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7話 pressure

奈須科高校。

 エイジが駆けつけたとき、現場は騒然としていた。パトカーは駐車場全体に止まり、救急車もいくつか見える。

 負傷者は高校に通う女子生徒2名。死亡には至らない重症だったが意識不明の状態。原因はナイフによる大量出血。

 前に起こった殺人事件とほぼ同じ手口という見解から同一犯であることは間違いなかった。

 それらも重なり、この日の高校の授業は中止となってしまった。

「んで、現場は?」

「はい、保健室だそうです」

「保健室か…」

「保健室には容疑者がいますので確認を」

「何、ホンマか!?」




保健室。

 そこには彼らの知る保健室という部屋の状態ではなかった。

 ベッドは赤く染まり、治療に使う道具が散乱している。枕や布団が床に散らかってあり、被害者が抵抗したのが伺える。

 その容疑者の正体に3人は唖然としていた。

「…小神?」

「どうも、3人ともお揃いで、どうかしましたか?」

 3人の前に立つ小神は笑っていた。自分が容疑者として疑われているのに知ってか知らずか暢気に構えている。

 一方のエイジはため息を吐き、影月に対して愚痴をこぼす

「影月ー、神は一体何回俺の首を飛ばせば気が済むんやぁ〜」

「先輩、しっかりしてください!」

「…小神君、どうしてここに?」

「どうしても何も…ここが俺の通う高校なんだけど」

「あぁ、見覚えのある制服だと思ったらここのか」

「俺は大阪モンやし、よう知らん…」

「んで、何をすればいいんですか?」

「あぁ、メモによると」

 解剖結果がまだ出てないのでわからないが犯行の推定時刻は授業の最中。その時、授業に参加していなかったのは小神と被害者である女子生徒2名のみ。

 教室より階下である保健室には人はあまり立ち寄らず犯行前の時間の生徒の目撃証言も無いために怪しいのはその時間に授業に出ていなかった小神のみだった。

「との事だけどこの時間、何をしてたのかな?」

「あぁ、その時は図書室で横になってましたね」

「…サボリ?」

 影月は呆れたような目つきで小神を見る。

「そういうことになりますねぇ。いやー、今も眠くて眠くて…」

「証人はいるか?」

 エイジは立ち直り、真面目な顔となる。

「さぁ。その時、司書はいなかったし…」

 美優は他の人には見えない''人''と話をしていた。

 その少女は積極的に話を持ち出す

…どうして皆、犯人を覚えてないんだろう

くすくすくす

…あなたは?

犯人を知りたい?

…知ってるの?

フフフ、それは只ならぬ私よ

…あなたは一体?



「…優、美優」

「は、はい」

「小神をどう見る?」

「……」

 美優は目を瞑る。

「へー、ミューって霊視も出来るんだ」

「今は黙れ」


 そこは美優の見覚えのある場所だった。

(ここは…私のいる病院…?)

 そこは病院のロビーで外は明るいことから日はまだ浅いことが伺える。

「やれやれ、『少しは休め』か」

「最近働きづめでしたからね。で、何で僕まで…」

 そこにあったのはエイジと眠たそうにする影月の姿だった。

「美優を連れだそ思うて。服とかの最近の流行はわからんからな。お前はわかるかと思って」

「それなら小神君の方が適任じゃ…」

「何や用がある言うてたんや。それにお前、女と遊んでばかりおるのも考え物やで?」

「うぅ…。でも、その前に腹ごしらえしませんか?」

「…せやな。もう8時か…。美優は済ませとるやろうし」

 2人は病院付属の喫茶店へと向かった。

 彼女の入院する病院は大学付属の病院で県でもかなりの大きさを誇っている。

 2人のいる喫茶店は売店の近くにあり、1階にあるが周辺の建物の高さがそれ以上のために昼でもやや薄暗い状態だった。それに加え、売店まだ開店しておらず喫茶店には人がいるかどうかも怪しいほどで不気味な雰囲気をかもし出していた。

「ご注文は」

「モーニングセット2つ」

「先輩、奢ってくれるんですか?」

「アホか。自分の飯ぐらい自分で出せ」

 しばらくして届いた朝食を食べ終えた二人は病室に向かいながらこの先どうするかを話していた。まだ病院が開いて間もないのか見舞いなどの一般人は指で数えるほどしか見かけない。

「…美優が何者かも解明せなあかんよなぁ」

「そうですね…。何処かに彼女が引き取られた日の資料でもあればいいんですけどね…」

 「はぁ」と影月が力の抜けたため息を吐いたその瞬間だった。

 距離を置き、ナイフのようなものがエイジの横を通過する。エイジと影月は一瞬何が起こったのか理解できずにいたが後ろの壁に刺さったナイフを見つめ、呆気に取られて冷や汗を流す。

「…な、ナイフ…」

「せ、先輩! 前!」

「くっ!」

 エイジの向く先には何者かがナイフを構えて走ってくる姿が見えた。

 その何者かはナイフを握り直し、エイジに肩から左下に切りかかろうとするがそれを回避したエイジは足をかけようとするが足の長さが今一歩足りなかった。

「お前、一体なんなんや!?」

 その何者かは答えない。フードで顔は見えないが身長からして高校生。エイジは説得を試みるがその何者かは応じようとはしない。共に影月には目をくれずエイジを標的にして切りかかろうとするがエイジはそれを難なく回避し続ける。一般人の姿はなく、また今いる移動廊下も回診時間にならないのか薄暗い。

「くそ、えぇ加減にせい!」

 瞬間隙を見つけたエイジは何者かの腹にアッパーを決める。

 だが何もかはそれくらいでは動じない。だがアッパーによる反動により、何者かのフードは取れてしまった。

「やれやれ、殺人未遂の現行犯で…」

 エイジは唖然とした。そこにあったのは見慣れた顔だった。

「こ、小神…?」

 だが目は黒一色に染まり、病んでいるかのような状態だった。

 小神は一言も喋らず右手を前に突き出す。その光と共にあったのは高らかに笑う小神だった。


「っ!」

 美優は頭の中の整理が追いついていなかった。

 何故小神はエイジを殺そうとしたのか。何故エイジと影月はそのことを覚えていないのか。

「ミュー、どうかしたか?」

 驚いたような顔で美優を見る小神。

 いつの間にかエイジと影月はいなかった。小神の話によれば生徒の名簿を取りに行ったというが美優は信用できずにいた。

「…一つ、聞いていいですか」

「ん、なんだ …えぇーと、電圧の単位は…」

 どこからか携帯ゲーム機を取り出し、クイズゲームをし始めていた。

「…10月の15日…何をしてたんですか?」

「10月15日…。えぇーと…そうだそうだ。あぁ、その日は…」

 瞬間小神は口篭る。

「…定期健診に行ってたよ。ちょっと持病があってね」

「…それだけですか?」

「…ミュー、お前、一体何を見たんだ?」

 小神はやや激しい目つきで美優を睨む。

──怖い。あなたは一体? 真崎さん、助けて…

「…美優、これ以上この事件にはかかわらないでちょうだい。でないと」

「やれやれ、あの先生もなかなか強情やなぁ」

「仕方ないですよ、プライバシーに関わるんですから」

 保健室の扉が開き、ファイルを手に持つエイジと影月が戻り、2人は近くの椅子と机に腰掛けた。

 エイジは2人が何をやっていたかは気にかけずファイルに目を通していた。

「小神ー」

「なんですか?」

「お前はどないする?」

「と言いますと」

「お前、いろいろあって疲れとるやろ。一応帰ってもいいで」

「…俺は容疑者ですよ? いいんですか?」

「お前も一応容疑者として監視はする。とりあえずここの生徒リストアップして可能性がありそうな奴を探る」

「…そうですか」

「美優、ちょっといいか」

「…なんでしょう」

「小神はどうやった?」

 美優は何を言えばいいのかわからなかった。隣からは小神の目が何か圧力をかけているのかというほど鋭く見つめている。

「…いえ、これといった事は…」

「では俺はこれで失礼します。…言っておきますが俺じゃないですからね」

「へいへい」

 小神は美優に対して笑顔を浮かべると去ってしまった。

「にしてもここ何人の生徒がおんのやろ…。とりあえずブラックリストからの割り出しからやな。影月、1年と3年を調べてくれ」

「了解っす」

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