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事務子と診断書を巡るトラブル①

今回は会社に提出するための診断書のトラブルを紹介します。


<休職が必要な患者さんの診断書のトラブル>


体調が悪く1週間仕事を休んでいる患者さんが初診で来院されました。

診察をし、休職が必要と判断され、診断書を発行することになりました。

来院した日が初診のためその日以降休職が必要と記入し、患者さんが会社に提出しました。


翌日、患者さんが「診断書のことで相談がある」と受付に来られました。

話を伺うと、職場の上司から、先週から休んでいるため、休んだ日から休職が必要と書き直してもらってくるように言われたというのです。


この場合、書き直しができるのか?

結論から申し上げますと、出来ません。

なぜなら、初診日以前の患者さんの状態は分からないからです。

診ていない日に対しての診断というのはできません。

先週から体調不良と訴えているのはあくまでも患者さん側の主張であり、判断する医師にはそれが事実か確認のしようがありません。

おそらく医師法第20条(無診察治療等の禁止)

医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書を交付してはならない

に抵触すると思われます。

また虚偽公文書作成罪に問われる可能性があります。

以上の理由からできないと患者さんに説明しましたが

「職場がそう言っているのに書き換えるだけが何故できないのか」と納得して頂けず、しまいには病院が意地悪をしていると訴え始めました。

そのため、これ以上強要するようであれば患者さんに対して強要罪で被害届を出さなければならなくなると伝え、職場にもこの話をしてくださいとお願いし、帰って頂きました。


おそらく、職場からすれば欠勤が続いている理由が欲しいためだと思いますが、有給休暇で処理すれば問題ないと思います。

有給休暇が残っていなかったとしても、欠勤として処理するか、連絡が取れないのであれば無断欠勤として会社の規則に則って処理すればいいと思います。

これらのことを行うのが面倒くさくて医療に簡単に投げるのはあまりにも失礼ではないのでしょうか?


このケースでは職場の方にも問題がありますが、患者さんも体調が悪いなと気づいた時点で受診していれば起きなかったことです。

ましてや仕事を連日休むくらいの状態であれば、普通は早い時点で受診するのではないでしょうか?

病院へ受診するのはお金もかかるし面倒かもしれませんが、社会人ならもっと自身の体調に関心を持って頂きたいですし、会社の規則をきちんと把握して無用なトラブルは起こさない方がいいと思います。


「書き換えるだけ」なのに病院は冷たいんだなと思う方もいるかもしれません。

しかし、可哀想だからと情けで根拠のない書類を作成すると、医師が逮捕されてしまいます。

たった一回の書き換えで罪に問われれば、病院が閉院に追い込まれてしまいます。

これらのリスクを犯してまでできることではありません。

患者さんの何気ない要求が犯罪行為を起こさせるきっかけになってしまう恐ろしさを理解して頂きたいのです。


患者さんとのトラブルが起きた時、客観的事実や法律に基づいて説明してもなかなか理解して頂けず、感情的に非難されると、どうしたら分かっていただけるのかいつも考えます。

ほとんどは、時間を置くことで患者さんが理解して解決する事が多いです。

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