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ラストガーディアン  作者: ターンタイプ
8/9

カスタネアヘッド

スダジイの花の匂いをどこからか風が運んでくる。

正午に差し掛かる頃イサカの街を出発したシャナ・リュミエールと竜退治に参加する黒騎士の一行は、岬を望む広場で汗ばむ陽気の中、昼食を兼ねた四度目の休息を執っていた。


「姫様の様な高貴なお方に、このようなものしか出せないのは大変心苦しいのですが、お口汚しにこちらをお召し上がりください」

石で組んだ即席の簡単な竈で調理していた男が、スキレットで山羊のチーズを溶かし黒パンに掛けたものを、地面にフエルトの布を敷いた上に座って休むシャナとその周りに車座に座る者たちに手渡していく。


「ワタクシ、ランカルのチーズは大好物ですの。喜んで頂きますわ」

シャナは差し出されたものを受け取った後一口齧り、微笑み返す。身分の違いからか近寄りがたい雰囲気を纏って張り詰めた感じであったが、庶民の食べ物を好みだと告げるとその場の空気が一気に和んだ。


「この度姫様には、我々のような者共にへブロスのワインまで振舞っていただき感謝の念に堪えません。ここにいる一同を代表して礼を申し上げます」

シャナの正面に座るゲックが、後方に下がり片膝をついて頭を下げ、下賜されたワインの礼をシャナに述べる。

「出発時にこの討伐に参加する者すべてに1タレン充がうと仰った時は、昨日の酒がまだ残っているのかと疑いましたぞ」

「そうです姫様、壺一つでコビタ船1艘分の価値があるといわれる物を我らのような下賤な者に振舞うなど勿体のうございます」

周囲の黒騎士達もゲックに倣い礼を述べる。


「私がこの地に赴く際に、父がこのような時に使えと持たせてくれたモノですから、気になさらないでください。どうせ飲む機会も無く倉の中で酢に変えるぐらいなら、皆さんに飲んでいただいたほうがよっぽどマシですわ。それに討伐に加わった方が思いのほか少なかったのもよかったです。昨日集まっていただいた方々全員ですと、足りなくなって違うモノを用意しなければいけませんでしたから」


「酔い潰れてこの竜討伐に参加できなかったヤツラが、どれだけ悔しがるか見ものですな」

「出発前に我々に配られた時のあの町長の顔、何とも言えませんでしたなぁ。笑いを堪えるのに苦労しましたぞ」

「ヘブロスのワインで作ったポスカなら、それはそれで飲んでみたい気もしますなぁ」

ワインを口にしながら黒騎士達が次々に笑い声をあげた。



「姫様は馬の扱いが上手ですな。ここまで乗りこなせる者は、カルキアの騎兵でもなかなかいませんぞ」

ゲックはここまでの道中で不思議に思った事、シャナが女の身、しかも貴族でありながら巧みに馬を乗りこなす事について尋ねた。

「7年前、父と一緒にドルメニアへ赴いた時にカルキア出身の方から手ほどきを受けたのです」

「あの遠征に姫様もご一緒していたのですか!?よくご無事で」

「まだ幼かったでしょうに・・・なんとも御労しい」

7年前、参加した者の半数しか生きて帰ってこなかった遠征にシャナが参加していた事に周囲の黒騎士から驚きの声が上がる。


「父や私が生きてティアスに帰り着けたのは皆さんのおかげなのですから、お礼を申し上げます」

そう言って今度はシャナが、一歩下がって両手を胸に当て片膝をついて黒騎士達に頭を下げた。

「滅相もない、姫様お顔をお上げください。王様が殿を務めて奮戦為されたからこそ、我々がこうして生き恥を晒す事が出来ているのです」

「そうです、あの時我らこそ盾となってお守りせねばならぬ所を先に逃げたのです。そのせいで王様は左足に傷を負ってしまい、戦場に立てぬお体となってしまわれたではないですか。我らこそ姫様には顔向けできません」

「しかしあの戦いでは出征した方々の半数以上が生きて戻れませんでした。アグヌスの捨て駒にされるとわかって尚、無益な手伝い戦に皆さんを駆り出したわが父の不徳、王家の過ちは許せるものではありません」

「お気になさるな姫様。恨みなら我らを捨て石にしてさっさと逃げたアグヌスの連中にこそありますが、あの戦は我ら自ら志願して行ったのですから、王家の方々には恨みなどありません。むしろ姫様とご一緒に戦えた事を生涯の誉れとして誇れましょうぞ」

「ありがとうございます」

そういってシャナは改めて頭を下げた。


「それで姫様自らこんな場所まで出向かれたのはなぜなんですか?」

話を切り替えるように黒騎士の一人がシャナに尋ねる。

「最近この辺りもきな臭くなってきましたから、竜がいる、いないにかかわらず、街道の安全を確認しておきたかったのです。マウトン村からの樟脳の輸送が滞ると大問題になりますから」

シャナはもう一つの重要な理由を語らず、黒騎士達に答える。


「それですよ姫様、銀蠍騎士団の奴らはなんとかならんのですか?先日もコニントン商会の船が襲われて積み荷をゴッソリ奪われたって話じゃないですか、あれだけやっても勅宥状を持ってるから無罪放免とはひどすぎます」

「ショーバルじゃ借金を払えなくなった村の奴らが、丸ごとアグヌスに奴隷として売っぱらわれたじゃないですか、俺達は30年ヤツラのケツの穴を舐め続けさせられてきました。王様はもうしばらく我慢しろと仰いますが、後何年我慢しなきゃならんのですか?」

シャナの周りに集まった黒騎士達が不満を次々に訴える。


「ここは直訴の場ではないぞ!」

貴族に対する口の訊き方では無い非礼にゲックはシャナの勘気に触れるかと思い、あわてて止めようとする。


「かまいません、ゲック様。その事では父の名代として兄が・・・ゼロスがアグヌスに赴いております。皆様には我慢を強いる事になりますが、もうしばらく待ってはいただけないでしょうか?今アグヌスと事を構えればどうなるかは、皆さんもよくご承知でしょう。皆様だけに犠牲になれとは言いません。このティアスがアグヌスの属州となるのを一日でも伸ばす為なら私はどんな辱めも受ける覚悟です」

「そ、それでは姫様、アグヌスの貴族に輿入れの話は本当だったんですか?」

近くに座る黒騎士の一人が、国王が保身の為に娘を差し出すという、巷で噂になっている事を思わず口にする。


「輿入れ・・・確かにそうとも言えますね・・・・・おそらく私はアルパヌの館に送られる事となるでしょう。その引き換えにしばらくはアグヌスの騎士の方々はこの地で自由に動くことは出来なくなるはずです」

「なっ!?」

「それはあまりにむごい・・・」

シャナが告げたその言葉に黒騎士達は衝撃を受ける。

「今度は姫様を差し出すというのか・・・王様には人の心というものが無いのか」

「お前たち!それ以上は!」

今度こそ止めようと立ち上がったゲックを制するようにシャナは手を上げ、黒騎士たちに語る。

「父を・・・いえ王を悪く思わないでください。政を行なう者は非情であらねばならないのです。小娘一人の操で国の安全が買えるのなら安いものです。あなた方のようにこのティアスの行く末を思ってくださる方がこの地に一人でもいるならば、私は誇りを持ってアグヌスに赴けます」

「「「姫様!」」」

シャナの凛とした覚悟と態度に、思わず黒騎士達は赦しを乞うが如く跪き、涙を流す。

ゲックは高々十五、六歳の小娘が人殺しを生業とする男達の心を掴み、一歩も引くどころか気圧している状況を見て、これが王族の血の資質かと感心し、そしてその少女を犠牲の祭壇に捧げなければいけない事実に忸怩たる思いでいっぱいになった。


その時砂塵を立て馬が駆け込み、転がり落ちるように降りた男が声高に告げる。


「りゅ、竜がいました!岬を回り込んですぐの丘に!」




「どう見ても我々に敵意を持ってますよね、コレ」

 機体にじりじりと接近してくる、この星の原住知的生命体の様子を来賓用応接室のモニターに表示してエリスが呟く。


「敵意を持っているかどうかは判らないけど、正常な反応だと思うよ。文化人類学者の誰だか忘れたが、『社会が閉鎖的で小さく文明的に発展していないその構成要員は概して外部の人間に対して攻撃的であり、彼らのテリトリーに異物となる存在が侵入した場合、友好的な接触を試みるよりも暴力による排除を試みる』だっけか?そんな学説を士官学校の一般教養の授業で教わった記憶がある」

 船内活動服ではなく銀河連邦軍甲種常装に着替え、行儀悪く制帽をくるくる指で回しモニターを横目で見ながらカズキは言った。


 惑星に落着してからこの星の自転周期で8日が経ち、周辺の調査を続ける中ごく少数の原住知生体が機体の周囲に何度か出没はしていたが、百を超える数で接近してくるのはこれが初めての事であった。

 カズキ達はこれをこの地域に住む住民組織が”自分達と何らかの交渉の意思を持つ者を派遣した“と判断しその対応の準備にかかっていた。

「えー、そんなホロニッククォーツのアーカイブにも無いような、上から目線の胡散臭い学者の話なんか信じるんですか?」  

 こちらも一分の隙なく常装に身を固め化粧をし口紅までひいたエリスが、ジト目でカズキに問いかける。


「人間の行動はケースバイケースで型に嵌める事は出来ないってわかってるけど、現実に会った事も無い相手から敵対行動を執られるとそのように思っちゃうわけよ。彼等の行動原理を少しでも理解する為の足掛かりになるなら、それがたとえペテンまがいの学問でも使えるなら使っていく。もちろん、それにこだわって視野狭窄に陥り判断を誤らないように十分注意するよ。ファーストコンタクトがワーストコンタクトになってしまうのだけは避けたい」

「それでせっせとREFCISでアルコール飲料作ってたんですか?相手酔っぱらわせて交渉したら、マンハッタン島の取引みたいに後々問題を引き起こすんじゃないんですか?」

 エリスは有名すぎる、ファーストコンタクトの取引事例を挙げる。


「わかっているさ、そこのところは。それに今、僕たちと対峙している集団は単なる治安維持部隊かそれに類する者たちであって、彼らの中に条約などを結ぶ事が出来る指導的立場の者はいないだろう。そんな彼らと約束を交わしても後々反故にされる可能性は高い。酒と食料の交換はあくまでファーストコンタクトを円滑に進め、この地域における政治的指導者にアプローチする為の手段さ。問題は彼らの指導者との交渉に入った際、僕たちがここを占有する事の対価だよ。今後の事を考えると、機体から最低半径3キロ圏内は、こちらが自由に使えるようにしたい。さすがにそれだけの面積の貸与となると、ビー玉とウイスキーの提供程度で交渉は成立しないだろう。一応緊急折衝用にクレジット金貨はあるけど、彼等が銀河連邦に所属しているならまだしも、技術レベルから推察するにコレは貴金属としての価値しか持たないんじゃないかな?それならば、周辺調査時に見つけたアレを渡して反応を見てから今後の対応を考える」

「あーアレですか・・・・・衛星に建設中の防衛設備製造プラントが稼働すればいくらでも副産物として手に入るモノですが、彼らを懐柔出来るほどの価値があるんですか?」

 エリスは周辺調査中に、カズキが宝物を発見した子供の様に大騒ぎしながら掘り出した金属塊の映像を応接室のモニターに表示する。


「ホロニッククォーツのアーカイブには、その辺の説明がゴッソリ抜けてるからエリスにはわかんないか。十中八九、彼らにとってアレは非常に価値のあるものだと僕は見ている。貴金属、特に元素としての『金』はその加工のしやすさ、安定性、希少性から文明の最初期から財貨としての価値があったんだよ。その名残として現物としての通貨に今でもクレジット金貨という形として残っているわけ。宇宙時代に入る前、変動相場制を採用して電子取引が主流になって尚、地球の主要諸国は非常時に備えて通貨の価値の裏付けの為に大量の金の備蓄を行っていた。それも小惑星からの資源採掘が本格化すると意味が無くなってしまったんだけどね。そして歴史の事例から判断するとコミュニケーションの取れていない相手との取引には、技術や情報などの目に見えないモノよりも直接手に取れるモノを対価として支払う方が交渉が進めやすいんだよ」

カズキはエリスにそう説明した後、ウォレットから金色に輝くコインを取り出し、指で弾いてテーブルの上でクルクル回した。


「ふーん・・・そんなもんなんですか・・・・タンタルやハフニウムの方がよっぽど金より価値があるんですけど、そちらの方は取引に使わないんですか?」

 銀河連邦はエネルギーから直接元素合成すら可能にする技術を有するが、それでもコストの面から通常は小惑星などから有用資源を採掘して利用している。その中でもタンタルは合金などに加工され宇宙船の各種部品や近接実体弾の弾芯として、ハフニウムは対消滅炉のエネルギーコンバータ用ライナーとして使われ需要が高いが、宇宙での存在比が少ない為、金などより遥かに価値のある元素となっている。


「その辺の元素が彼らにとってどれだけの価値があるかどうかは追々調べるにせよ、差し当たっては金を主体とする貴金属元素の提供を彼らとの交渉のカードの1枚として使うことにする。そして極力貴金属元素が*無制限に近く用意できる*って事を隠し、僕たちにとってもそれなりに価値があるような振りをして対応する事にする」

 カズキはさらにコインを取り出し積み上げ、その横にまだコインが入っているウォレットを置く。


「つまり情報の非対称性を利用してレモンを売りつける・・・だますってことですか?」

「露骨すぎるなぁ、その言い方は。深慮遠謀を廻らすってことだよ。それにこれは彼らにとってメリットがあることなんだ」

「どういうことで?」

 不思議そうにエリスが訊ねる。

「彼らの社会が・・・今現在解っている規模からすると、ほぼ間違いなく貨幣経済が成立しているレベルだと判断できる。そして貴金属元素を通貨の基礎としていた場合、彼らにそれを大量に供与するという事は、その分彼らの社会の通貨供給量を増やすって事になる。電子通信技術も無い社会においてそれは、コントロールのできない経済の混乱の引き金になりかねないんだよ。結果的に恨みを買って約束が反故にされる可能性も出てくる」

 カズキはエリスに説明した後、積み上げたコインをわざとらしくその手で崩した。


「そうなると交渉においては彼らの経済規模、財政状況などの情報も引き出さなければいけないという事になりますね」

「頭の痛い問題だよ、彼らがその辺の事情を理解してくれれば話は早いんだけど、電子通信技術すら保有していないのであれば彼ら自身の財の総量すら把握していない可能性が高い。接触後、その辺の調査にかなり時間を取られる事になりそうだね」

 カズキはエリスに答えながら制帽を目深に被り、背を倒した椅子に深く沈み込んだ。



「それはそうとして、そろそろ何らかのリアクションを彼らに示した方がいいんじゃないんですか?こちらに向かって投石なんか始めてきてますよ」

モニターの表示を切り替え、知的生命体の動きに変化が生じた事をエリスはカズキに告げる。

「ホントだ、AIMSでも、もちっと慎重に接近してくるのに・・・血の気が多いのかバカなのか判断に悩むな。エリス、LRADとADSの準備」

 ちらっとモニターを見たカズキは基本的な暴徒鎮圧用装備の準備をエリスに指示する。


「了解しました。ADSは彼等のかなりの人数が金属製ヘルメットと思しき物を装着している為、マイクロ波聴覚効果があまり期待できませんがどうしますか?」

「手札が減るのは痛いなぁ、ADSによる *宇宙からの命令電波攻撃* は効果絶大なんだけど」

「またマスターが変な事いってる・・・大体相手の言語解析も済んでいないのに、マイクロ波投射を行っても効果あるんですか?」

「マシンメイデンのエリスにはわかんないかなー?ノイズ混じりの知らない声とか音がいきなり頭の中に聞こえてくるんだよ、その内容が解らなくても怖いんだってば。もし彼らが暴徒化した場合、基本LRADで対応。それで沈静化出来ない場合、一旦引いてCNガス弾と閃光弾を装備したTAUで対応する。TAUのコントロールはエリスに任せる」

「了解しました、TAUに対暴徒用装備を準備します。ガスで彼らを無力化できない場合は?」

「連邦法に則り、自衛権を行使し彼らを排除する」

ひと呼吸置き天井を仰ぎながらカズキは呟く。


 銀河連邦法では連邦軍装備や人員を管理者の意思に反し、連邦軍管轄外の人間などが不当な接収を行おうとした場合、その装備の管理者は抵抗の手段として相手に対し無制限の装備の使用を認められている。

破損し機能が限られているとはいえ残存しているマシンメサイアの兵装は強力である。これを使用すれば機体の周囲にいる原住知的生命体を消滅させる事は容易い。

 だが彼らの一個体でも殺傷すれば、対話による交渉は困難に・・・・・いや不可能になるだろう。

 機体の周囲にいる原住知生体すべてを掃滅すれば、今この時点での喫緊の課題・・・落着した機体への原住知的生命体の干渉という問題は解決するかもしれない。しかしこれだけの数の原住知生体が一度に失踪する事態になれば彼らの所属するコミュニティーに疑念を生じさせることになり、この場所に対して更なる軍事行動を惹き起こす事は間違いない。

 その負のスパイラルは、おそらくこの島の原住知生体すべてがいなくなるまで続くはずである。

 原住知生体と友好関係を築き帰還の道を探る、という考えはあまりにも楽観的過ぎたのではないか?

 地上での修理より時間はかかるが機体を衛星軌道やこの星の衛星で補修を行い、機会を伺いながらRAID-UNITなどで惑星に降下し慎重に調査を試みた方が良かったのではないか?

 カズキは自分の見通しが甘すぎた事に暗澹とした気分になり、それと同時に軍人が決して罹ってはならない正常性バイアスに陥ったのではないかと思考する。


「惑星に降下した事は失敗だったか・・・・・」

「私はマスターの判断を支持しますよ。機体を補修するにしても環境状態の良いこっちの方が100倍は早いですし、殺風景な宇宙空間でいつまでもふよふよ漂っているよりよっぽどいいですもん。シャキッとしてください。ほらネクタイ曲がってますよ、交渉は第一印象が大事なんですから、ほら笑顔、笑顔」

「そんなこと言ってもさー士官学校での対外折衝の授業は、面接からっきしで赤点すれすれだったのはエリスも知っているだろ?やる前から失敗する未来しか見えないんだよなー」

普通なら皮肉を入れてくるエリスに気遣わせるほど深刻な顔をしていたのかとカズキは内心驚き、おどけながら答える。


「『面倒事はさっさと済ませるに限る』がマスターのポリシーなんでしょ?『放っておくともっと面倒になる』って言ってたじゃないですか、私もサポートしますから頑張ってください」

顔を近づけカズキのネクタイを直しながらエリスはカズキに発破をかける。


「わかったよ・・・ それじゃあ遭いに行きますか。我らが守るべき*ヒト*達に」

エリスの言葉で吹っ切れたように、カズキはそう答えながら制帽を正し、椅子から立ち上がった。


モニターに表示されている知的生命体は、カズキ達がよく知る”ヒト“ホモサピエンスそのものだったのである。




※ランカルのチーズ

ヤギ乳で作ったハードタイプチーズ やや塩味がきつい。


※タレン

この地域の住民が使用している体積の単位 約868ミリリットル


※ポスカ

酢を水で割った飲料、ショウガなどを加えることもある。


※コビタ船

この地域の住民が使用している積載50~100トンの外洋貨物帆船 三角帆を装備し風上への航走能力を持つ。


※カルキア

遊牧騎馬民族の名前


※アルパヌの館

この星でアグヌスと呼ばれる国家の首都に存在する高級聖職者や元老院議員が利用できる神殿娼館。主にアグヌスに従属した国家や部族の長の娘が、アグヌスの神と結婚する巫女という名目で服従の証としてここに送り込まれた。その生活はかなり過酷であり、送り込まれた女性の平均余命は5年程度と非常に短いものであった。


※ホロニッククォーツ

マシンメサイアパイロットなど銀河連邦兵士にインプランティングされるブレインマシンインターフェース。銀河連邦が蓄積した莫大な知識を閲覧できる他、生脳の情報処理補助機能など様々な機能を持つ。


※上から目線の学問

文化人類学が西洋文明視点からサルの社会を理解する手段としての学問と言われる所以


※クレジット金貨

銀河連邦決済通貨。額面は100万クレジット。非常に高度な偽造防止処理が施されており、銀河連邦兵士などが緊急時に連邦諸惑星での決済などに使用するために支給されている。


※レモンを売りつける

lemon market 欠陥品を売りつける。相手に商品の価値の情報を与えず商取引を行う事。


※LRAD(Long Range Acoustic Device) 

指向性音響兵器 音圧によって対象の内耳に作用し、平衡感覚を失わせることを目的とした非殺傷型兵器。


※ADS(Active Denial System )

非殺傷型対人電磁波投射装置 パルスマイクロ波やミリ波の電磁波を対象に照射し、その誘電過熱により表皮の痛みの引き起こしや頭内に直接音を発生させることにより、戦意の喪失を期待する非殺傷型兵器。


※CNガス

クロロアセトフェノンが主成分のガス 催涙ガス


※TAU 戦術強襲装甲機兵(Tactical Assault shell Unitsもしくは Task Assist shell Units)

PAU(Personal Aromred Units)と異なりプログラムによって四肢などの基本動作を行う個人兵装。銀河連邦ではマスタースレイブ方式の強化外骨格兵装をPAUと呼び、それ以外をTAUと呼称する。

細かい作業には向かないが、装着者の疲労度は着座姿勢で操縦する為、PAUと比較するとはるかに少ない。

PAUと比べると機動性能や運用上の柔軟性に欠けるため銀河連邦軍では二線級の兵器である。ただ構造上固定兵装を多く搭載することが出来る他、船外作業重機として銀河連邦の所属艦艇に標準搭載されている。


※機体を補修するにしても環境状態の良いこっちの方が100倍は早い

重力制御技術等により惑星の運動エネルギーそのものをナノマシンなどの動力源に変換する為、宇宙空間よりも有重力下でのほうがマシンメサイアの自己再生補修に向いている。尚、重力が大きければ大きいほど良いものでもなく、あまり大きい重力環境化ではナノマシンの動作が阻害されるため0.6~5G程度、遊離酸素が豊富な状態が補修にとっての理想環境とされる。


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