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ラストガーディアン  作者: ターンタイプ
6/9

最初の夜明け

「マスター生きてますかー?」

「な、なんとかなー」

 カズキ達が乗るマシンメサイアは硬着陸というよりほとんど墜落と言ってもいいレベルではあったが、なんとか第3惑星の地表に辿り着くことができていた。

「機体を水平に戻した後スキッド展張、固定します」

 ボロボロになった機体が最後の力を振り絞るかのように動き、水平になったところで止まる。

「まだ夜は明けていないな」

着陸時の土煙が収まりコクピットに周囲の画像が鮮明に映し出されるのを見て、カズキは体を固定するハーネスを解きながらそう呟く。

「マスター、現在外気温は15℃外気圧1020ヘクトパスカル、大気には有毒物質は検出されず、若干酸素濃度が高いですが我々が呼吸するのには問題ないです。一応保険をかける意味で機体内圧を外気圧より高めに設定しています。」

「周囲に知的生命体の存在は確認できるかい?」

「事前調査から推測されるそれと思しき大きさの生物の反応は周囲3キロ圏内には確認されません。ただかなり見通しのいい場所に不時着してしまったので発見されるのは容易かと思われます。」

彼らの乗る機体は、海を臨む小高い丘の中腹に突っ込む形で停止していた。周囲にはこれといった障害物は無くコクピットのスピーカーからは、海から吹き付ける風や小動物と思しきものがあげる音を伝えるが、そこからは人の存在と思しきものは全く感じられなかった。

「知的生命体の居住地に突っ込んでトラブルになるよりはるかにマシか・・・」

衛星軌道からの観測ではカズキ達が落着した地点から山の稜線を越えて北に10キロほどの場所に、この星の知的生命体による小規模の建造物が確認されていた。落着の衝撃はかなり大きく、それが伝わった可能性が高かったが、上空から哨戒活動中のRAID UNITからの情報では、”彼ら“に大きな動きがあるように見えない。

「知的生命体との接触に向かいますか?」

「いや、遅かれ早かれ発見されるなら出向く必要はない、それより防衛システムの構築と周辺の調査を優先しよう。可能であれば食料と水は確保したい、備蓄は十分にあるけどREFCISのお世話になるのはなるべく先にしたいからね。」

「私のおしっこを飲むのは嫌ですか?」

「そういう事を言うから余計に気になるんだよ!」

 銀河連邦の艦艇には長期間の無補給での運用に耐え得るように、循環型食料生産システム(REFCIS)が標準搭載されている。それから生産される食事は天然素材から作る物とほとんど遜色のない美味なのではあるが、搭乗員の排泄物等を直接変換して作成される為、均質すぎる味も相まって極めて不評であった。

「もしかして直接飲みたいとか?ちょっと恥ずかしいけれどマスターが・・・あいたっ!」

 コマンダーシートを立ったカズキが、顔を赤らめるエリスの頭にチョップを入れる。

「遭難状態になってから、マスターのツッコミに手加減が見られないです。もっと優しくしてください。」

「機能不全を起こした兵器を叩いて治すのは、古今東西ロボットアニメの基本だろうが」

 そういってカズキはもう一度エリスにチョップを入れる。

「そんなフィクションと、人類の技術の粋である私を一緒にしないでください」

「はいはい、僕はこれから機外に出て周辺調査と生物サンプル採取を行う。”人類の技術の粋“さんは、ハッチの開放準備を頼む。」

「なんか馬鹿にされてる気が・・・待ってください!私もリンケージが途絶した部分の確認がしたいので一緒に出ます。」

 コクピットを出て行くカズキを見て、エリスは慌ててその身を固定するハーネスを外し追いかけた。



「マスター、せめてヘルメットぐらいは着けませんか?」

 エアロックの中でガチガチに重装歩兵装備で身を固めたエリスが、整備作業服にアサルトライフルを下げただけの格好のカズキに対して文句を言う。

「状況確認とサンプル採取に、そこまでの装備が必要か?」

「未知の惑星に最初に降り立つ時は、PAUか重装歩兵装備着用って決められてるじゃないですか、マニュアル守らないマスターは、変なガスでも吸って調子が悪くなればいいんです!」

「安全宣言出したのはお前だろうが、それとも嘘をついてるのか?」

「私の行動がマスターが解除してくれなければ、基本規則に縛られるって事忘れたんですか?私だってこんな馬鹿馬鹿しい格好なんかしたくないんです!」

「すまん、すまん。装備の判断は自由にしていいよ」

 そういえばエリスに会う前の講習で確かそんなことを習ったなーとカズキは思い出し、笑いながら謝る。

「もういいです、このままで!ロック解除、ハッチ開けます。」

空気が抜ける音と共に二重構造のハッチが開く。それと同時に柔らかな光がエアロック内に差し込んだ。

「綺麗・・・」

海と水平線近くに浮かぶ薄雲を茜色に染めながら昇ってくる、この星の恒星を見てエリスが呟く。

「地上から浴びる光は優しくていい」

大気圏外でのすべてを灼き尽くすかのようなものとは比較にならない、柔らかい光を全身に浴びながらカズキは機外に出る。

それがこの星で彼等が見た、最初の夜明けであった。



※PAU (パーソナル アーマード ユニット)強化装甲外骨格。重装歩兵装備アサルトスーツよりも一回り大きい。どちらも宇宙服としても機能を有する。 

読んで下さってありがとうございます。遅筆なので更新が滞りがちになるかと思いますが、今後ともよろしくお願いいたします。

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