NEXT DOORS
「もういや!」
一体何度目だろう?胸がかきむしられるほど身体中に不満がかけぬける。
「いやなら、やめたら?」
涼しい目をした「彼」はいつものようにそう言った。だけど、私はやめることができない。「彼」のことを想えば想うほど心が締め付けられていく。
「私は、あなたのことが・・・」
言葉で表現できないほど強く想っている。
まるで籠の中で飼われている鳥のように、ここから抜け出せず、ただ「彼」のことだけで頭が一杯。
「死のうか?」
不意に脳裏によぎる考えを無理矢理振り払う。
なんでこんなに苦しいの?涙がとめどなく流れる。
「君がやめられないんだったら、僕がやめる」
「彼」がとうとうしびれを切らして、出ていこうとした。
「待って!」
「さよなら」
ばたん。ドアはあっけなく閉まってしまう。あとはただ静寂が残る。
3日3晩もがき苦しんで、4日目の朝がきた。締め切ったカーテンの隙間から朝日が微かに差し込んでいた。カーテンの端っこをそっと握ってゆっくりと開く。
窓越しに光がいっぱいに差し込んでくる。窓ガラスを開けると、狭いベランダがあって、地上15階の高さへ風が吹き上げてくる。
ガラスにげっそりとやつれた顔が薄く映る。
「こんなんだから、出ていっちゃったんだよね・・・」
自嘲気味にそっと笑う。
窓は開け放したまま、キッチンへ行って冷蔵庫をあさって食事をとる。
水をごくごく飲む。飲まずにいられない。渇きが癒されてゆく。
壁掛けの電波時計を見て、今日が何月何日かを知る。
「彼」とは3ヶ月前に知り合って、一緒に暮らし始めた。でも、私の想いが強すぎて、結局一緒にいられなかった。
あの狂おしい気持ちは何?恋でも愛でもない。ある種の中毒。
本棚から漫画やら文庫本やらあさって読みふける。
「私は、こんな感じだった」
よみがえってくる感覚。
「新井素子の『扉を開けて』に『昨日とは違う今日。今日とは違う明日。扉を開け続けなければならない』ということが書いてある」
小さな大切な本をむねに抱く。
地に足をつけて生きていくって、本当に大変なことだ。少なくとも今の私は、フラフラクラゲみたいに漂っているから、まず、何をしなくちゃいけないかしら?
シャワーを浴びて、髪をととのえて、洗い立ての服を着て軽く化粧して、小銭と携帯とカギを持って、そして外へ出掛けよう!
今日という日に通じる扉を開けるのだ。
「・・・あれ?」
「あれ?じゃないよ・・・」
ドアを開けたら「彼」がタバコふかしながら外へ通じる通路に立っていた。
「いい加減、目は覚めた?」
「うん」
涙ぐみながら「彼」に抱きつくと、「腹へった~なんか食いにいこうぜ」と「彼」はのほほんと言った。