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ノストラダムスの予言の頃に

作者: さいころ

この作品を青春を懐かしむ全ての方々へ捧げます。

 「ノストラダムスの予言の頃に」


 序章


 1991年、恐怖の大王が天より姿を現すだろう。

 当時10歳だった僕には、解釈ができるわけもなく、ただ世界が滅ぶかもしれないとうSFでしかなく、空想のおもちゃでしかなかった。

もしも本当に地球が滅びたら。

もしも本当に何かが変わるとしたら。

ほんのちょっとした期待と不安、そして何とも表現できないワクワクした感情が交錯し、少年時代のかけがえのない時間を形成したのは言うまでもない。

そうして僕は四季を何度も数え、瞬く間に17の年月を重ねていた。


第1章「27歳の日常」


朝の通勤ラッシュ。大阪環状線は山手線ほどではないだろうが、毎朝想像通りの大混雑となり、サラリーマンやOLのモチベエーションと体力を奪い取りぐるぐると回っている。僕もそうした中で6年も周り続けている。我ながら気を保っているのが不思議ではあるが、もう慣れてしまったのか、感情がなくなってきているのか、機械のように通勤している。

「おい、佐藤。昨日の資料どこなんだ。」

また、いつもの調子で、課長が何かと僕に攻撃を開始している。まだ始業前なのにと思いつつ、課長の指示通りに資料を提出する。始業時間は9時で終業は17時。そう聞いて入社したが、実際は御覧の有様である。残業を8割がた付けられるだけでもこれでもほかの会社よりはいいのではないか。事実か事実ではないかはわからないが、そう言い聞かせることで今日も1日を耐える。なんて有意義な時間なんだろう。皮肉を言う相手もいない。同期入社の社員は、皆そのまま退職、転職、寿退社と見事に1人だけになってしまった。Facebookで見る現状の幸せそうな表情、旅行の写真を見ていると、そんな相手に愚痴を言いに行く気にもならず、一人で抱え込んでいた。

「さて、そろそろ皆も切り上げて帰れよ!、ライフワークバランスを大切にしないと、充実した生活は送れんぞ。ハハハ、お疲れ様。」

時刻は18時、課長がいつもの如く的確に苛立つ気持ちを増大させ帰宅する。ある意味天才ではないか?苛立たせ選手権で1位の帰宅とあって、社員一同お疲れ様とその栄誉を称えている。帰宅前にデスクに分厚い書類を置き、よろしくと一言言わなければ僕も称えてあげていただろう。何はともあれそこから1時間で仕事を終わらせ、牢獄を出ることができた。割愛はしているが、怒鳴られ、無理を強いられ、ハラスメントの限りが今日も行われていた。もう疲れすぎた。そうして電車に揺られ、最寄りのコンビニ弁当を購入し帰宅する。そんな僕にもささやかな楽しみが2つある。

1つ目は趣味である『カラオケ』このアパートに決めたのも、徒歩5分で気に入ったカラオケボックスがあったからだ。ただ好きなだけで上手いわけではない。なのでみんなで大勢の『カラオケ』は好きではない。このストレスを発散するため、大きな声を出せるから。学生時代から1人での『カラオケ』を趣味にしている。

2つ目は『近くの公園のベンチでまったりと座ること』である。急に黄昏て恰好をつけているというわけではない。そんなにオシャレではないし、座ること自体が好きな落ち着いた出来た大人でもない。『近くの』という部分が重要なのである。そこに毎週水曜日になると、落ち着いた女性が必ず訪れる。背丈は160センチくらいで、落ち着いた印象、髪はミドルというのか長すぎず、短すぎず。すらっとした体系の女性である。そこで本を読んだり、何もしなかったりと思い思いの時間を過ごしているようである。会社と家の行き来だけで、恋愛とは年単位で縁がない僕にとってはそこでその人がいる空間で、ただまったりとするのが至福なのである。あっという間に恰好を付けているから、気持ちが悪いという内容に変わったが、自覚もあるので構わない。その人に何を求めている訳でもない。ただ、ちらっと見るだけでなぜか気持ちがほっこりとする。その時間を日々の貴重な癒しの時間として、何とか保っているのである。そして、今日は水曜日。だがあまりにも疲れているので、公園を通り過ぎるだけにしよう。そう思い、通り過ぎたがその女性の姿はなかった。ついてないなぁ。まるで用事があるかのように毎週必ず居た彼女がいないなんて、相当今日はだめな日だ。彼女にも生活があって、用事もある。当たり前だが癒しがなかった僕は、冷めた弁当を食べ、シャワーを浴び、そして倒れるように眠った。


第2章「同窓会」


環状線の中で、僕は珍しくワクワクしていた。もちろん、会社に行くのが楽しみになった、などという可笑しなことではない。午後から休みを取り、地元で同窓会があるからだ。かなり前から予定が組まれていたため、こんな会社でも半日なら何とか休暇を申請することができた。課長からは

「半日も1日も変わらん。俺が若いころはなぁ・・・・・・。」

と、1時間弱説教されたが、唯一の信頼できる先輩である、才谷さんがうまく課長を説得してくれたおかげで休暇を取ることができた。先輩にはいつも頭があがらない。

半日が過ぎようとしていた11時ごろ、取引先の会社からの突然連絡が入った。

「資料が一向に届かない、どうなってるんだ。」

自分が作成した資料が届いていないとのことだった。確かに、作成して課長に渡したのだが・・・。課長のもとへ向かうと少し動揺しているようだった。おそらく、課長が送付するのを忘れていたのだろう。この会社との取引については、課長が主導となって進めている。だが実際は、資料作成、内容の企画・立案・修正などに至るまでほぼ部下任せになっている。ただ相手の企業へのアピールや社内の部長などへのアピールのため作成したものは課長の元へと集められ、送信ややり取りのみを行っているといった状態だった。もうこの会社ではよくあることなので、気にしていなかったが、怒りの矛先がなぜか自身へと向けられた。

「お前が送信したか、確認しなかったのが悪いんじゃないか。すべて私任せにしていて進捗確認すらできないのか。今すぐ先方に謝りに行ってこい。」

あまりに無茶苦茶で、今まで課長自身が表に立ってやり取りしていたのに、トラブルで急に部下任せ。呆れていたが、それよりも午後からは同窓会がある。やっと、この日を待ち望んでいたのに。謝ろう。もう何をしても変わらないと諦めたその時だった。

「いい加減にしませんか課長!」

初めて聞いた才谷先輩の怒号だった。社員が思っていた不平不満を、うまくオブラートに包み、そして課長も謝りに行くこととなった。すっきりした。先輩の現場を取り仕切る立ち回りや、角が立たないようにうまく指摘する姿に男ながら惚れ惚れしていた。これはモテルな。そう思っていた最中、

「課長、私が一緒に謝りにいきます。私もグループのメンバーとして責任がありますので。」

そうして佐藤は帰れと言い、課長と先輩の2人で先方へ向かうこととなった。先輩には今まで以上に頭が上がらない。

「才谷先輩、男ですけど惚れました。」

「聡、きもすぎるから早く帰れ。地元は久々なんだろ、今日の件は俺が完璧にうまいことするから、いい子いたら紹介してくれよ。」

紹介なんかしなくても、いくらでも相手はいるのに、冗談でこんなときも返してくれる。先輩へ感謝を何度も伝え、僕は地元へ向かう電車へと乗り込んだ。

GWの初日、各地方は賑わいを見せるが、ここは少し、賑わう程度である。駅から徒歩5分の居酒屋、焼き鳥がメインで地元の人々が仕事や休みに立ち寄っている。この2階を貸し切っているのが、佐藤の同級生たちである。その中でも活発そうな男が声を上げた。

「さあ!みんな久しぶり!なかなか全員とはいかなかったけども、集まってくれてありがとう!今日はまだあと何人か遅れてくる予定だから、先に酔いつぶれないようにだけ気を付けて!それではグラスを持ってください、いきますよ、乾杯!」

勢いよくグラスの音が木造の部屋に響き渡る。口火が切られたとともに、各々が今の話や昔話に花を咲かせ始めた。

「おーい、川品―。こっち来いよ。」

仕切っていた男がテーブルに呼ばれた。同窓会でもリアルが充実してそうなテーブル、俗にいうパーティーピーポーのようなメンバーである。

「大人になっても、やってることは変わらんな。」

それを横目に、隣のテーブルの男が呟いた。

「まあ、クラスのカーストみたいなものの延長戦が社会に出てもあるからな、央も悟ったみたいなスタンス変わってないぞ。」

「リッキーも中間のポジションで俯瞰してるのは全く変わらんぞ」

悟っているのは田中央。俯瞰しているのは加藤力。二人とも当時からクラスでもよく一緒にいた二人だ。そしてまた隣の席には女性メンバーが固まっていた。

「花鈴は最近どうなの?結婚とか予定あんの?ねぇ、ねぇ!」

「ははっ…、そんなの全くないよ。栞は、モテそうだし、そろそろなんじゃないの?」

「いやいや、まだまだ遊びたいし、30過ぎてからかな、今はまだかな〜。」

その横のテーブルでは、黙々とコースメニューを食べている。そのうちの1人の男に、花鈴が声をかけた。

「じいちゃん、変わんないね〜。美味しい?。」

「ぅん…。」

「え?聞こえないけど頷いてるならよかった。」

「…。」

静かなテーブルの男は、鈴木寿々男。寿の字と寡黙な雰囲気からじいちゃんと呼ばれていた。もちろん本人は気に入っていない。勝手に付けられたあだ名だからだ。このテーブルが端にあり、計4つのテーブルに同級生たちが分かれて各々の好きな楽しみ方をしていた。

4つのテーブルに5,6人ずつ。22名が着座し、騒いでいるテーブル、落ち着いたテーブル、女子のテーブル、黙々と食べる静寂のテーブルと分かれていた。久しぶりにあってもクラスのグループ・カーストのようなもの同士で固まってしまうようだ。中には定期的に会っているもの同士もいるようで、会は順調に進んでいた。

「おー、聡、やっと着いたか。適当に座ってくれよ、始まったところだから。」

「間に合った。ありがとう川品。」

電車でようやく到着した聡は、央とリッキーの席に座った。

「聡、久しぶりだな、仕事は順調か?」

「リッキーは知ってるだろ、虐めんなよ。」

リッキーと聡は年に1,2回会っており、互いに会社に就職して勤務地が近いため、互いの愚痴や近況を飲みながら話していた。央とは連絡はたまに取っていた。学生から一緒にいたメンバーで同じグループだった。そこから10分くらい話をしていると、よく聞こえる声で、注目してくれと号令がかかった。

「さて、遅れたメンバーも揃ったからゲームをします!ビンゴゲームで景品はあらかじめじゅんびしてあるので、お楽しみに!当たったものは、その場で遊べたりするものもあるからお楽しみに!司会は私、川品と?」

「花鈴でお届けしまーっす!」

クラスで目立つ男女コンビが、90年代のテレビのようなノリでゲームを開始した。1人ずつにカードが配られ、空いているテーブルには袋に入ったプレゼントとビンゴのための回す機器が置かれていた。川品がいつも使っているようで小慣れている様子でゲームを開始した。

「6番!6番でーす。」

花鈴が甲高い声で読み上げていく。そうしていくつか読み上げた頃。

「リーチ!」

パリピテーブルがリーチを早くも出した。続々とリーチが続き、そして。

「ビンゴ〜!」

初めに宣言したパリピテーブルの男が一番乗りだった。

「さあ、抽選箱からくじを引いてください。さあ、何が当たるのでしょうか?。」

「なんだよ〜一番でっけぇ箱のやつ選べると思ったのによ。」

想像通りのリアクションの後、くじを引き当たったのは小さめの箱だった。」

「うっわ、一番乗りなのに最悪だわ〜。」

文句を言いながら箱を開封した。

「なんだぁ?懐かっし〜。」

箱にはミニ四駆が入っていた。ちょうど小学生の頃、組み立てたモーター付きのミニチュアカーをカスタマイズし、コースを持っている同級生の家で対決させたものだ。クラスで大会を開くほど流行した思い出が男子全員の脳裏に浮かんだ。クラスでいくつかグループの分け目を隔てたものがあり、その一つが『ミニ四駆』である。

「景品はいくつか懐かしいものも混ざっているから、せっかくの同窓会だし思い出しながら楽しもう!」

川品の実家は商店街のおもちゃ屋で、今回も恐らく調達してきたのだろう。大人になった後にはおもちゃを卒業したものがほとんどだったが、同窓会の空気やお酒の力もあり、盛り上がりを加速させた。

「ビンゴ!」

次にビンゴを当てたのは、リッキーだった。いつも俯瞰したキャラとは違うのは、先ほどの『ミニ四駆』に人一倍熱心だったからであろう。今はラジコンを趣味にしており、興奮冷めやらぬ様子である。聡は、もう2つ目のミニ四駆はないだろうと冷静な目でリッキーを眺めていた。

「12番!」

リッキーはわくわくした表情で箱を手にしたが、少し大きめの箱なのを確認すると、いつもの冷静な目になり、黙々と開封した。

「あ、あったなー!これも流行ったわ。」

リッキーが持っていたのは『MDプレイヤー』そして川品特製スペシャルとタイトルが書かれたMDだった。

「知り合いが丁度倉庫整理をしてて、新品のコンポが出てきたから譲ってもらったんだよ、逆に高級かもしれない。」

川品のネットワークにはいつも驚かせられる。ちょうど店のコンセントがあったので、許可を取って特製MDを再生した。

「これずっと歌ってた!」

「宇多田ヒカルじゃん!この曲デビューだっけ?懐かしい!」

女子がカラオケの如く歌い始め、クラスで行った出し物をする会を男子は思い出していた。次にモーニング娘。が流れると、宴会場はダンスステージへと変貌した。男子もお酒の力もあり、まるでファンクラブかのように声援を送っていた。そしてGLAYが流れるとバンドをしていた川品と何名かが、美声を披露し、第1回クラスフェスは閉幕した。見事なまでに騒いだが、地元のつながりが強い店のため、怒られることはなく済んだのも地元ならではだろう。

「カラオケ行きたいなぁ。」

「2次会はカラオケだな、遠いけどあり。」

早くも何名かは2次会をセッティングし始めたところで、興奮冷めやらぬ中、次の番号を花鈴が読み上げた。

「ビンゴ。」

小さな声で宣言したのはじいちゃんだった。じいちゃんを皆冷静に見ると、大人しいが上背もあり、整った顔立ちをしている。聡は昔じいちゃんと話したことがあったが、不思議な空気感とともに、知的な印象を受けたのを思い出した。きっとその知的さを生かした仕事をしているのだろう掛けてある上着は高級ブランドのものだった。

「うおっ。」

じいちゃんが珍しく大きめの声を上げる。ただ、箱から出てきたのはいくつものガチャポンのボールだった。そんなに驚くものではないが、その場にいた数名だけは時間差で少年・少女時代を思い出していた。じいちゃんが当てた景品そのものは、よくある今思うと何に使うかわからない光が出るおもちゃや、壁に投げるとくっつくおもちゃなどが入っていた。ただそれさえも同窓会のテンションをもってすれば盛り上がるには十分なのである。女子にぶつけ、男子は髪の毛にぶつけられ、まるで枕投げのような光景もまた昔を思い出す微笑ましい光景だった。

「さて、あと景品は一つ!誰が当てるのか楽しみだなぁ?」

川品は準備した側なので、わかっているのだろうが、どうやら川品からすると一番の景品らしい。花鈴が番号を読み上げた。

「び、ビンゴ!」

まさかの自分が当たるとは、思いもしなかったので、挙動不審の不審者のような動きをして聡は景品を取りに向かった。こういう景品やビンゴの類は当たった試しがないので、内輪での催しとはいえ顔がにやにやしてしまっている。深呼吸して川品から景品を受け取ると、一番大きな袋を無邪気な少年のように開封した。

「昔、一番ほしかったものばっかだ!。」

箱の中には当時大ブームだった家庭用ゲーム機とソフト数本、さらに箱が入ってあり、それは最新のゲーム機だった。

「いいなー、最新のだけくれよ!」

「譲って〜同級生でしょ〜。」

男女問わず最新機器を奪おうとしてくる。大人になっても自己欲求は凄まじい奴らだと分析しつつ、聡は旧型の機種を見つめていた。当時欲しいと思って何度も親に強請ったが、ダメだと手に入れられず、リッキー宅や央宅でするしかなかった。それを17年越しに手に入れた。明日からは帰宅してからの楽しみが増えた。明日、いや今したい。それくらい興奮したが、流石にここではと思ったその時。

「せっかくだし、ここでゲームしようぜ。」

唐突に川品が言い出すと、てきぱきと部屋の端に置かれている26インチくらいだろうか、懐かしいブラウン管のテレビが置いてあるところで設置し始めた。許可は取ってあるのだろう、準備しやすいように電源タップも近くに準備されていた。そこからはパーティゲーム、レースゲーム、リズムゲームなど、当時流行したゲームを代わる代わるプレイし、男女グループ問わずめいっぱい楽しんだ。一人ではパーティゲームやレースゲームはできないし、今日来てよかったなと感慨深げになったところで、同窓会はお開きとなった。

多くのメンバーが、先ほどのMDからカラオケに向かう中、数名は帰宅し、数名は移動せずに近くの別のスナックのような店へ向かう中、7名が近くのコンビニに集まった。特に声を掛け合ったわけでもないが、自然と集まったのは、聡、川品、央、リッキー、花鈴、栞、そしてじいちゃんの7名だった。


第3章「秘密基地」


「川品、カラオケに行かなくて大丈夫なのか?あのメンバーならお前が行くのが自然だけど。」

「いいんだよ、今日じゃなくてもいいし、今日は正直このメンバーが集まるから楽しみだったんだ。」

川品は央にさっきとは異なる落ち着いたトーンで答えた。人気者だけあって人に合わせるのは上手い男だが、恐らくこれは素のテンションなのだろう。その姿に懐かしさを覚えた。

「ここだけのあだ名覚えてるのは、俺だけだろ。」

自慢げにリッキーが言った。

「お前は〈カカ〉だろ、そして俺は〈マナカ〉だ、納得はしてないけど。」

央はすぐに切り返した。

「加藤力、リッキーは《カ》が2つあるからだっけ?央は《ナカ》が2つで真ん中か、安直でチープなあだ名だったな。」

川品が由来を思い出すと、それぞれも思い出が蘇ってきた。

「川品は川品謙で《ロ》の字がいっぱいあるから《ロロ》だろ、洋風で自分だけそれっぽいあだ名にするからな。」

聡は不服そうに言い放った。聡はそのまま《サトサト》。女子も栞は塩谷栞なので《シオシオ》と少し雑なあだ名だった。花鈴は苅山花鈴なのだが、《カリカリ》とはならず《カーリー》とアレンジされたあだ名だった。そしてじいちゃんは鈴木寿々男だった。ただ、そのまま《じいちゃん》となった。

「今更だけど何でじいちゃんはじいちゃんのままだったの?」

カーリーがロロに投げかけた。

「元々は《すず》が2カ所にあるから《ベル》ってしようと思ったんだけど、当時自分よりいい感じのあだ名だなって思って嫉妬してそのままにしちゃったんだ。悪い。」

ロロはじいちゃんに今更過ぎるが、謝り、じいちゃんは黙って頷いた。

《ロロ》《カーリー》《サトサト》《シオシオ》《カカ》《マナカ》《じいちゃん》が、集まったのは17年前の夏休み、当時の小学校からすぐの『秘密基地』以来だった。


1999年、春。当時9歳だった僕には、何もかもがまだ新鮮だった。通学路から少し外れるだけで冒険が始まる。上級生は年齢差よりもはるかに大人に見え、歩く大人たちは巨人族に見えた。池は海となり、そこに住む鯉は主である巨大魚に昇華していた。学校が終わると、グループ毎で大きな滑り台のある公園や、ゲーム機が豊富な友人宅など散り散りに向かう。そんな中、ある日、気になっている場所に向かった。メンバーは当時から仲の良かった《サトサト》《マナカ》《カカ》の計3名である。まだこの時は通常の呼び名である《聡》《央》《リッキー》である。

「おい、ここはダメだって。」

央が先頭のリッキーを呼び止めようとする。

「なんだ、子供だましにビビりやがって。高学年らしくどっしりしろよ。」

リッキーが大人ぶった態度で突っ切っていく。そのあとを僕はワクワクして付いていった。ここにある景色は大きな敷地に木や草が生い茂っており、奥に寂れた鉄筋コンクリート造の廃墟のようなものがある。周りを囲む金網がいたるところで破れており、大人では難しい隙間だが子供は入ることができた。ただ、この場所には何かがいる。うごめく影を見た。大きな物音を聞いた。様々な噂が噂を読んで立ち入り禁止で有名な場所となっていた。ただ、そうなるとリッキーは幽霊の類などを信じるわけがないので、検証のため乗り込もうと言い出したのである。僕はこの場所自体がワクワクするので、央は二人に無理矢理の流れとなり、金網の隙間を順に入っていった。敷地はかなり広く、200坪くらいだろうか、ただ手入れされていない状態で、十数年は誰も触れていないような状態だった。奥の建物がうっすらと見えるくらいに草木が生い茂っていた。奥の建物は2階建てだが、2階部分は近づかなくても損壊が酷く、実質は1階部分のみ立ち入れるような状態だった。ただ近づくにつれて、年数が経過した打ち付けのコンクリートが不気味な雰囲気を感じさせた。草木の間を通って、扉が無くなっている入り口まで到着すると、昼間なのに中が薄暗い景色に不安を覚えた。その時だった。

「がさっ。」

明らかに中から音がする。3人とも同時に顔を見合わせた。幻聴でもないらしい。いつもなら冷静に居られたかもしれないが、その場の雰囲気に飲まれて不安に押しつぶされそうになる。

「ぜ、絶対に猫か犬かの動物だよ。確かめよう。」

リッキーが少し声を震わせながら建物の中へと進み始める。

「や、やめようぜ。今日は。また今度…。」

央は止めたが、リッキーは聞こえていないようで、僕も含めて少年探偵団3名が建物の中へと入っていった。

「バタンッ!」

大きな物音が隣の部屋だろうか、近くから鳴った。硬直した3人はその場から動けなくなった。

「ガサッ、ガサッ」

立て続けに物音が続いている。そしてかすかに呼吸音も聞こえてくる。物音が数秒間止んだ後、足音がこちらに近づいてくる。

「だ、誰だ!」

声を上げたのは3人ではなく、現れた同年代の少年であった。央は状況が把握できず、固まっている。

「あれ、じいちゃん?」

僕は見覚えのある風貌を確認したため声をかけた。

「ご、ごめんなさい。」

なぜかじいちゃんは誤った。癖になっているのかもしれない。僕ら3人はじいちゃんと話すことにした。そこでわかったのは、どうやらここでじいちゃんは放課後に『秘密基地』を作っているとのこと。廃棄されたものや、自宅で使っていないものをかき集めて、より居心地の良い空間を作っていたようだった。

「でもいつから作ってるんだ?」

央は先ほどの表情が嘘のように安心したのか質問を次々に投げかけている。

「去年の冬にここで中高生がたむろしていたんだけど、警察やら先生のような人たちが集まってたんだ。そこで、ここはこの地域の中高生の立ち入りが制限されるのを知ったんだ。そうなるとマークされない僕らは安全かなと思ったんだ。いい場所だし、みんながやっていた基地を僕も作り始めたんだよ。」

経緯の説明を把握するよりも、じいちゃんが饒舌に話している姿を始めてみた3人は、驚いていた。確かに学校の敷地内で簡易的な秘密基地遊びをしたことはあった。じいちゃんは校庭に出るようなイメージはなかったので、興味があったことにも意外性を感じた。

「これ、全部集めたのか?」

リッキーがいくつかの机やいすなどを触りながら問いかける。

「集めたものも多いけど、いくつか修理したり、作ったのもあるよ。」

よく見ると市販ではないだろう棚だったり、少しばらつきのある椅子であったりと手作りのものが多数あった。ラジオやボードゲーム、などの娯楽もあり、ばらばらの漫画や雑誌も整頓されていた。この敷地の物音や人影は、じいちゃんだったものも多いんだなと、ようやく3人は確信した。それにしてもよくできているし、この場所はとてもいい。じいちゃんも初めて話すに等しいがとても同学年とは思えない教養を感じた。この場所、魅力的だなと3人が思った瞬間。

「じいちゃん、僕らも一緒に秘密基地に入れてくれないかな?」

普段あまり人に多く干渉しない僕から、自身も驚くような提案だった。それほどにこの『秘密基地』には魅力があった。ただ、じいちゃんもようやく作りあがってきた秘密基地をいきなりいいよと共有してくれる訳がない。

「いくつか約束を守るし、この基地のことは誰にも話さない。いい提案があるから、一度考えてほしい。」

リッキーがじいちゃんに提案すると、それならとのことで、4人は約束を交わし『秘密基地』を4名で作って、遊ぶようになった。

そこから調達や工作、片付けなどを4倍となった人員で整備していった。そして1月後。

「これは、もう住めるんじゃない?」

「まだまだ増やせるけど、一息ついたね。」

リラックスできる空間が完成した僕らは、達成感と満足感で満たされていた。衣食住、水道や電気はないため、その調達は必要だが電池やその都度持ってくるだけで快適な時間が生まれる。携帯ゲームやボードゲーム、雑誌や漫画もより充実し、宿題などができるスペースや昼寝などができるスペースなども完成させた。じいちゃんとリッキーの年齢には合わない知識を活かし、僕と央が協力して調達や作業を行う。放課後にここに来るのが楽しみで仕方がなかった。だが、そんな中最悪の事態が起こる。それは完成から半月後のことだった。

「おい、これ…。」

「なんだよ!誰なんだよ一体!」

そこには整えたいつもの部屋からは見違えるような荒らされた『秘密基地』があった。

「許せない…。」

じいちゃんが2度目の初めて見る表情をしていた。見たくない怒りの表情であった。

「も、もしかしたら、俺のせいかも…。」

央が青ざめた表情で言った。

「どういうこと?」

僕はまだ少し冷静だったので、荒れている二人を制するように質問した。

「3日前に、ここに来たんだけど、いつもと違う道で来たんだ。ちょっと早く来たいって思って。もしかしたら、そこで誰かに場所がばれたかもしれない。」

数分間、沈黙が流れた。冷静になれば、学校も近いしバレる可能性は大いにある。「しょうがないよな」と皆で慰めるのが正しい行動なのだろう。しかし、初めにじいちゃんとの約束であった1つに、来るルートの指定というのがあった。大人が通れないが、僕らだと何とか通れる道があった。そこを通らずにも入れるのだが、今起きた惨事をじいちゃんは想定していた。その経緯があるだけに、「しょうがない」とすぐに言えなかったのである。

「もう、しょうがない。」

じいちゃんが、重い口を開けた。

「とにかく、しばらくは何もなかったように過ごそう。犯人が誰かは僕が動く。学校で静かなポジションだし、行動してても注目を浴びないには適任だ。」

じいちゃんの指示に従い、僕らは暫く『秘密基地』へ立ち入らなくなった。だが、ある日それはあっけなく解決する。

「なあ、佐藤。ちょっといいか。」

クラスの中心人物である川品が声をかけてきた。カツアゲか?パシリか?何かした?と、基本的に関わりあうことがないクラスメートからの呼び出しに、僕は動揺していた。ただ断る勇気もない僕は、指定された誰も使っていない廊下へと向かった。

「佐藤、本当にごめん!」

突然の謝罪に何がなんだかわからなかったが、落ち着いて話を聞くことにした。川品は住んでいる区域も近くなので、よく見かけることがある。たまに飼い犬を散歩している姿を放課後によく見かけた。その散歩の際に、犬を自由に進ませるという一人遊びをしていたところ、手綱を離してしまったらしい。そして隙間のような道を駆け抜けたところにあった『秘密基地』へと犬が着いてしまい、犬を捕まえる際に川品自身と飼い犬がぐちゃぐちゃにしてしまったということだった。後片付けをしたかったが、川品の親父さんは学校でも有名な頑固おやじだった為、時間がなかったとのことだった。川品の事情と、今回の顛末はわかったが、一つ聡には気がかりなことがあった。

「そうなのか、事実がわかったし、安心できるからよかったんだけど、なんで僕のところに来たんだ?知ってたのか?」

『秘密基地』の存在を知っているのは僕ら4人だけだし、ましてやクラスの賑やか担当の川品がそんな事実を知っていて黙っているのも不思議だった。

「もう1か月前くらいから知ってたよ。家も近いし、犬の散歩で無作為に歩くから何度か見かけたんだ。でも俺が行ったら場違いだと思ったし、仲間になりたかったけど迷惑かなと思って。」

驚きだった。川品は中心グループで先導しているような人間なのに、僕らの仲間になりたいなんて想像もつかなかった。ただ、いつものおちゃらけた口調とは違う真面目な口調で川品は語っている。

「少し、考えがあるんだけどいいかな?」

僕は川品を連れて放課後、近くの河原へと向かった。そこでは『秘密基地』メンバーの他3名が待っていた。

「遅れてごめん。実は…。」

琴の顛末を離し、川品は謝罪した。

「でもこれで『秘密基地』はおしまいだ。」

じいちゃんは物悲しい表情で呟いた。

「でも考えがあるんだ。」

僕は思いついた案を3人に提案した。川品が仲間になりたがっていること、そして存続させたい3人が納得できるように、まずはじいちゃんへの約束事を川品にしてもらう。そして川品には『秘密基地』のことを口外しない代わりにメンバーになってもらう。はじめは互いに困惑したが、存続が決定し、川品がこうしてメンバーとなった。

翌日、久しぶりに『秘密基地』に向かうと、以前の通り、いや以前よりきれいに整頓された状態になっていた。

「これで少しは信頼してくれるかな。」

川品が汗だくになって立っていた。どうやら昨晩と、放課後すぐにここに来て掃除したらしい。

「もう、約束もしたし、何度も疑ったりしないよ。でもなんで僕らみたいなグループというかメンバーになりたいんだ?川品はクラスの中心グループにいるから満足だろ?」

央はまだ少し疑念があるのか、とげのある言い方で聞いた。

「羨ましかったんだ。」

川品はゆっくりと椅子に座り、話し始めた。

「初めてお前らを見たとき、俺は何か最近満ち足りてないなって思ったんだ。なんていうんだろう、少年らしさ?ってやつかな。あのメンバーといるのももちろん楽しいんだ。でも、ちょっと背伸びした自分もいるし、変に着飾っているなって思ってたんだ。昔した秘密基地ごっこみたいに心躍る感情がなかったんだ。そこで『秘密基地』を見かけたときにこれだって思った。でも今の自分のキャラとかを考えたら邪魔しちゃうなって思ったんだ。こう見えても色々考えてるんだぜ?」

笑って話す川品はいつもと違う自然体の姿があった。そこから2時間以上、他愛のない話をして、帰宅する頃には5人それぞれとの壁が綺麗に無くなっていた。少年ならではの打ち解け方だったのかもしれない。こうして5名となった僕らは『秘密基地』を中心に放課後を再び謳歌し始めた。


第4章「秘密基地2」


学校には、グループができる。俗にいうイケているグループやイケていないグループ、その間にいくつか男女別や趣味別など様々なグループが形成される。女子のグループは、その中でも形成されるのがとても早い。新年度、新クラスになってすぐにグループが出来上がる。だがその分女社会は怖いもので、足並みを揃えないものや、リーダー格に嫌われるとあっという間に叩き落されるようである。

「ハハハッ、早く行こ。」

廊下ではいつもの女子グループが騒いでいる。苅山花鈴は、その中心でいつものように騒いでいた。それを横目に見ながら、塩谷栞は黒板を綺麗に清掃している。

「もうしばらく話していないなぁ」

栞は物思いに更けていた。小学校の入学前、栞は花鈴と幼馴染で、よく互いの家や近くで遊ぶ仲であった。ただ、小学校に上がり、クラス内でのグループが出来上がるにつれて、性格が明るい花鈴と落ち着いた栞は別のグループになった。そこから自然に互いの距離が開いてしまったのである。ただ、嫌な気持はなく、互いのあるがままに学園生活を送っていた。

ある日の放課後、花鈴は仲の良いグループで帰宅していると途中で用事があるからと別行動を別にした。そうして、いつもは通らないルートを進んでいく。そうして、ある建物の裏手に着いた。

「ここって。」

学校での噂などでよく聞く、近づいたらいけないと言われる廃墟があった。普通なら引き返したが、花鈴は一歩歩みを進めた。

「何してるか突き止めてやる。」

花鈴がこのルートを知っていたのは、以前にたまたま一人で帰宅していた時に川品の姿を見かけたからである。ただ途中で見失ってしまったのだが、もう一度追跡した際にルートを特定することができたのである。クラスで男女それぞれのリーダーの様なポジションの二人は、必然的に対立していた。ここがチャンスだと花鈴は考えたのである。そうして花鈴は建物へと足を踏み入れた。その時。

「誰だ!」

花鈴は即座に見つかったと思いその場で硬直し、立ち止まった。

「ご、ごめんなさい。皆がここに向かってたのが見えたから見に来ちゃって…。」

花鈴ではなく、別の女の子の声だった。聞き覚えがある声、栞だ。もうほとんど話していないので突撃しにくくなった。ただ、かなり近いので動くとバレてしまう。向こう側でなにかを話しているがその場で皆が離れるのを待つしかなかった。男子が数人いる、そこに栞がやってきた。どういうメンバーで何をここでしているのか。謎が謎を呼んで花鈴の脳内を時間経過とともにぐちゃぐちゃにしていく。とにかく待つしかない。決意した時だった。

「おい、なんでここにお前がいんだよ…。」

「ひゃぁつ?」

花鈴はあまりの驚きに自分でも聞いたことのない声を上げていた。前には川品が起こっているのか、困惑しているのか、とにかく歓迎はされていない顔で花鈴の驚いた表情を見つめていた。

「あ、あんたたちここで何してんの!ここは入ったらだめな場所なのに!」

花鈴は突然だったが、強力な武器を持った戦士のように川品に言い放った。

「…。俺がここに来ていたことから場所がわかったのか…?」

花鈴は川品の調子が思っていたものと異なったため、面を食らった。いつもなら喧嘩口調で押し問答になるのに、今日はとても深刻な口調だった。

「そ、そうよ!変な道で帰るのを見かけたの。先生に言いつけてやるからね!」

花鈴はいつもの調子で再び川品を攻め立てた。

「どうかそれだけはやめてくれ。頼む…。」

川品は深々と花鈴に頭を下げた。花鈴はプライドが高そうな川品が頭を下げているのを見て、サディストの血が騒いだのかさらに攻め立てた。

「だめに決まってんでしょう?これに懲りて大人しくしなさい!。」

勝ち誇った表情で言い放った。川品が諦めたのか、他のメンバーがいる部屋に入っていった。花鈴は他のメンバーにも攻め立てようと後を追うように部屋に入った。中は廃墟とは思えない程、綺麗に整頓されていた。とても快適そうな空間だった。だが、その場は最悪の空気だった。

「という訳なんだ。俺の責任だ。本当にすまない。」

川品がその場のメンバーに見たことのない真剣な表情で謝罪していた。メンバーにも驚かされた。いつもいるメンバーではなく、別のグループで普段はほとんど絡まない人ばかりだったからである。そんなメンバーに川品が頭を下げている。よくわからなかった。

「川品が見つかったなら、考えたルートが悪かったのもあるかもしれない…。」

「じいちゃんは悪くないよ、ただ僕らも塩谷さんにバレた訳だし、誰が悪いってわけじゃないよ…。」

「本当にごめん…。」

それぞれじいちゃんや佐藤、川品が深刻な声で話している。花鈴はようやく場の状況や空気を察知した。ちょっとからかうつもりだったのが、相当なダメージを与えてしまっている。ただ、一度言った手前、引き下がりにくい。自分の中の天使と悪魔が言い争う。

「花鈴ちゃん。お願い。今回だけはどうか見逃してくれない?」

言い争う天使ではなく栞の声だった。幼馴染との久しぶりの会話がこれだとは思いもしなかった。だが、花鈴にとってはいいタイミングだった。

「し、仕方ない。でも条件があるわ。私もここのメンバーになるのが条件。ダメなら先生に言いつけるから。」

「お、お前がメンバー?」

川品がすぐさま反応した。

「な、何よ!いいじゃない別に。いいところだし、迷惑かけるわけじゃないもの。どうするの?」

それぞれが黙り込んだ。大切な場所が守られる。ただ、うまく過ごせるのだろうか。皆が同じことを考えていた。

「いいよ。ルールがあるからそれだけ守ってくれれば。」

じいちゃんが承諾した。この場のベースを作った創設者であるじいちゃんが承諾したため、各メンバーも承諾した。こうして各メンバーが集結し、約2年間の秘密基地活動が始まった。2年後、あっという間に時は過ぎ、秘密基地は建物の解体とともに終焉を迎えた。その際に、じいちゃんのもう一つの秘密の裏山があり、そこにタイムカプセルのようなものを埋めメンバーは解散した。2年の間にメンバー間の趣味のものやゲームや雑誌など様々な思い出が出来た。学校でのグループやカーストのようなものを忘れ、対等な無理のない理想の「仲間」ができた。だが、そこから進学につれて中学校が別になるなど、離れ離れになっていったのである。8つのタイムカプセルを地中に残して。


第5章「タイムカプセル」


「じいちゃんまだ掘り起こしてないのか?」

「ロロがそういうと思って、事前に山に行ってみたんだけど、なかったんだ。」

同窓会後のコンビニ前で、タイムカプセルを目的に集まったメンバー達は無くなったと残念がったり、ちゃんと探そうと提案をしたりし始めた。じいちゃんが再び話し始めた。

「ただ、ビニールに包まれたガチャポンのボールが入ってたんだ。まだ中は見てないけど紙きれのようなのが入ってる。」

少し離れて話していたメンバーがじいちゃんのもとに集まり、かぱっとボールを開いた。そこには、綺麗な字で、

「みんな意地悪してごめん。同窓会には参加できないけど、ちょっとしたゲームをしましょ。ヒントは私の好きな歌です。そこにカプセルはあります。咲。」

その場のメンバーは謎が多く考え込んでいたが、サトサトが口を開いた。

「白い雲のようにだ。猿岩石だ。」

「え、どうゆうこと?」

カーリーは全くわからないようで、問いかける。

「サキサキだよ。山崎咲。2カ月しかいなかったけど、その期間だけメンバーだった。」

半数はまだ思い出せないようだったが、徐々に思い出が浮かび上がってきた。

「そうだ、転校してきたあの子だ。すぐ転校になるのが決まってたから、皆でグループに入ってもらったあの子だ。」

「ちょうど転校の数日前に基地もなくなるってなったんだっけ。」

ロロ、マンナカと思い出してきていた。

「どこに引越ししたんだっけ?岡山とか広島あたりだった気がするんだけど…。」

シオシオも思い出したようで、ヒントを考え始めた。いくつか情報が出てきた。大人しめで目立たない性格。黒髪のサラサラとした少し元気だったらとてもモテそうな子だった。カーリーがポジションを奪われる危険視していたり、意外と悪戯するなど、お茶目だったエピソードなどが出てきたところで全員がはっきりと思い出した。ただ紙のヒントから場所がわからなかった。

「白い雲のようにが好きだったのはいいんだけど、白い雲なんてどこでもあるよな。」

リッキーが冷静に分析する。確かにそのとおりである。

「ちなみに脱線するけど、有吉と森脇とどっち派だった?」

「歌が上手い森脇派だったな。」

「有吉のほうが可愛いイメージだったな。」

意外にもじいちゃんとマンナカがノッてきた。ふざけた脱線でじいちゃんが思い出した。

「そうだ!自慢してた、広島だよ!猿岩石の出身地の神社だ。」

「そうだ、確か、転勤族だからあまり戻ってないけど、広島が地元で小さい神社の裏手に家があるって。有名人が同じ地元だから珍しく自慢してた!」

リッキーが補足して、情報が固まっていく。

「広島県安芸郡熊野町、ここだね。」

じいちゃんが場所を確定させたところで、リッキーが質問する。

「場所がわかったけど、結構遠いし飛行機とかで今から流石に向かえないけど、どうする?」

広島まですぐに行ける訳がなかった。ただ、サトサトは急に鞄を取り出し、手帳を慌ててめくりだした。

「俺が行ってくるよ。ちょうど広島の出張があって珍しく翌日が休みなんだ。」

「ブラックにしては珍しすぎるな。」

「リッキーうるさい。」

そうして、サトサトが広島に向かい、ゴールデンウイークに再度集まれるメンバーだけ集まることとなった。

後日、サトサトは仕事の後、翌日に事前に調べていた住所へと向かった。そこには小さな木製の表札がかかっており「山崎」と書いてあった。

「ピンポーン。」

かなり築年数も経っており、住んでいないかもしれないと思った矢先。がチャっとドアが開いた。

「はい、どちらさまですか?」

ちょうど自分の母親くらいの女性が出てきた。

「あの、山崎咲さんのご自宅でしょうか?」

サトサトは恐る恐る聞いてみた。

「咲のお友達ですか?もしかすると預かったあれのことですかね。ちょっと待っててね。」

そう言うとサキサキのお母さんは少し大きめの箱と手紙をサトサトに渡した。

「本当は色々お話ししたいんだけど、来た時にはこれを渡してヒントを出したらだめだって言われてるのよ。ゲームが終わったら、よければお電話ちょうだいね。」

そう言って電話番号を書いた紙をサトサトに渡して、お母さんは家へと戻っていった。

「壮大なゲームだな、手が込みすぎじゃないか?」

そう思いつつ、箱と手紙などしっかりとそのまま持って帰り、仕事に耐えてゴールデンウイークを迎えた。久しぶりに地元の居酒屋に集まっていた。

「今日集まったのは4人か。」

「十分だろ。他のメンバーにもちゃんと共有しよう。」

サトサト、ロロ、じいちゃん、リッキーの4人でテーブルを囲んだ。そして、広島より持ち帰った手紙と箱を取り出し、開封を始めた。

「いくぞ。」

先に箱を開封した。埋めた箱から別の箱に入れ替えたのであろう綺麗な箱になっていた。

「ん?なんだ?」

箱の中には8つの小さな箱に南京錠がついており、4つの鍵が付いていた。

「半分しか開けられないじゃないか。」

リッキーは残念そうに呟いた。

「手紙は?なんか書いてある?」

じいちゃんがサトサトに手紙の内容を確認するように聞いた。手紙には、こうあった。

「全部入ってなくてごめんね。1回で終わるのも面白くないからあと1つだけクイズです。そこで残りの鍵が揃います。ある地域は女子メンバーで行ってみたいと言っていたところです。皆では結局行けなかったけど、どうしてもわからないときは、高木先生を思い出してください。PS本人以外は先に箱開けたらだめだよ。咲。」

4人はとりあえず、鍵と箱の組み合わせを確認した。箱と鍵にはニックネームが書いてあるので、この場でわかるのはリッキーとじいちゃんだった。話会った結果、箱と鍵、メンバーが揃った日に開けることにした。女子メンバーに連絡をし、返信を待った。すぐにカーリーから返信が来た。

「何にも思い出せないw」

期待通りだったので、シオシオの返信を待った。10分後に返信が来た。

「ごめんなさい。場所は思い出せないんだけど、先生の所はわかったかもしれない。」

続けて返信が来た。

「高木先生事件って覚えてない?消防とかがきたやつ。多分そのことだと思う。」

じいちゃんが、はっとした顔になり返信した。

「あぶりだし事件か、ありがとう!」

その場の3人はすぐ思い出せなかったが、じいちゃんが解説してくれた。当時授業でレモン汁を使ってあぶり文字をしてみようという企画を高木先生がしてくれたのだが、先生のミスで危うく大火事になりそうになったことがあった。幸い先生が厳重注意をされるだけで済んだのだが、しばらくはその話題で持ちきりだった。

「てことはこの手紙もあぶれば何か出てくるのか?」

消火できる水があり、周りに燃え移るものがない公園へ移動し、ロロのライターであぶってみた。

「数字?電話番号か?」

そこには携帯番号と雪という文字が書いてあった。少し遅い時間ではあったが、恐る恐るサトサトが発信した。プルルルル、と3度目の呼び出しで通話状態に変わった。

「もしもし。」

女性の声だ。雪というのは名前かもしれないと考えたサトサトは女性に聞いてみた。

「佐藤といいます。山崎咲さんの同級生で、雪さんですか?」

「もしかして秘密基地のメンバーの方ですか?私は妹の雪といいます。はじめまして。」

4人は妹がいたこと知らなかった。色々驚きがあったが、手紙のことを聞いてみた。

「ヒントで私に電話がくるかもっていうのは聞いていたんです。ちなみに佐藤さんがサトサトさんですか?」

「そうだよ。僕がサトサト。」

「鍵は私が預かってます。サトサトさん取りに来てください。場所は・・・」

サトサトは場所に驚いた。今住んでいる最寄りの駅だったからである。それ以上はわからなかったため、他愛もない話をしたのちに解散となった。

翌日、集合時間の10分前にサトサトは駅前に来ていた。予定時刻ちょうどに携帯が鳴った。

「もしもし。どこにいますか?」

「来ていただいてありがとうございます。駅から少し進んだ先に公園があるのを知っていますか?」

「知ってるよ、たまに行くから。」

「そこで待ってます。私も姉に似てこういうゲームみたいなの好きなんです。待ってますね。」

そう言って一方的に切られてしまった。忙しく女性と接する機会が少なかったサトサトだが、面倒なことが多そうだといらぬ心配をしつつ、公園に到着した。だがまだ誰もいなかったので、いつものベンチに座って缶コーヒーを飲んだ。いつも通りの誰もいない公園。癒されていると、毎週見かけいた女性が来た。時間や曜日が違うのにどうしてなんだろう。ラッキーだなと思いつつ、携帯の着信を待っていた。

「サトサトさん。はじめまして。」

声をかけてきたのは、その女性だった。

「え、え…。」

「来てもらってすみません。姉の指示だったんで。大丈夫ですか?」

驚きの余り、情報が整理できなかったが、一口コーヒーを飲み話を再開した。

「もしかして、雪さん?」

「そうです。あ、忘れないうちにこれを。」

そう言って袋に入った鍵を3つ渡された。

「あれ、あと一つは?」

「もう一つは私が持ってます。今日の夜に皆さん集合されるんですよね?」

「そうだけど。」

「急ですみませんが、お邪魔していいですか?姉から最後に預かっているものとメンバー皆さまへの伝言があるので。」

「鍵だけじゃなかったんだ。それもゲームなら皆にも伝えておくよ。」

メンバーに事前に1人参加者が追加されることを伝え、公園を後にした。雪とサトサトは後に合流して、電車で地元へと再度向かった。

「雪さんはいつも公園に来てたよね?」

「さっきの公園ですか?いや、たぶんそれは姉ですよ。よく似てるんです。」

「そうなんだ、よく見かけたんだよ。」

「だからさっきの公園を場所に指定したのだと思いますよ。姉も。」

「サキサキ、お姉さん今日はどこに?」

「姉は今日参加できないんですよ。代役でごめんなさい。」

「いやいや、大丈夫。ちょっと残念だけどね。」

あの女性が、サキサキだったなんて凄い偶然だ。色々話を聞きたかったのになという本音を内に秘めたまま、地元の駅に到着した。


第6章「ノストラダムスの予言の頃に」


「遅いぞー。な、なんだその美女は?」

出来上がりかけのロロをはじめ、皆が僕よりも横の美人に注目した。

「初めまして。咲の妹の山崎雪です。」

「あー、カーリーが嫉妬するぞー。するぞー。」

「もう大人なんだからそんなことしないわよ!」

ロロの煽りにカーリーが対抗する。懐かしい空気だ。

「とりあえず、乾杯しよう。」

グラスを片手に乾杯した。今日も2階を貸し切り状態だが、メンバーは秘密基地の面々のため、当時の空気が蘇ってくるようだった。

「早速、開けよう。」

「じいちゃんがアクティブなのが懐かしいね。」

じいちゃんの一声で空きテーブルにそれぞれの箱と鍵が並べられた。

「皆さん、ちょっとだけまだ開けずに待ってください。」

ここで、雪が制止した。

「まだゲームがあるのか?」

「いえ、もう鍵とかクイズとかはないんです。ただ最後に姉から預かっている手紙があるので先に聞いていただいていいですか?」

「サキサキからの手紙か。わかった。クリアおめでとう!みたいな祝辞かな。」

各ボックスを開封する前に、集まったテーブルの周りを囲んだまま、雪の代読に耳を澄ました。

「この手紙を読んでくれているということは、皆が鍵をすべて揃えてくれたということだね。まずは、おめでとう!そしてゲームに付き合ってくれてありがとう!色々な場所に行かせたりしてごめんね。楽しんでくれたら幸いです。さて、本題に入りますがタイムカプセルについて。皆も覚えてると思うけど、秘密基地のメンバーになる際に仲間の証として、当時自分の秘密をじいちゃんに伝えた紙をカプセルにして埋めたよね。だからじいちゃんはある意味生きるタイムカプセルな訳だけど、それ以外も好きなものをそれぞれで追加で入れて埋めたと思います。このゲームを始めるために先に掘り起こしたのですが、かなり紙とかが擦れていたから、原本と併せて清書したのを入れてます。勝手に見ちゃった訳です。皆中々の秘密ですね、勝手にのぞき見して最低かもしれませんが、許してください。それと参加できないのもごめんなさい。代わりにみんなのそれぞれのカプセルの中に手紙を入れてます。一人一人、思いを込めて書いたからちゃんと捨てないで読んでね。これで、心置きなく人生を全う出来ます。本当は直接会って、思い出話に花を咲かせたかったな。昔より、性格明るくなってきてるから、転校後とかの話したかったな。やりたいこと、伝えたいことは手紙じゃ書ききれないのが残念。でもこれだけは伝えたいです。皆との思い出は私の人生でかけがえのないものです。秘密基地のメンバーになれて、本当によかった。鍵を開けたら、手紙読んでね。遠くからにはなるけど、皆の幸せをずっとずっと見守ってるからね。湿っぽくなっちゃったけど、改めまして、こんな私と友達でいてくれてありがとう。元気でね。ではでは。咲。」

手紙を読み終わった後、妹の雪から皆に説明があった。姉のサキサキは若くして病気になっていたこと。普通の生活をするために就職をして働いていたこと。しばらくして、悪化に伴い退社し入院前にこのゲームを思いついて準備していたこと。本当は参加するつもりだったが病状が重くなってこの手紙を託され、ゲーム完了までは亡くなっていても言わないようにという遺言を残し、そのまま亡くなったこと。突然のことで皆、パニックになっていた。しばらくしてシオシオは泣き崩れ、リッキーやロロは少し席を外すなど、ショックが形となって表れた。本題だったタイムカプセルをそれぞれ持ち帰るようにして、帰路に就いた。中身は当時の秘密や思い出の品、そしてサキサキからの手紙だった。サキサキはどうやら中身を見て、それから手紙を書いたらしい。中身を元にしたエールや思い出について、そしてサキサキから当人へのメッセージが書かれていた。雪は姉からの指示とはいえ、あの場が解散になったことに罪悪感があったようだった。1カ月後、僕から連絡を取り、ご飯がてらお礼を伝えに行った。

「お待たせ、待った?ごめんね。」

「いえいえ、さっき来たところです。行きましょう。」

どうやら近くに住んでいるようなので、以前の最寄りの駅で合流し、駅近くのレストランに入った。

「この前はありがとうね。前は解散になったけど、雪さんが来てくれてよかった。」

「いえ、せっかくのワクワクしたタイムカプセル開封の時間だったのに、なんだか申し訳ないです。すみませんでした。」

「いやいや、まああの時はみんなショックだったけどね。でもサキサキからの手紙のあと皆雪さんにお礼を言っておいてって。手紙を読んで迷っていたじいちゃんも吹っ切れたらしいし、カーリーは秘密だったみたいだけどロロに告白して付き合ってるみたいだよ。あとは定期的に会えるメンバーでは会うようになったし、これもこのゲームを協力して作ってくれたサキサキや雪さん、お母さんのおかげだよ。代表して本当にありがとう。」

「いろいろあったんですね。でも、最終的にいいゲームになってよかったです。」

「もし雪さんがよかったら、また集まりに来てみて。いろいろサキサキの話とか雪さんもゲームに協力してくれたし。」

「わかりました。また集まるときは声をかけてください。」

「でも、いつも公園で見かけたあの人がサキサキだったなんて。声かければよかったって後悔してるよ。」

「私もゲーム終わるころまで知らなかったです。まさかですよね。あ、そうだ。」

そういって雪は鞄から1通の手紙を取り出して、僕に渡した。

「またゲーム?」

「もうないですよ。ただ私にはゲームがあったんです。」

どうやら妹に向けたゲームもしていたようで、その結果この手紙が出てきたとのことだった。

「同窓会と同じタイミングで渡したくなかったみたいで、難しいゲームでした。帰ったら読んでください」

笑いながら食事を済まして2人は店を出た。

「じゃあ、また。」

「はい、また。」

これまでの生活とは、一変していた。仕事の過酷さはそのままだったが、日常に色が差してきている気がした。帰宅し、落ち着いたころ、テーブルに置いていた手紙を開封した。

「佐藤君へ。山崎咲です。私のこと覚えていますか?カプセルとは別にこの手紙を書きました。秘密基地の頃、サトサトは私に声をかけてくれて、メンバーになった後もささやかなことだけど、色々と優しくしてくれてとっても嬉しかった。転校したあとも、メンバーはもちろんだけど、サトサトにまた会いたかった。でも当時は携帯も子供で持ってなかったし、叶わなかったけど。それから体の調子がまだ大丈夫だったから就職したの。働くのって大変だね、ほんと尊敬する。疲れて家に帰る途中に、サトサトみたいな社会人を公園で見かけたの。私にとってはとても癒される時間で、当時の気持ちやサトサトのことを考えているうちに好きだったんだって気づいたの。とてもとても遅いけどね。あの人がサトサトだったら伝えておいたらよかったな。これが届いていれば、私に心残りは何もないです。サトサトの気持ちはわからないけど、私の大好きなサトサトがこれからも幸せに人生を歩んでいけるように祈ってるよ。これで本当に最後。さよなら。」

僕が涙をこぼす前に、手紙の最後が水分で文字が滲んで読めなかった。嬉しかった。悲しかった。後悔もした。サキサキからのメッセージに返事をしたくてもできない。あの時こうしていれば、こうだったら。そんな岐路の連続の人生だったが、今までで一番過去に戻りたくなった。でもそれは叶わない。そう考えているうちに朝を迎える。着替えて電車へと乗り込み、環状線は進んでいく。1997年に戻れたら、ノストラダムスの予言の頃に戻れたら、何かが変わっただろうか?恐怖の大王が少しでも悪さをしていたら、何かが変わっただろうか。いつもの環状線が感情を取り戻し、また周り始めた。これからの人生で後悔を残さない為に。


ご覧下さり、ありがとうございました。拙い作品で恐縮ですが書き終えられたことでほっとしつつ、青春を再度謳歌したい。そんな気持ちに私も皆様もなれば嬉しい限りです。より良い毎日がこれからも続きますように。

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