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転生-もふもふの子猫


アジトがアイリス姉さんに制圧されてから数日。

僕たち『白爪』のメンバーが覚悟していたのは、間違いなく「死罪」だった。


僕たちはその圧倒的な武力ゆえに、表向きは敵対していても、裏ではいくつかの国家上層部や有力な協力者たちと「汚い仕事」を引き受ける密約を結んでいた。僕たちが捕まれば、隠蔽されていた国際問題が噴出し、外交の火種を消すために即座に処刑される――それが、裏社会に生きる僕たちの逃れられない宿命ルールのはずだった。


実際、アジトを突き止めた(というより、アイリス姉さんがこじ開けた道を通ってきた)国家の役人や軍の幹部たちは、縄をかけられた僕たちを見て色めき立った。

「ついに『最悪の終焉』を捕らえたか! 直ちに連行しろ、明日には広場で公開処刑だ!」


だが、その役人の怒号を、凛とした声が遮った。


「……死罪なんて、そんな甘いこと、この私が許しません」


アイリス姉さんが、再びその「レッド・アイ」を光らせて一歩前へ出た。

最強の暗殺集団をねじ伏せたその瞳に射抜かれ、完全武装の兵士たちが一斉に後退する。彼女は、震え上がる国家の重鎮たちを論理的に、かつ完膚なきまでに恫喝し始めた。


「彼らを殺して終わりにすれば、あなたたちの過去の汚職も、彼らが奪った未来も、すべて闇に葬られるだけ。それは救済であって、罰ではありません。彼らには、命の重さを、その指先が覚えるまで償ってもらいます。……文句は、ありませんね?」


「ひ、ひぃ……っ! も、もちろんです、聖女様のおっしゃる通りに……!」


国家の法さえも、彼女の「正義」という名の圧力の前では紙切れ同然だった。こうして、僕たちの運命は、国家の手から一人の保育士の手へと完全に委ねられた。


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アイリス姉さんが下した判決は、僕たちが想像していた「地獄」よりも、ある意味で残酷な「絶対的な屈辱」だった。


『白爪』のメンバー11人に課されたのは、魔力を完全に封じられた上での、孤児院および街での「奉仕作業員」としての強制雇用。

正体は街中にバラされ、かつて「決して逆らってはいけない」と恐れられた猛者たちは、一晩で社会の笑いものになった。誇り高き異名は剥奪され、威厳はマイナスまで叩き落とされた。


かつて「最悪の解体」と恐れられたボーンは、命を奪うためのメスを捨てさせられた。今の彼は、赤ん坊の「おむつ替え」と、子供たちが転んで作った「擦り傷の手当て」に明け暮れている。

「……痛くないよ、ほら、絆創膏。……うう、俺の黄金の右手が、おむつを替えるためだけに……」と、毎日泣きながら。


「最悪の凍結」を司ったニヴェは、街の広場で一日中「かき氷屋」をやらされている。

「……イチゴ味か? それともメロンか? ……ああ、氷点下100度の魔力が、シロップに溺れていく……」

彼は子供たちに囲まれ、ひっきりなしに氷を削らされる屈辱に耐えていた。


「最悪の拘束」のセーダは、殺戮の糸で子供たちの「破れた靴下」を永遠に縫い続け、「最悪の断罪」のパペは、魔法紙をすべて「折り紙」として使い果たし、子供たちに手裏剣の折り方を教えている。


軍隊を相手にするより、アイリス姉さんに「お掃除の手を抜いていませんか?」と微笑まれる方が、彼らにとっては心臓が止まるほど恐ろしい。かつての英雄たちは、エプロン姿で子供たちに追い回され、鼻水を垂らして許しを請うのが日常の光景となった。


---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


そして、全ての元凶であるリーダー、僕――ルウ。


僕への周囲の目は、とりわけ冷ややかだった。

「あんなにお人好しを装って、実は人殺しの親玉だったなんて」

街の人々の視線は棘のように刺さり、便利屋としての信頼も、積み上げてきた嘘の城も、すべてが崩壊して塵になった。ほかのメンバー同様、僕もまた、かつて部下だった仲間たちが無様に奉仕する姿を見せつけられ、精神を削られる日々を送るはずだった。


けれど、アイリス姉さんは、僕を「人間として」奉仕させることすら許さなかった。


「ルウくん」


孤児院の裏庭。かつてシーツを干したあの場所で、彼女は僕の前に立った。

夕焼けに照らされた彼女の影が、絶望に震える僕を包み込む。


「あなたのその足は、逃げるためにあるんじゃない。あなたのその爪は、誰かを傷つけるためにあるんじゃない。……これからは、私の足元で、みんなを癒やすために生きなさい。それが、あなたの本当の贖罪よ」


アイリス姉さんの指先が、僕の額にそっと触れた。

その瞬間、全身を突き抜けるような、眩い、けれど温かくて絶対的な光が弾けた。


(……え? 体が……あつい……!?)


視界がぐんぐんと高くなっていく――のではない。地面が、猛烈な勢いで近づいてくる。

僕の体躯は、劇的に、暴力的なまでの愛らしさをもって縮んでいった。

無駄のない筋肉が張り付いていた手足は短く、丸くなり。

鋭く、冷徹だったはずの五感は、「お腹が空いた」「眠い」「誰かに構ってほしい」という、原始的な本能に塗りつぶされていく。


「にゃ、にゃあ……?(な、何をしたんだ、姉さん……!?)」


慌てて声を出そうとしたけれど、口から出たのは情けないほど高い鳴き声だった。

僕は、自分の手を見た。そこにあるのは、白くふわふわな毛並み。そして、思い切り伸ばしても驚くほど短い――マンチカンの前足。


「あら、とっても可愛いわ。ルウくん」


アイリス姉さんが、僕の体をひょいと持ち上げた。

かつて魔王の首を撥ねた僕の重心、神速の移動を支えた僕の筋力、444人リストに君臨した「俺」としての「威厳」。

それらすべてが、彼女の腕の中にすっぽりと収まってしまった。


「これからは、このリボンがあなたの新しい誇りよ」


首元に、鈴のついた赤いリボンを巻かれる。

ちりん、と音が鳴る。

世界最強の暗殺者「最悪の終焉」は、こうしてアイリス姉さんの首輪を付けられた、世界で一番無力で、世界で一番短い足を持つ「愛玩動物」へと転生させられたのである。


「にゃあぁ……(嘘だ……僕の、僕の最強伝説が……っ!)」


僕は彼女の膝の上で、屈辱に震えながら喉を鳴らした。

悔しいはずなのに、彼女に撫でられると、僕の体は勝手に「ゴロゴロ」と歓喜の声を上げてしまう。

こうして、最強の暗殺者の「威厳のない二重生活」の、本当の幕が上がるのだった。

ルウの戦闘力:1,000,000,000 → 1

ルウの威厳:1,000,000,000,000 →-1,000,000

ルウの社会的信用度:100→-1,000

愛くるしさ:100→1,000,000

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