恋列車で行こう -Side Girl-
感想でご指摘頂いた部分を描いてみました。
恋愛系とか嫌いというか苦手なので、ねえこれで許して。
あ、だめ?えー。
今日、私は10年来の恋人と結ばれる。そこで、恋人とのなれそめを簡単に記しておこうと思う。
あれは、高校2年の春のこと。
私は自分で言うのも何だけど顔と体型はそこそこ良い。その代わり、鈍くさい。
神は荷物を与えず。なんて、言われるけどどうやら本当のようだ。
顔と体の見た目だけは良いので男子が言い寄ってくる。
私はのんびりとこの文庫本を読みたいのに、「そんなオタクが読むような本に合わねえよ。」とか行ってくる馬鹿も居る。大体そういう奴に限って結構顔も運動神経も良い。だから腹が立つ。
私が今お気に入りの文庫本はいわゆるライトノベルという奴だ。一部がものすごい変人が大活躍するSF戦記でなにやら賞もたくさん受賞しているらしい。
それは置いておいて、ほっといてくれという心境。
私はいわゆるコミュ障だった。それを治すことができたのは、ネットで知り合ったある優しい人のおかげだった。
その日はパソコンの授業だった。私はコミュ障を治すきっかけをくれた人のおかげでそこそこパソコンを扱うことができた。でも、それは起きた。前の時間に私のいる台を使っていた奴が馬鹿をやっていたのか、たくさんのエラーコードを出し始めた。
私が固まっていると、横からぼそりと
「ちょっと近いけど失礼。」
という声にあわせ、けして派手とも地味ともいえないよく言えば普通。悪く言えば目立たない男子が現れ、次々とエラーコードを消していった。時々自分の台と往復している。見れば、彼の台ではチャットのようなものが開かれている。
私は視力には、かなり自信がある。
そのチャットのようなもので彼が発言する時に使っているハンドルネームは、かつて、私を助けてくれたあの名前。よく見ればチャットルームも、私がよく行っているチャットの中のパソコン専門板だった。
このチャットルームでは二人として同じハンドルネームは居ない。ネームが同じでも、その後ろに10桁のアルファベットと数字からなる証明コードというものがつけられるから。
私は戻ってきて作業をしている彼に対して、
「-ってネーム知ってる?」
「礼儀正しい好ましいユーザーだね。」
「あれ、私。」
「そう。人気者になるほどまでコミュ力鍛えられたならよかったよかった。」
彼にお礼を言うつもりで自分のハンドルネームを告げたが、彼の反応は素っ気ない。
「おい-!たかがオタク技能でマドンナに気に入られたとか思うなよ。」
何がオタク技能だ。これからの時代、ある程度パソコンを扱えないのなら華々しい仕事はないと考えるべきだ。それを自分が使えない=オタク技能でまとめる馬鹿にはうんざりする。そして、こういう奴に限って、無駄に顔がよく女子から人気がある。
「まあ、オタク技能とやらが何を指すのか俺の心当たりがあまりになさ過ぎて、分からないけど、有頂天になる前に忠告してくれたこと感謝するよ。
君は格好良くて運動もでき、そして気遣いまでできる。すばらしい人間だね。どうすれば君のようになれるのだろう。」
これが、おちょくっているなら彼も怒りようがあっただろうに、本心から出た言葉なのだから非常に始末が悪い。
「なあ、あいつまた変人言放ったわけ?」
私の席は教室の一番廊下側の列にある。そしてそこには窓がありそこから結構かっこいい眼鏡をかけた男子が私に声をかけていた。
いつもは私に言い寄る男子を蹴散らそうとする男子が彼には見向きもしない。
彼は、先ほどから変な関心の仕方をしている件の君の親友と言うべき男子だ。
そして彼の目的はというと、
「まあ、あの子とつきあうならライバルは居ないだろうけど、つきあう子によってはあの子が危ないかもねえ。」
こんなことを言う。私の後ろに座る女子であった。
季節は全てが命燃やす夏。
夏休み目前となり、私は彼に思いを募らせていた。最初あの春の出来事で知ったことで軽い憧れは抱いたと思う。
『好きです。』『ずっとお慕いしていました。』
もっと彼の心に響くそんな効果的な言葉は無い物か。
悩んでいると、廊下から気になる話が聞こえてきた。
曰く、とある電車に乗って、告白すると必ず成功するというもの。
そんな眉唾な話。でも気になり廊下で話していた女子に話を聞いた。
恋列車という都市伝説らしいけど、先週、ずっと端から見て両思いなのに全然くっつかない男女が、遭遇し、以来恋仲らしい。
恋列車は恋する乙女の心と思いが切符である。
意中の相手を呼びその列車に相手が乗ればそれは相思相愛両思いの証である。
呼ぶ方法は、券売機に5百円玉と百円玉を入れ、特定の順番でボタンを押す。
すると、淡いピンクに真っ赤な文字が描かれた切符が出てくる。
これを持ってホームに入ると特別なホームに入れ、そこで恋列車に乗れる。
というもの。
私は、彼に告白することに決めた。
夏休みに入り、あのテニス選手よりは控えめな太陽が輝く中、地元で最も大きな駅に入る。
恋列車で告白するには相手を午後5時55分に駅に来るようにしないといけない。
何故かは分からない。
聞いたとおりにして改札を通る時駅員を見ると、仕草でがんばれっと応援してくれていた。それも事務所内の全員が。
私が入ったのは、JRではなく通学に使っている私鉄側の駅。
地方都市の私鉄にしては珍しく地下区間の終点にある。そして普段のホーム数は3。
そう3番線までしかないはずなのだ。
だけど、それはあった。
「51」番線
私は固まっていた。このホームには私以外誰も居ない。
いやどのホームもだこの駅は列車が入線してないと改札しない。51番線には真っ赤な、そう真っ赤なこの私鉄には居ない形の列車が3両編成で止まっていた。
私は彼にメールを送り、列車に乗った。
そのあとは記憶がおぼろげでよく思い出せない。気づけば、登校中で彼から声をかけられた。
私は彼を見ることができない。
10年後
私は彼と、彼の親友とその恋人と共に同じ企業に就職し同じ部署で働いている。
この日高校の同窓会が開かれ、そこで私以外の3人は恋列車の話を聞いたらしい。
そして私も恋列車の裏というか、恋列車で告白して失敗した場合どうなるかという話を聞いた。
相手を呼んでも来なかったり伝える時間を間違えたり万が一告白しても断られると、恋する乙女は銀色の列車に強制的に乗り換えさせられ、強引に心を奪われ、二度と帰ってくることはできない。
そして、成功しても、恋列車の終点へ行ってはならない。終点とはすなわち、死後の世界なのだから。
と聞いた。
現在
ドレスに身を包んだ私の前には、あの恋列車の車掌さんが居た。
「見事幸せというターミナルにたどり着いたあなたに。」
そう言って車掌さんが差し出したもの。それは、
『恋列車 乗車証明書 平成1X年7月2X日』
「あなたは今未来の分岐点に立っていますが、必ずこれが、あなたと彼を導きます。」
そういうと車掌さんは敬礼しながら消え去った。
「ねえねえ、恋列車って知ってる?」