが、彼らのメンタルを調整し最適に導くのも俺の役割だと思っている。だからここは譲れない。



「……ふぅ、確かに気を張り詰めすぎてたかもな。助かる、少し余裕ができた」


 肩をぐるぐる回しラインが苦笑する。こういう素直なところも人気の一つかもな…

 ラインに合わせてほかの3人も気持ちを落ち着かせていた。

 準備が整ったところで


「よし、改めて…行くぞ!」


 俺たちは自信に満ちた顔で門を開け侵入した。






ーーーーーーーー


「何もないな…」


 俺たちは無事に魔王城の中へ侵入したが、驚くべき程静かだった。

 全体的にきれいで掃除は行き届いてそうだが、人気が無くなんか不気味だ。

 城内の階段付近には城の案内図があった。おそらぬ先代魔王時代の名残なのだろう。

「玉座の間へ向かったほうがいいんじゃないか?」

 俺は案内図の最上階を指しながら提案する。みんなも同じ考えだったようで全員賛同する。

 索敵担当のソフィアを先頭にタンク、ライン、シャーロット、最後尾に俺といった陣形で進む。

 警戒を怠らず、慎重に進んでいく。

 だが、予想に反して何もなくすぐに玉座の間の前まで来てしまった。

 思わず「静かすぎるだろ」と呟きそうになるほどだ。

 まるで嵐の前の静けさのようだな…


「よし…じゃあ扉を開けるぞ」

 

 みんなも頷きラインが扉を開けようとする。

 

 その瞬間、周りの雰囲気が変わった。


 

 これは、、、血の匂いだ…

 

 むせかえるような濃い死の香りがする。

 俺たちは警戒心を最大限に引き上げ慎重に扉を開け中に入った。







ーーーーーーーーー


 

 玉座の間に入った瞬間、俺も含めてみんな絶句する。


 …そこは大勢の死体が転がっており、一面血の海だった。


 右手をみても左をみても死体。ざっと数十人はいるだろう。おそらく全員魔族だ。

 

「おい、部屋の真ん中あたりで誰か立ってるぞ」


 タンクが初めに気づいて、みんなもそこを見る。

 そこには1人の男性が立っていた。

 白髪の長髪で痩せ型、体のいたるところに血がついている異形の存在。

 一瞬、死んでいるのかと思ったがどうやら違ったようだ。

 

 そいつはゆっくり振り向きこちらを捉える。


「おやおや~?どうやらやっとメインディッシュがやってきたようだね~」

 

 酷く耳に障る声だ。

 血に濡れた両手を広げ、気味が悪いほど白い顔を醜悪に歪め、表情とは裏腹にひどく間延びした声で俺たちに話しかけてくる。


「こ、この倒れている人たちはなんだ!!」

 

 ラインはそいつに質問する。

 

「あ!このゴミどものことかい?これはね~食卓にやってくる家畜たちに賭けようとした哀れなゴミさ!ゴミはきちんと処分しなきゃいけないだろう?」

 

 さも当然のような物言いに俺を含めた全員が絶句する。

 

 こいつ頭が狂ってやがる…


「あ、貴方には心というものがないのですか!?ど、どうしてこんな酷いことができるんですか!?」

 

 シャーロットが声を荒げて糾弾する。


「ん~どうしてって言われても、そもそも家畜に僕の気持ちを理解してもらおうとは思ってないからね~。あ、そういえばゴミを処分してたらお腹が減ってきちゃったな~……」 


 化物は急に話を変え、口を舐めずさって俺たちを見つめてくる。

 よく見ると口の端には鋭い犬歯が生えており、目は血のように赤かった。


「もしやその髪の色に赤い目、それに鋭い犬歯…お前が魔王か!!?」


 ラインは特徴からこいつが魔王じゃないかと推察する。


「ご明察だよ家畜。褒めて遣わそう。僕が魔王さ。

 そういう君は勇者だろ?家畜にしては力があるようだが…まぁ、勇者もそこの弱そうなやつも、僕の前では等しく食べ物だから問題ないね!

 あぁ、それにしても僕は君たちがここに来るのを今か今かと待ちわびていたんだよ?

 希望に満ちた顔で僕の前に現れ、そして絶望した顔で僕に食われる!あぁぁぁ、想像しただけで涎が…そんな究極的なスパイスのために今まで君たちを見逃していたのさ!」


 急に流暢に話し始める魔王を見てドン引きするが、気になることがあった。

 

 やっぱり罠だったか…


 全員気付いていたことであり誰も驚いていなかった。

 それと同時にこいつとは分かり合えないことを悟る。

 

 俺はみんなと目を配り臨戦態勢に入る。


「ん?家畜が驚かないな、面白くないが、まぁいい!

 さぁ、早く殺しあおう!ゴミの処分は終わった。今からメインディッシュだ!」


その言葉を皮切りに、魔王との戦闘が始まった。



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