5話 reset
ったく、眩しいったらな…って、おい、検察官! これは何事や!」
「はぁ、何者かがここで傷害事件を起こしたようです」
「…またか! 白昼堂々犯行を行いながら犯人の証言が欠片もないこの殺人事件は!」
「先輩、何故説明口調?」
「今年に入ってこの手の事件は何件や!?」
「数えたところ、10件近くは起こってますね」
「…妙…」
「はぁ? どうした、美優?」
「さっきまでここの近くに集まっていた人達が、忽然と姿を消してしまいました…」
美優の話によれば閃光が起こる前には十数名の霊が職員室の近くにいた。(他の人のは見えないのだが
そこに何者かの姿があったかは美優に限らず他の人にはわからない。
だがその閃光により、その十数名の人(美優の呼び方)はどういうわけか忽然と姿を消していた。
美優はこんな出来事は体験したことがなかったために驚きを隠せない。
閃光の中に除霊の力でもあったのかと仮説を立てた影月だったが除霊なら美優にもできる上、たかだがの閃光にそんな力はないという美優本人の証言により、それはなくなってしまった。
「じゃあ、今ここで一体何が…?」
「…わかりません」
「とにかく検察! すぐに現場検証せぇ! 何かの足跡があったらすぐに俺らに報告する! えぇな!」
「了解!」
「小神、項垂れて怖い顔してる場合とちゃうぞ! 直ぐにこの学校周辺の聞き込み捜査を行う! お前も協力せえや!」
「え? あ、はい、わかりました。 直ぐに向かいます。で、ミューはどうする気ですか?」
「…一旦帰す」
「…はぁ…」
小神は聞き込みを行ったその後、休憩のために喫茶店に入っていた。
小神の心の中にはエイジ達の感じなかった違和感が残っていた。
──あの閃光の前、明らかにあの事件の犯人が立っていた。
だが閃光が覚めた後にあったのはあの惨状のみ。確実に犯人はいたはずなのに、何故真崎さんたちは犯人の容姿を覚えていない?
やはり犯人は記憶を操作する能力があるのか…。いや、非現実的すぎる…。
それにあの顔はどう見てもミューそのもの…。何者なんだ…
「あの」
「ん」
小神が声のするほうに向くと顔はわからないが声と身長から察するに小神と年はそんなに変わらない少年であろう人物がいた。白いコートに赤いマフラー、ショルダーバックを下げていることから何処かの学生だろうかと小神は思った。
「…KAITO?」
「僕に歌の才能はないって。…まぁ、『かいと』と名乗るのも悪くないか」
「んで、何の用でしょうか? その前にあなたは?」
「海斗…と名乗ります。ところで、名前は?」
「はぁ、小神と言いますが」
「ほぅ」
海斗と名乗ったその少年は小神ではなくその後ろの明後日の方向を見てうなずく。
小神は目の前にいる少年が何をしているのか理解できなかった。
「いい加減止めたほうがいいと思うよ…」
「はぁ? 何のことですか?」
言動、すべてが意味不明。
いい加減違和感を取り除きたいがための時間が惜しい為に小神は少年に対して苛立ちを覚えた。
「惚けちゃって…。まぁいいか。能力の乱用は控えろよ、レン」
「??? どこぞの夢魔? それとも双子の歌い手?」
小神が考え事をして顔を下げた隙に海斗はいなくなっていた。
小神は一体何が何なのか理解できないままだった。
「…一体なんだったんだ?」
「…様、お客様?」
「へ? あ、はい?」
「ご注文の品なのですが…」
「はい」
「申し訳ありませんが材料を切らしていまして…」
「…は?」
空腹なのに腹を満たすことのできなかった小神は涙目となっていた。