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俺にはこの猫の言葉が分かる

作者: 如月 怜

上手い、なんて言えないと思いますが是非読んでください。

俺は小さい頃から猫が好きだった。


ある日大学の帰りに少し遠回りして帰った。初めて通ったその道にひっそりとあったのはペットの収監場だった。

通り過ぎようとしたその時に中から人のすすり声が聞こえた。

俺は気になってその古ぼけた小さなコンクリートのゲートをくぐり、中に入った。


そこでは飼い主に捨てられたペット達の殺処分が行われていた。

中には大きな仏壇の様なものがたくさんあり、たくさんの人が泣いて手を合わせていた。


すいません、見学してもいいですか?


気づいたら近くにいた女の人にこんなことを口走っていた。


たくさんの檻があって、たくさんの動物がいた。どの動物もペットとして飼われていたのに捨てられた。


案内をしてくれていた女の人がある一つの檻の前で止まった。その檻には一匹の黒猫がいた。


また、こいつか…。まったく毎日、毎日あきないなぁ


不意にこんなつぶやきを聞いた。女の人は口を開いていないし、俺の周りには誰もいない。空耳だと思ったが、気づいた。

目の前の黒猫の口の動きに合わせて言葉が聞こえる。俺は女の人にこの黒猫と俺だけにして欲しい、と頼んで少し離れたところにいてもらうことにした。


なぁ、お前喋るのか?


俺が黒猫に話しかけるように訪ねると黒猫は驚きの声を上げた。


へぇ、誰にも聞こえていないかと思った。


以外にもこの黒猫は物知りでいろんな事を知っていた。こんな家族がいてくれたらな、なんて俺が思うほどに。


すいません。この黒猫、貰っていってもいいですか?


少し離れたところにいてもらった女の人に俺は頼んだ。

また何も考えずに言ってしまった。まぁ、一人暮らしだから特に問題はないがどうしよう。


女の人は黒猫の新しい飼い主として俺に話した。

絶対に捨てないこと、

ちゃんと面倒をみること、

最後まで愛してあげること、

いくつかの項目に目を通し、書類に自分の名前を書く。


無事に黒猫を貰った俺は家に帰った。

それから俺と黒猫の生活が始まった。


最初はとっても文句が多かった。ご飯が少ない、もっと大きいベッドがいい、とか。

でも毎日大学の話をしたりしているうちに、だんだん慣れていろんな話をしてくれるようになった。


おい


雨の降っているこの日、黒猫が俺に話しかけて来た。


おい、じゃないだろ


そう言ったら、おい、で十分だと返された。


名前ないのか?


意外な質問に俺は笑った。


名前が欲しいのか?


黒猫は言った。


いや、いい。黒猫はとっても自由だから名前はいらないや。



黒猫とはいろんなところへ散歩に行った。近くの小川や、芝生の公園。だか、一番黒猫が気に入ったのは綺麗な花がたくさんある公園だった。

いつもひとりで何処かへ行ってしまう黒猫が毎回ここに来たいと言ってときは凄く嬉しかった。



ある日、事件は起こった。

朝に黒猫はまた一人で何処かに出掛けていった。いつもは夕飯の時間には必ず帰ってる。遅すぎる。絶対におかしい。心配になって突然思い出した。友達が言っていた。


猫がなかなか帰ってこない時は自分の死期を悟って姿を消すんだ


だから俺はなおさら必死に探した。

家の周り、いつものスーパー、いつもの散歩道。

何処を探してもいなかった。そこでふと、思い出した。


まだ探していない場所があったーー


そう思ったら体が勝手に走り出してした。


はぁ… はぁ… はぁ…


息を切らして走った俺は花の綺麗なあの公園の一つの花壇の前で立ち止まった。


やっぱここか…


そこに黒猫はちょこんと座っていた。ただ、凄く苦しそうだった。


なんで来たんだよ。せっかく抜け出して来たのに…


黒猫は力なく俺を笑った。


俺だってお前がいなくなったら心配するんだよ


悪い、もう自分は長くない。多分会うのが遅すぎたんだ。少ししかいられなかったけど、楽しかった。ありがとな


俺は必死で言った。


な、何言ってるんだよ!お前一人で勝手に逝くつもりか⁈いつも一人でどっか行ってふらふら帰って来て心配かけてるのに…!確かに寿命はどうにもならない、ならおれが側にいるから…。安心して逝けよ…


それから黒猫は嬉しそうに


にゃ〜


と、一声鳴いて横たわり何も言わなくなった。俺は間抜けな黒猫に言ったんだ。


ったく、何考えてんだが…。せっかくいい名前を思いついたから教えてやろうと思ったのに…。


それから俺は一度も呼んでやれなかった黒猫の名前を呼んだ。


一人に…一人にしないでくれよ。俺、お前が好きだった…。ありがとな、…………。



ー完ー






最後の………のところは黒猫の名前の部分です。ご想像にお任せします。

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