憂鬱な朝
おはよう、おはよう。
また、朝がやってきた。
昨日の自分がせかすように僕を目覚めさせ、僕はそれの息の根を止めた。
だけどそれはまた僕をせかす。
また息の根を止めてやった。
居心地の悪い布団から一歩外へ出てみても変わらぬ世界。
吐き気ともやもやを抱えて僕はまたそこに戻る。
時計。僕がこの世で一番嫌いなもの。
それはいつも僕を焦らせる。
時間は手にはとれないし、操れないし、殺すこともできないのに、それはまるで存在するかのように形を変え僕の耳元まできて囁く。
時間というものは気まぐれだ。
退屈という時間はいつまでも存在するし、快楽はすぐに消えてしまう。
これほどに人間をもてあそぶものはこいつ以外存在しない。
僕らはこいつに縛り付けられてるも同然だ。
ああ、人間に自由など存在しないのだ。
世界中の時計を同時に爆発させたらどれほど気持ちがいいだろう。
そんなことを考えながら僕は二度目の眠りにつく。
しばらくして目を覚ますと目の前にはとても清々しい青空が広がっていた。
心地よい風が僕の頬を撫で、生い茂る木々たちの香りが僕を包む。
いっそこのまま死んでしまいたい。
「あ、あのう・・」
突然耳元で聞き覚えの無い女の声がした。
とても気の弱そうな、だがとても優しい女の。
「あのう、どちらさまでしょうか?」
「は?」
僕は上からその女に覗き込まれている状態で答えた。
逆光で女の顔がよく見えない。
その女が誰であろうとかまわなかったがただこの心地よさを邪魔されて少し腹が立った。
「えっーと、その、ここ、私の家の庭なんですけど・・・・。」
こいつはいったい何を言っているのだ。
僕は未だに自分の状況が把握できなかった。
思い返す。眠りに入るまでのことを。
そうだ。僕は自分の部屋で二度寝して・・・・?
やっと把握できた。これは夢か。それにしてもあまりにもリアルな夢だ。
「あのう!!、、いい加減にしてください。母に庭の手入れを頼まれたんです。邪魔なんで、、その、早く起きてください!!」
僕はそのままの状態で夢から覚めようとした。
惜しかった。もっとこの時を過ごしていたかった。あの縛り付けられた現実に戻りたくなかった。
夢なのに、都合の悪いものもでてくるもんだ。
パシッ!!!!!
「って〜、、なにすんだよ!!!!」
「あ、あなたがいつまでも気持ち良さそうに寝っ転がってるからいけないんです!私は悪くありません!」
僕は起き上がった。目の前の彼女の姿がはっきり見えた。
目を奪われた。年は同じくらいで小柄で明るめの栗色のロングヘアーに透き通ったブラウンの瞳。髪の毛は少しウェーブがかかっていてとても柔らかそうだ。服装は昔の西洋のお手伝いさんみたいな服を着ていたが見た目はとても華やかで、ああこういう子が僕の好みなのか、と自分で自分を笑った。夢っていいな。やはり覚めたくない。
彼女の顔を見つめながらそんなことを考えていると不思議そうな顔で彼女は僕の顔を見つめている。
まてよ、いくら夢でもあんなに思いっきり叩かれたのに覚めない。
そして叩かれた左頬ががじんじんと痛む。
おかしい、なにかがおかしい。
「あ、私が叩いたところこんなに腫れてる!ごめんなさい、大丈夫ですか?」
「はあ、まあ少し痛いけど、、、。ところでこれは夢ですよね?」
「夢?」
「ああ、すみません。もう一度僕のこと叩いてくれませんか?」
バシッッ!!!!!!!
「ぃってぇーーー!そんなに強くとは言ってね、、、、あれ?」
おかしい。もしかしてこれは夢じゃないのか。とすると僕はなんでこんな場所に?そもそもここはどこだ?
「あの〜、、、ごめんなさい。加減がわからなくて、、」
「ねえ、ここ、どこ」
「地球です。」
「じゃなくて、この場所!」
「時忘れ村ですけど?」
「時忘れ村?」
この状況を理解するのにいったい何時間かかるのだろう。