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ルークとの再会3

「はぁ、ひどい目にあったよ」

「自業自得だろ」

「市長さんもちょっと引いてたけどね……」


 ルークを充分懲らしめた後、二人は紙吹雪を撒くために必要なものを探しに街を歩いていた。必要なものを買うお金は市長が出してくれるため、お金のことを気にせずに道具を買うことができる。

 ただ紙を撒く方法は人それぞれと言われたため、アレク達にはどんなものが必要になるのかさっぱり分からない。というか、まだ紙を撒く方法すら決まっておらず、これからどうすれないいのか分かっていなかった。


「そもそも、どうやって紙を撒くんだ?やっぱし、お前の飛行魔法でばら撒くのか?」

「うーん、最初はそれでできると思っていたんだけど、この祭りの範囲が思ったより広かったからその方法は難しいな」


 アレクはルークの言葉に対してあまり驚いていなかった。何故なら、この街を歩いている間のルークの表情がよくなくて、いい返事が返ってくるなんて思っていなかったからだ。そもそも、偶然出会ったルークの力だけで問題が解決できるという都合がいいことが起こると思っていない。もし、そんな都合がいいことが起こるのならば、アレクの人生はもっと良いものになっている。


「一応聞いとくけど、その理由は?」

「魔力量だね。一回の飛行で撒くことができる紙の量はたかが知れているし、何回も往復しなければならないとするとかなり厳しいよ」


 ルークが真剣に言うと、それだけ厳しいということが伝わってくる。杖を無くした時でさえルークはふざけていたのだから、こんなに真剣なルークは初めて見た。コイツにもこんな顔ができたのだな。

 とは言っても、諦めるわけにはいかない。どうにかして紙吹雪を撒く方法を考えなければならないのだ。問題点は一回に運べる紙の量が少ないということなのだから、それさえ解決することができれば何とかなるはずだ。


「一回に運ぶことができる量が少ないのは重さのせいか?」

「ううん、それよりも紙を入れる籠が邪魔になる方が原因なんだよ、大きすぎるものを持つと動きにくくなるんだ。重さに関しては紙程度だと問題ないね」


 なるほど、重さより大きさの方が原因だったのか、それならばまだ可能性はある。まだ思いついていないけど。

 それでも、ルークも真剣に考えている為、祭りの時までには思いつくことができるだろう。そう思ってアレクはルークの方を見ると、そこには誰もいなかった。

「は?」

(あの馬鹿は何処に行った?もしかして迷子になったのか?子供かよ)

 そう思って慌ててルークを探していると、少し前に通り過ぎた店の中にルークがいた。ルークはその店の中にある品物を真剣に見つめていて、ひょっとしたら祭りに使えそうなものを見つけたのかもしれなかった。

 そう思って、アレクは急いでルークがいるところに行き何を見つけたのか確認しようとした。


「何か見つけたのか?」

「ああ、見つけたよ。見てみな、僕が子供の時に父親と遊ぶのに使っていたボールだよ!」

「は?」


 理解ができない。それが何の関係があるのだろうか?もしかして、言葉通りの意味しかないのだろうか?

 いや、流石にそれはないだろう。いくらルークと言っても、いまの状況で関係ないことをするとは思えない。そう信じたい。


「……それが祭りに関係あるのか?」

「ないけど」

「……は?」


 落ち着け、落ち着け、ルークはこんな奴なんだ。一々キレていたら疲れるだけだ。そんなことに体力を使うことなんてするわけない。

 だから、落ち着け。


「友よ、キャッチボールをしないかい?」

「……何で?」

「久しぶりにしたくなったから」

「そうか……」


 ごめん、もう無理だ。


「……それなら表に出ようか」

「そうだね!金を払うから少し待ってくれ」

「まだ買わなくていいよ、ボールを置いて外に出ろ」

「あれ?怒ってる?」

「怒ってない」

「えっ?怒ってるよね」

「怒ってないから表に出ろ」


 アレクはルークを店の外に出して、本気で怒ろうとしたが、アレクはそうすることはしなかった。何故なら、ルークを引っ張って店の外に追い出そうとした時に頭の中でいい案が浮かび上がったからだ。ただ、その案は後から考えると頭がおかしいと思うような案であったが、この時はルークに対しての怒りのおかげで冷静ではなかったため、思いつくことができたのだった。そういう意味では、ルークのおかげと言ってもいいのかもしれな……駄目だ。それだけは認めたくない。


「あれ?どうしたんだい?僕を店の外に追い出すんじゃなかったの?」

「ああ、気が変わった。一つ良い案が思いついたんだが、できそうか?」

「内容にもよるけど、友のためならどんな無理難題でも成し遂げようじゃないか」


 こんな時にルークの言葉は頼もしいと思う。だって、ルークの顔からは友のためならばどんなことでも成し遂げてやるという気持ちが伝わってくるのだから…………そんな気持ちならばふざけないでほしかったな。もしかしたら、気分転換させようとしていたのかもしれないけど。


 アレクは覚悟を決めて思いついた案について説明する。この案は無茶なところも多いし、それに問題点もかなり多いため、馬鹿にされても仕方がない。それでも、ミナを救うためならば躊躇わないで話さないといけない。


「なるほどね。君が上空にいる僕に向かって紙が入った袋を投げて渡していくっていうことか。確かにその方法ならば紙を持って飛行する時間が減るからいい方法だと思うけど、何個か問題点があるから言っていい?」

「ああ、遠慮せず言ってくれ」

「僕がいるところまでどうやって紙の入った袋を投げるの?身体強化があればできると思っているかもしれないけど、紙は軽いから簡単に風に流されるよ」


 それはそうだ。どれだけ勢いよく投げたとしても、紙が軽いせいで風に流されてしまうことを考慮していなかった。何か解決策が無いのだろうか?袋の中に紙と一緒に重りでも入れるとまっすぐ投げることはできるようになるのだろうか。


 でも、そんなことをしてしまうと、この方法をする意味が無くなってしまう。袋を渡せば渡すほど重りがルークの邪魔になるし、かといって上空から落とすわけにはいかない。やっぱりこの方法は不可能なのかな。


「友よ、諦めるのはまだ早い。実際に試してみないと分からないじゃないか、失敗したら試行錯誤すればいい。それが成功の秘訣なんだ」

「……そうだな、さっそく試してみようか」



「オラっ!」


 紙が入った袋を全力で投げる。この紙は市長に貰ったもので、まだまだあるから気にせず使って良いと言われたもので、アレクたちは何度も何度も試していた。


「中々うまくいかないね」


 今回も袋がルークまで届かず、一緒に反省すべきところを確認していく。しかし、反省点とは言ってもルークがいる位置まで届かないと言うことだけであり、それ以外に話さなければならないことは無かった。


「届きさえすれば成功するんだがな……」

「それもあと少しで届きそうなんだけどね」


 ルークの魔法を使っている状態で投げれば、ある程度は風を無視することができていたのだ。それでも、高さが足りなくて成功することは無かった。

 あと少しなんだけどな……。


「ねぇ、飛行の魔術を練習してみない?」

「できるわけねぇだろ」

「だよねー」


 ルークが無理難題を言ってくるが、そんなことは考慮に値しない。宮廷魔術師が使う魔術を何でやらせようとするのか?


 とはいえ、その発想自体は悪くない。自分の身体を浮かばせることができたのなら、投げた袋がルークに届くようになるからだ。浮かばせることができないと言うことに目を瞑れば、それはとても良い案だ。

 そうだな、高いところまで投げるということではなく、ルークに近づいて行くという方向で考えようか。それならば成功する確率が上がるのかもしれない。そうやって考えていると、一つとんでもない方法を思いついた。それはかなり負担がかかり、怪我をする可能性が高かったが、それでもアレクはその方法を使うことに決めた。


「どうかしたのかい?」

「いい方法を思いついたんだよ、それはな……」


 思いついた方法を正直に話す。その方法はルークからしても予想外の方法だったようで、アレクの言葉を聞いた瞬間、目を見開いて驚いて、それから腹を抱えて大笑いをしていた。


「さすが心の友だよ。ああ、確かにその方法は単純で誰でも思いつく。だけど、それを実行するのは君くらいだ!」

「ミナのためだ。方法を選んでいる場合じゃない」

「本当にすごいよ、君は。これも愛の成す力なのかな?」


 (愛……?何なんだ、それは?まあ、いいや。そんなことよりも祭りで成功するための練習の方が大切だ)


 アレクはルークの言っている意味が分からず首を傾げていたが、すぐに祭りのことを思い出して疑問を頭の隅に追いやった。

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