~第二の錦織圭たちに贈る言葉(13)~『身体を前に動かしながらボールをインパクトせよ』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(13)〜
『身体を前に移動させながらボールをインパクトせよ』
1. まえがき;
2018年BNPパリバオープン・インディアンウェールズ大会の3回戦(3月14日)でダニエル・太郎選手がレオナルド・メイヤー選手に敗れた。
太郎選手(190cm、76Kg)とメイヤー選手(188cm、83Kg)の身長・体重がほぼ同じなのに、太郎選手(最速200Km/h、平均172Km/h)のサーブスピードはメイヤー選手(最速217Km/h、平均190Km/h)より20キロ弱遅かった。
私はサーブの遅さが敗れた主因とみた。第一セットは4−6であったが、第二セットは1−6である。第一サーブがリターンエースを取られること数度あり、完敗である。
弱いサーブのため、第2セットは試合全体を通して主導権を握られっぱなしであった。
何故、あれほど大きな体格を持ちながら、サーブが弱いのか。それを説明します。
2. 贈る言葉;
贈る言葉(1)で述べたように、テニスは物理学で謂うところの人間とボールの衝突問題である。
ボールを速く打つには、運動量変化=力積の法則を考えてインパクトしなければいけません。
ダニエル・太郎選手がジャンプしながらサービスを打った後の足の着地点を見ると、ベースラインを爪先で踏んだ程度の位置であった。それは、トスを上げた足位置から20cmくらい前に進んだところである。メイヤー選手の場合は足の踵がベースラインから5cmくらい入っていた。その進んだ差は30cmくらいになる。
一般に、サーブアンドボレーを主体とする選手はサーブ後の着地点はベースラインの内側30センチくらいである。
衝突問題。ボールにスピードを与えたいなら、体を前に動かすスピードが速いほど、インパクトの瞬間にボールに掛る力は大きくなる。それが、運動量変化=力積を考えたサーブである。
サーブ練習では、トスを体より前目に上げて、インパクトの位置を前に設定するようにすれば、自然と体は前に動いて行く。トスを上げる位置がサーブの速度を決めるのである。第2の錦織圭を目指すなら、しっかりと練習してください。
なお、同じ3月14日のインディアンウェールズでのWTAツアー4回戦では大坂なおみ選手が、マリア・サッカラ選手に6−1、5−7、6−1で勝利した。
第2セット、大坂選手の強打に為す術が無いサッカラ選手はコーチの指示を受け、緩い山成りのストローク返球を打ちはじめました。このボールへの対応に戸惑った大坂選手はボールをネットに引っかけることを連発して、第2セットを取られてしまいました。そこで大坂選手のコーチは、『緩いボールには前に1歩踏み込んで(ストロークを)打て』と指示を出しました。それを意識した大坂選手は調子を取り戻し、第3セットを取り、勝利しました。
緩いボールをストロークで返球する時に陥りやすいことは、打点、すなわちインパクトポイントが通常より前目になり易く、ラケットがボールに被さる為、ネットしてしまうのです。この事を判っているコーチが大坂選手に的確なアドバイスを与え、勝利に導きました。
『前に1歩踏み込む』ことは、身体を前に動かしながらインパクトする事です。
3.あとがき;
ナダル選手のサーブ、フェデラー選手の高い打点でのストロークを参考にして下さい。
昔に遡れば、サーブアンドボレーの名手であるジョン・マッケンロー選手のサーブ後の着地点は、サービスライン内側50センチくらいではなかったかと思う。まあ、勢いよくサーブして、ネットへ突っ込んで行った姿が目に浮かぶ。
追記:
2022年の全豪オープンの3回戦に進出したダニエル・太郎選手のサーブをみた。
サーブ速度が向上していた。サーブ後の足の着地点はベースラインから30cmくらい内側にあった。インパクト時に体が前方に動きながら打球しているためと、体重を増やした効果が出たものであろう。
、
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2018年3月17日
2022年1月22日追記