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ルークとの再開6

「ふぅ、片付けも終わったことだし次のところに向かうか」


 次の日、祭りの片づけを手伝ったアレクは次のところに行く用意をしていた。片付けでは祭りで使った屋台だけでなく、紙も片付けなければならず、案外こっちの方が大変だったりした。確かに景色がいいのは分かるが掃除する時のことも考えて、紙を撒いてほしいと思う。撒いたのは自分たちだけど。


「そういや、ルークもついてくるのか?」


 この街では手伝ってくれたが、これからも旅に付いてきてくれるとは一切聞いて無かったため、ルークに尋ねる。こんなことを言ったら調子に乗るため言いたくないが、ルークがいてくれるだけでかなり旅が楽になるためついてきてほしいと思っている。


「当然!友のためにならどこでも付いてい「馬鹿野郎、さっさと帰ってこい」いたっ!」


 ルークがついていくと言おうとした時に後ろから見知らぬ人物がやってきて、ルークの頭を思い切り杖で叩いた。その痛みのせいでルークは頭を抱えてしゃがみこんでいた。あれはかなり痛いと思う。


 ルークの頭を叩いた人物は紺色のローブを着ていて、長い杖を持っていた。その杖にはルークの杖と同じような六芒星の印がつけられており、その人物が宮廷魔術師だということを証明していた。


「げっ、レックスが何でここいるんだ?」

「ここは俺の出身地だ。市長とは面識があって、お前がここにいることを教えてくれたんだ」


 やっぱりそうなんだ。それなら仕方がない。旅にルークが付いてくることは出来ないな。コイツはほっといて次の街へ行こう。


「ちょ、ちょっと待ってよ!僕を置いていかないで!」

「仕事しろ」

「友達も仕事しろって言っているぞ、馬鹿野郎。さっさと戻ってこい、半年以上の仕事が残っているんだ」


 可哀そう、とは思えなかった。だって自業自得なんだから同情しようがない。これを機に真面目に仕事をするようになってほしい。


 そんことを思いながらルークに背を向けて歩き始める。コイツに付き合っているととても時間が掛かるため、さっさと見捨てて次のところへ行くのが吉だ。


「ちょっと待って!あげたいものがあるから少しぐらい待ってよ」


(あげたいもの?そんなものがあるのなら少しぐらい待ってあげてもいいか)


 あげたいものがあると聞いて、アレクは足を止めた。ルーク以外にならこんなに冷たい対応をしないが、ルークに関してはこのくらいの冷たい対応がちょうどいいと理解しているため、親友だと思っていてもこのような冷たい対応をしている。


 冷たい対応をされているルーク自身も表面的には嘆いてはいるが、本心ではあまり気にしていないため、そのくらいがちょうどいい。少しくらい気にしていると、普段の行動を治そうと動くはずなのでちょっとは気にしてほしいと思ってはいるが。


「で、あげたいものってなんだ?」

「防寒着だよ。この街から先は寒くなるから防寒着が無いと生きていけないからね」


(ぼうかんぎ?なんだそれは)


 初めて聞く言葉に戸惑っていると、ルークが分厚い服を取り出して渡してきた。その服は今まで見てきた服の中で一番重く、こんな服を着ると暑くて死にそうになってしまいそうだった。


 しかし、ルークはそんなアレクの考えを見抜いているようで、この服の必要性を力説してきた。


「君は寒さというものを舐めすぎだよ。あまり寒くないところで生まれ育ったようだから、寒さというものは知らないんだと思うけど、それは簡単に人を殺してくるんだから油断しないでね」


 あのルークがここまで真剣に注意してくるってことは本当なのだろう。ルークの同僚のレックスと呼ばれている人もそのことを否定していないところを見ると、さらに信憑性が増してくる。あの人はルークのことを咎めているのだからきっとまともな感性をしているに違いない。もしまともではなかったら宮廷魔術師という職業を全く信用できなくなってしまう。


 そうして、アレクはありがたく防寒着を受けとり、大切にしまい込んだ。はぁ、何でコイツはこんな気遣いができるのに普段は人の話を聞かないのだろうか?その親切心はどこに追いやった? 


「じゃあな、ルーク。いつかまた会おう」

「そうだね、今度はミナと三人で。また今度」


 アレクはルークに背を向けて歩き出す。

 何故かもう少しでこの旅の終着点に辿り着くような気がして、少しの達成感と寂しさを感じた。ここまでの旅の中でたくさんのミナの行動を見てきたが、それでも分からなかったこともある。

 それはミナの原点だ。何故人助けをするのか、何故旅をしていたのか、もう少ししたらその理由がわかると自分の直感が告げていた。

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