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 ジュリアンとルイーズが出会ったのは、ロシュヴィル公爵領内の貴族を集めた茶会での出来事だった。

 大人たちが優雅に茶や菓子を楽しむ中、子供たちは子供たちで集まり、遊んでいた。


 ジュリアンはその時、木に登ろうとした。周りの子供たちから危ないと止められたのだが、子供らしい無鉄砲さで彼はするすると登り始めてしまった。かなり高いところまで進み、もうすぐ登り切れそうだと思ったその時、手を滑らせて、まともに頭から落ちた。

 鈍い音がして、意識は混濁した。痛みは感じない。既に身体が生きることを諦めているような感覚だった。


 周りの子供たちは泣き叫ぶか、大人を呼びに行くかだった。

 その中で、一人だけジュリアンに駆け寄った子がいた。それがルイーズだった。

 元聖女の母親を持つ彼女は癒しの力を使うことが出来たのだ。

 しかしジュリアンは瀕死の重傷を負っている。殆ど死に近い状態にあり、もう誰が見ても手遅れだった。


 そのためルイーズは一か八か、自分の力の全てをジュリアンに注いだ。癒しの力を移植した、という表現が一番近いかも知れない。

 それにより、ジュリアンの命を繋ぐことには成功したのだが、引き換えに彼女はほぼすべての力を失ってしまった。


 代償はそれに留まらなかった。一度に大量の魔力を消費したことにより、記憶障害にも陥り、彼女はその日のことを、ひいてはジュリアンのことを忘れてしまっていたのだ。彼女の記憶障害はその後しばらく続いた。


 公爵家から男爵家には多額の謝礼金が渡った。

 加えてジュリアンは二度、お礼も兼ねてモンフェラン家を訪れたことがあるのだが、その時のことも、ルイーズは記憶障害で覚えていないようだった。


 やがて二人の出会いから一年が経ち、ルイーズの記憶力は徐々に元通りになっていった。しかし時を同じくして、今度はジュリアンの両親が不慮の事故で亡くなる。

 一人息子だった彼は、後を継ぐための準備や勉強などで多忙となり、男爵領まで足を延ばす余裕が無くなった。公爵家主催の茶会も開かなくなった。



 ジュリアンが大きくなるまで、実質的に公爵家を循環させていたのは叔父のジョシュアという人物だった。幸いにも彼は乗っ取りを企むような性格ではなく、ジュリアンが20歳になり、実務能力が付いたと判断するや、さっさと隠居してしまった。



 最近になって、ジュリアンは公爵領内の貴族を集めた茶会を再開し、勿論モンフェラン男爵家も招待したのだが、来たのはルイーズの義母イネスとその娘サンドラだけだった。


 イネスにルイーズのことを尋ねると、「彼女は聖職者の道を志し、神殿入りを致しました」と言われた。

 ルイーズのは母親は聖女である。彼女が聖職者の道を選ぶことは、特に不自然だとは思わなかった。


 勿論、これは後に嘘だと発覚する。

 ヨーク商会の従業員の一人が、ジュリアン宛てに告発の手紙を送って来たのだ。そこにはイネスたちが男爵家を乗っ取り暴れている事、ヨーク男爵の一人娘であるルイーズが虐げられていることなどが書かれていた。


 ジュリアンは即座に事実関係を確かめるため、男爵家並びに、その周辺に密偵を配置した。その矢先、密偵の一人が男爵邸をふらふら出てくる少女を見つける。


 それがルイーズだと確認されるや否や、彼女は保護され、そして公爵領に運ばれたのだった。




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