プロローグ
「瑠斗〜、第一弾が出来たぞー」
ジュージューと香ばしい匂いを漂わせながら、親友が俺を呼ぶ。
俺は包丁で切っていた追加のピーマンを一旦置いて、そちらへ向かった。
「おっ、美味そう!」
「だろ? 俺の渾身の力作だ」
「バーベキューでも実力を発揮するとは、さすが料理の愛し子! めちゃくちゃ美味いってことが確定だな!」
当たり前だと返す親友の台詞とこの一連の流れに、俺たちは次の瞬間、同時に爆笑した。
俺たちは男二人で、とあるキャンプ場に来ている。
大学が休みの今、せっかくだし親友の趣味であるキャンプでもしようという話になったのだ。
「この肉プリップリッ! 噛んだ瞬間、ジュワァッと広がるこの肉汁がたまんねぇ!」
「それは良かった。肉はまだまだあるけど、もっといる?」
「いるいる!」
講義の都合でなかなか休みが合わない親友とこうして遊べるのが、ものすごく嬉しい。
あ〜、やっぱり休みってサイコー!
『ゆ……し……』
「ん?」
「どうした?」
「いや、なんか聞こえたような……」
突然、人の声がした気がした。
周りを見渡すが、ここには俺と親友以外、誰もいない。
「空耳じゃないか?」
「そう……かもな」
疲れてるのかな、と思いながら、俺は手に持っていた串にかぶりつく。
最近は実験続きでずっと頭使ってたからなぁ……、
あ、この肉も美味しい。
さっきとは違う部位の肉を食べ終えた俺は、追加の肉を頼もうと親友に声をかける。
「なぁ、もっと肉を――」
ブォンッ
突然、大きな音と共に、足元がまばゆく光り輝く。
「え……?」
何だこれ、と思うよりも早く、急激な眠気が襲ってきた。
俺は手に持っていた串を落とし、その場にバタンと倒れる。
あれ、なんで俺、倒れて……?
ブォンッ
「大丈夫か!?」という親友の声が遠ざかっていく。
俺は眠気に抗うことができず、そのまま意識を手放した。