一話 序曲
ーーーー汝、理と数を挙げよ。ーーーー
ーーーーーー全ては、遥か時を司る少女なり。ーーーー
ここは遥か西方の地、ザスタの街。
この街では『機械』が特産品であり、また機械の御蔭でこの街は成り立っているといえよう。
しかし機械が中心だったこの街に一つの秘密稼業、もとい『結社』とも呼べる招かれざる者が来てからは、機械があまり役に立たなくなってしまった。そこで街全体で結社を壊滅させるため立ち上がった。
結果、突然の事に結社は驚き総崩れ。三日立たずに壊滅してしまった。ある三人を除いて………
街の人たちは結社を壊滅させた事に対し浮かれ上がり、機械の力も元に戻った。そしてこの日を境に『商業が発達した街』というモットーを掲げた。
これは、生き残った結社のメンバーが結社を再興させて、その後に現れる邪悪な存在を討ち滅ぼす物語である。
「あーあ、今日もかったりぃなぁ。」
ふわぁ、と一つあくびをした商人は眠そうに『何か』を売っていた。
(はぁ、買う富豪もいないモンだな)
すると突然、路地裏の辺りから一人の謎の人物が出てきた。どうやら男のようで、平均的な身体をしている。
しめた、と思ったのだろうか商人は、ここ一番の声を出した。
「さあさあさあ!生きのいい『奴隷』はいらんかね〜!!」
商業である以上、奴隷の売買も認められているのだ。
謎の男は立ち止まり、商人の方を見た。商人はそれを見逃さなかった。
「やあやあそこのお兄さん!奴隷を買っていかないかい?質のいい奴が揃っているでっせ〜?」
すると男は、興味を持った素振りで口を開けた。
「………ほう。奴隷か………面白そうだな。」
商人は心の中でほくそ笑み、声を一掃高くし話しかけた。
「興味を持ってくれただけでもあっしは大満足ですよ!さて、どれにしやすか?旦那っ!」
すると男は少し黙り込み、口を開けた。
「そうだな………あそこの黒髪の子を。」
その子は男に自分を指名された瞬間に、ウー、ウーと声を荒げた。しかし口に猿轡がされており言葉を自由に発せずにいる…
そして、怯えていた。
商人は本日最初のお客だったのであろう、ワクワクが止まらなかった。そして、かなり声を荒げて、
「まいどあり〜!!金貨20枚でっせ!」
と、気前よく言った。そして、指名された少女を無理矢理連れてきて、
「オラァ、お前は買われたんだよ!さっさと出て行け!」
と言いつつ商人は、少女の背中を思い切り蹴飛ばす。その反動で猿轡が外れて、少女は思いきり身体を地面に叩きつけられる。
「あふっ!げほっ、げほっ………」
と少女は呻き、足首についていた足かせがガランガラン、と音を上げた。
商人はそんな醜態を物ともせず、男に続けて言う。
「旦那、あんたは神様だ!またお待ちしておりますぜ!」
と、浮かれた調子で言った。男は軽く頷き、
「おう、さあ、こっちに行くぞ。」
と、少女を連れていく。
少女は「はい…」と小さく言っただけで、他は何もしなかった。
(これから私、どうなってしまうんだろう…あの商人みたいにやらしいことをさせられるのかな……怖いよ…助けて……お母さん……)
しばらく歩き、街角に着くと少女の眼に男の家であろう場所が映る。少女は男の身なりからさぞかし立派な家だろうと思っていたが、ひっそりとした所にあり、いたってシンプルな家だった。とはいえ、中は上等な作りだった。上質な家具もたくさんあり、少女にはそれがちらほら見えた。それが恐怖だったのだろう、少女は震えていた。
(結構、やばいかも……怖いよ………)
突然、あまり声を掛けなかった男が口を開く。
「ようこそ、我が家へ。」
いきなり低い声で話しかけられたせいか、将又低い声がトラウマと重なってしまったのか、少女は過剰な反応を見せる。
「ひっ?!」
怯えている…男は一目で少女の心境を悟る。
そして、哀れんでいた。
どんどん更新していくのでよろしくです〜