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最強暗殺者、聖女に詰められ短足猫になる  作者:
第2部-焔牙騎士滅亡
14/33

日常-最高に可愛いマンチカン

第2部。ここから凄まじいバトルシーンが始まります。444人リストに載る第2の義賊、第2のペット、そして新しい飼い主が登場します。


春の柔らかな日差しが、孤児院の庭に降り注いでいる。かつての僕――ルウが「便利屋」として、あるいは「死神」として生きていた頃なら、この光景は標的を始末した後の束の間の休息に過ぎなかっただろう。


だが、今の僕には、この平穏こそがすべてであり、そして最大の屈辱だった。


「にゃ、にゃあ……(クソ、あと、あと数センチあれば、あの蝶の羽を……!)」


僕は必死に、雪のように白い、そして絶望的に短い前足を振り回した。かつて超神速で戦場を駆け抜け、音速の壁を置き去りにした僕の神速は、今や「10センチのリーチ」という物理的な限界の前に膝を屈している。重心が低すぎて、勢い余るとそのまま前転してしまう。


転がった僕の視界に、空を舞う紋白蝶が嘲笑うように遠ざかっていくのが見えた。


「ルウくん、また転んじゃったの? 本当におっちょこちょいなんだから」


頭上から、抗いようのない慈愛に満ちた声が降ってくる。アイリスだ。彼女が僕を抱き上げると、その豊かな胸元の柔らかさと、清潔な石鹸の香りに包まれる。かつて、魔王の結界を素手で引き裂いたあの「指先」が、今は僕の耳の後ろを器用に、そして執拗に撫で回す。


「ふ、ふにゃあ……(や、やめろ……そこは、そこは僕の弱点……っ!)」


抗おうとする意志とは裏腹に、喉の奥から「ゴロゴロ」という情けない音が漏れ出す。脳がとろける。かつて、国家転覆級の怪物たちを率いたカリスマ性は、ブラッシング一本で完封されていた。


僕はアイリスに首輪を付けられた、ただの愛玩動物。

白爪ホワイトクロー』のリーダー、ルウとしての尊厳は、彼女の「正論」という名の弾丸によって撃ち抜かれ、今はもう塵も残っていない。


ふと視線を落とすと、庭の隅で元メンバーのボーンが、医師の白衣をエプロンに着替え、必死に子供たちの汚れたシーツを洗っていた。

「ボーン……あんなに鮮やかに神経だけを抜き取っていた指先で、今は洗濯板をこすっているなんて……」

僕が哀れみの視線を送ると、彼は一瞬だけ僕を見て、深々と頭を下げた。主君への礼儀ではない。「アイリス様のペット様」に対する、恐怖に満ちた敬意だ。


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午後のおやつ時、アイリスが子供たちの世話で離れた隙を突き、僕は短い足を駆使してボーンたちのたまり場へと忍び寄った。彼らは休憩時間だというのに、死刑執行を待つ囚人のような顔でひそひそと話し込んでいる。


「……聞いたか? 嘘じゃねえ、本当の話だ」

ニヴェが、氷の魔力でキンキンに冷やした麦茶を飲みながら、震える声で言った。

「あの『焔牙騎士』のティルが……捕まったらしい」


僕は耳をピクつかせた。ティル。あの「轟く赤雷」。僕と三日三晩殺し合いをして決着がつかなかった、唯一無二のライバル。正面突破の化身であり、破壊そのもののような男。


「まさか。あの男が正面から負けるはずがないでしょう。数万の教団を12分で更地にする化け物ですぞ」

ボーンが信じられないといった風に首を振る。


「ああ、武力じゃ負けてねえ。だが……相手が悪すぎた。法秩序維持機構の、あの『氷血の審問官』に目をつけられたんだ」


氷血の審問官。アイリスほどではないにせよ、この界隈では「絶対に目を合わせてはいけない女」として恐れられている法秩序の番人だ。


「ティルはいつものように『弱者のための破壊』を説いたらしい。だが、あの女は一言、『公共物損壊罪の累積で、あなたの命の価値は雑種犬以下です』と一蹴。そのまま、特殊な魔導具を首に嵌められて……」


ニヴェがゴクリと唾を飲み込み、周囲を警戒するように見回してから、声を潜めて言った。


「チワワにされたらしいぞ。」


「にゃ、にゃんだってええええええええええ!?!?(まさか、あの猛虎のティルが、よりによって震える小型犬に……!?)」


僕は驚愕のあまり、植え込みから飛び出した。

あの身長188cm、筋肉の塊のような大男が、ティーカップに収まりそうな震えるチワワに?

大太刀『大虎徹ダイコテツ』で城門を砕いていたあの剛腕が、今は「キャンキャン」と高い声で鳴きながら、飼い主の顔を舐めているというのか?


「おい、リーダー!? 何でここに……! アイリス様にバレたら俺たちが何をされるか!」

「にゃっ、にゃあ!(教えてくれ、ティルは今どこにいる!)」


僕の問いかけは、残念ながらただの可愛い鳴き声として処理された。だが、僕の心の中ではかつてない激動が起きていた。

僕が「マンチカン」で、あいつが「チワワ」。

なんという屈辱。なんという没落。世界最強と呼ばれた二大巨頭が、今やペットショップの看板メニューのような姿でこの世に共存しているらしい。

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