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プロローグ
身体を貫かれる激しい痛みののち、世界は暗転する。
周囲の世界が消失する感覚。
肉体と精神が、暗闇の中へと放り出されるような浮遊感。
ここはとても心地いい。
これはとても幸せだ。
ああ、けれど――。
また、もうすぐ目覚めてしまう。
あの曖昧で不確かな現実へと、戻されてしまう。
死は私に追いつくことができない。
何も感じなくなるくらいなら、この甘やかな死の中へと沈んでいきたい。
生きている実感を、深く深く刻みつけたまま死にたい。
狂うほどの痛みが欲しい。
叫ぶほどの絶望が欲しい。
喘ぐほどの苦渋が欲しい。
醜いほどの傷痕が欲しい。
私が私であると、私自身が規定できる要素は、この傷痕だけだ。
たとえ誰もが忌み嫌おうとも、この傷痕が、何よりも愛おしい。
次に目を開くときは、きっとまた孤独だ。