1話 魔王戦前日
読者の皆様、こんにちは
初めての投稿なので、優しい目で見てください…
「ようアレン!調子はどうだ?」
そう言いながらテントの中で準備している俺にラインが話しかけてきた。
「ん?ラインか…
今日は流石に疲れたな。身体強化なしじゃここまで歩けなかったし。
今は明日に備えて準備中だ」
肩をすくめながら苦笑する。
今、俺たちのパーティー「栄光の導」は冷酷無比な魔王…吸血鬼王を倒すためにはるばる魔大陸までやってきていた。
魔大陸は俺たちが暮らす王都から南の方に進み、海を越えた向こう側に存在している。
そこでは魔族達が暮らしており、俺たちの大陸には居ない凶暴な魔物まで住んでいるため、人類が行くことは殆どない土地だ。
魔大陸自体は船で行けるのだが、そこから魔王のすむ城まではろくに道も整備されていないため歩く羽目となった。
「そうか。まぁ俺はそんなに疲れてないけど。
お前は軟弱だし魔法使いだからな」
ラインが笑いながら冗談を言う。
「俺はお前と違って勇者じゃないから体力は人並みなんだよ……ってか、魔法使いは関係ないだろ。世界中の魔法使いに謝れ」
ラインと冗談を言い合いながら談笑していると、テントの外からソフィアの声が聞こえてくる。
「やっほー!2人とも元気?
そろそろ夕飯ができたから呼びにきたよー。
なんと今日は、タンクが狩ってきた巨大猪のシチューだよ!」
ソフィアはテント内に入り、グッと親指をだす。
「おーー!巨大猪のシチューか!あれ美味しいんだよなー。
よし、アレン。俺は先に行ってくる!」
と言い残しラインは光の速さでテントから出て行った。
あまりの行動の速さに呆然とする。
「流石勇者様、行動力が違う…
ソフィアも呼びに来てくれてありがとう。あと少ししたら俺も行くよ」
手をひらひらと振りソフィアに合図する。
正直、俺もお腹減ったし行きたかったのだが、もう少しだけ準備をしておきたかった。
「あら、そう?分かったわ。
そういえば、シャーロットが貴方が来るのを今か今かと待ってたからできれば早くきてね?」
そう言ってソフィアは笑いながら手を振り、テントから出て行った。
……シャーロットはそんな忠犬みたいなことしないだろ。と思ったりしたが、お腹が鳴ったため早く終わらせて食べに行こうと思考を切り替えた。
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黙々と作業を続ける中、思考する。
明日は魔王戦…おそらくかなり熾烈な戦いになる。
仲間たちの今の雰囲気は、少しお気楽な気もするが、その分実力があり、自身の現れだと解釈している。
勇者のライン・グローリー
聖女のシャーロット・エングレム
戦士のタンク・ハルバード
盗賊のソフィア・スカーレット
4人とも王都や他の国々では知らない人がいないほど有名で強い。
ラインは神から勇者として選ばれ、その後からメキメキと頭角を現した奴だ。
シャーロットも神から選ばれた聖女であり、治癒や神聖な力で闇に光を差し、人々に安らぎを与える。
タンクは実家の父が王都の将軍なので、小さい頃から鍛えられていた。
持ち前のセンスで強靭な肉体と鋼の精神を磨き上げ、あらゆる強敵の一撃でも耐える強さがある。
ソフィアは盗賊であり、探知能力や隠密性、俊敏性がずば抜けて高いため不意打ちや、斥候など多くの役割を担っている重要なポジションだ。
それに比べて俺の強さは特になく、一般の魔法使いと変わらない。
優れた魔法使いが多く輩出されるウォーカー伯爵家に産まれたが、俺は特にこれといって突出した点がなかった。
幸い両親や家族は優しかったため迫害や追放はなく、貴族のパーティーや学校など不自由なく行かせてくれた。
初等部の頃に今の4人と出会い、身分を超えた親友同士となれたので、親にはとても感謝していた。
16歳の頃に5人でパーティー「栄光の導」を結成し、活動を始めた。
初めは順調だったが、挑む冒険の難易度が上がるたびに4人との実力差が顕著になっていた。
いつの日からか、俺は周りの貴族達や同年代のやつらに、「お前はあのパーティーに相応しくない」、「僕の方が何倍も強いのになんでこいつが」などと散々に言われるようになった。
正直辛かった。
だが、ライン達は「アレン以外とはパーティーは組まない、強さだけが全てじゃない」と公言してくれたため、貴族連中も「邪魔をしないなら」としぶしぶ容認してくれた。
まぁ……4人それぞれが一騎当千のような能力を持ってるため、1人ぐらいはいいか。と楽観視している可能性もあるのだろうが。
とは言え最初は俺も「なんで自分だけこんなに!」と思い詰めた時期があった。
自暴自棄となり、仲間達にキツく当たってしまった時もあった。
でも、彼らはそんな俺を見捨てなかった。
ある時から俺は考えを改めるようになり、火力面でなくサポート面で仲間に貢献しようと思い始めるようになる。
バフやデバフ魔法、シャーロットには敵わないが治癒魔法まであらゆる分野を勉強し習得した。
少しでも彼らの役に立ちたい…
そんな想いがアレンを突き動かしていた。
明日はどれぐらい通用するだろうか…
少し不安になるが、今からこの状態では明日に影響する。
気持ちを押し殺して準備を進めていると、バッグの中から小さなペンダントが出てきた。
アレンはそれを片手に持って思い出す。
「あー、そういえば万が一のためにこれ、入れてたな。
保険は多い方が良いから……使ってみるか」
アレンはそう決断し、カバンから4つの小さなペンダントを取り出して魔法を注ぎはじめた。