死を見て森を見ず
昨日猫が死んでいた
雨に打たれて死んでいた
ビチャビチャの毛皮、錆びた鉄のような眼
雨の日はひどい日だと思った
かわいそうだから着ていたレインコートに包んで
公園の隅に埋めてやった
お気に入りのレインコートだったけど
手向の花にとくれてやった
黄色い姿が滲む雨空に映えるはずだけど
今は土の中見えぬキャンバス
可愛い猫は死んでしまった
それが頭から離れない
聞いたことない鳴き声が夜な夜な寝耳に入るのよ
ぼやけた脳に、冷えた空気
冷蔵庫から水を一杯
ゴクリと飲み干しふと見下げた視線の先に
黄色の何かの錆びた視線がこちらを向いていた