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ルークとの再会2

「やあ、お偉い人、一つ聞きたいことがあるのだが聞いてくれるよね?」

「誰だ貴様、ここが何処か分かっているのか?さっさと出ていけ」

「僕の聞きたいことはね、ミナという人物のことなんだよ」


 会話が成り立っていない。つい先ほどまではルークのことが頼もしく見えていたが、やはりルークはルークであって人の話など聞かないし、自分の言いたいことだけ言っている。一瞬でも頼もしいと思った自分を殴りたい。


 そして、ミナについて知っていると思われる人物はルークが人の話を聞かないとわかると、すぐにアレクの方を向いてルークのことについての説明を促してきた。ルークと会話をすることを諦めたその判断の速さはとてもすごいと思う。


「おい、そこの坊主、コイツは何だ?」

「ルークという人の話を全く聞かない馬鹿だ。一応、宮廷魔術師でもあるけど」

「ルーク?そういえば聞いたことがある、たしか宮廷魔術師の問題児だと言われていたな」

「んんっ、いったい何のことかな?」

「「……」」


 やっぱしコイツは周りから好ましく思われていない。こんな行動を続けていたら、当然いろんな人から嫌われるだろう。本人はまだ嫌われている原因に気付いていないようだがいい加減に気付いたほうが良いと思う。コイツの場合は指摘しても無視してくるから一生治さないだろうと思ってはいるが。


 偉い人がアレクのことを憐れみを込めた目で見てくる。おそらく、ルークと一緒に行動していることを憐れんでいるのだと思うが、実際にルークのせいで苦労しているところもあるので何も言い返せなかった。


「で、その問題児がミナについて知りたいだと、いったいどんな理由があるんだ?」

「それはここにいる僕の心の友に聞いた方が早いと思うよ」

「俺はお前の心の友ではないし、めんどくさいからって説明させるな。今回は説明するが次は無いぞ」

「ん?どうしたのかい?」

「はぁ、もういいや。俺たちがミナのことを知っている人を探している理由は……」


 そうしてアレクはミナのことを知っている人を探している理由を話していく。ただ、アラディアのことを言おうとした時にルークが気付かれないように止めて来たため、アラディアのことは少しぼかして伝えていた。

 すると、偉い人は少し考えた後に口を開いた。


「なるほど、そういうことだったのか。それならば良い、ミナがこの街で何を成し遂げたのか教えてやる」

「おお、良いのかい?」

「ふん、ミナにはお世話になったからな。生き返らせるためならば協力は惜しまない。俺のことは市町とでいも言うがいい」

「へぇ、ここまで言わせるなんて、あいつは何をしたんだ?」


 アレクは少し驚いていた。今までのミナは人助けをしていると言っても、それは一般人相手のことが多く、目の前の人のような見るからに偉い人との関りは無かったからだ。ただ、アレクはその事実に納得しているところもある。何故なら、ミナは「困っているのならば立場とか関係ないよ」と言ってもおかしくは無いような性格をしていたため、このような偉い人も躊躇いなく助けると思ったからだ。


「貴様らはこの街に来るのは初めてだろう?それならば祭りのことを何一つ知らないはずだ」

「祭り?」

「ああ、この街では定期的に祭りをしている。そして、その祭りの最後に上空から白い紙を撒くんだ。前回の祭りでその役目を担当したのがミナだ」


 なるほど、ミナは上空から紙を撒いていったのか。あれ?ミナに関する記憶がしっかり残っているのに何故累石が起動しなかったのだ?もしかして、記憶を集めなければならないのはその祭りの参加者全員なのか?もしそうだとすると、全員にミナのことを思い出させなければいけなおが、この街の人口は一万人以上いるせいでそれを成し遂げることはかなり難しい。


 そもそも、この街にいる全員にミナのことを思い出させる方法なんて存在するのか?もし、そんな方法があったとしても俺たちだけでその方法を成し遂げることができるのか? 


 アレクはミナを救うことを諦めたわけではないが、それでも今から自分がしなくてはならないことを自覚し、本当にミナを救うことができるのか不安になってきていた。それも仕方がないことだ。ここまで来るのに何回かミナの記憶を思い出させることがあったが、それは多くても数人程度で一万人以上の人にミナを思い出させるなんて難易度が天と地の差があったからだ。


 そんなアレクの様子を見て、市長は助けを出してきた。しかし、それは助けと言ってもいいのか分からないほどの助けであり、役に立つのかは分からない。


「一応、今週の週末にその祭りがあるからそれを使うと言い。ただ、紙を撒く人はいないがな」

「え?何でそれをしないんだ?それさえすればミナのことを思い出させることができるかもしれないだろ」


 アレクは週末に祭りがあると聞いて、その祭りの中で紙吹雪を撒くことによってミナのことを思い出させようと考えていたが、市長から紙を撒くことは無いと言われて、そのことに怒りを感じていた。協力は惜しまないと言っていたにもかかわらず、何でミナのことを思い出す切っ掛けになりえることをしない?市長の考えていることが何一つ分からない。


 そんなことを思っていると、隣にいたルークが宥めてきた。ルークには市長が考えが少し理解できていて、祭りで紙吹雪を撒かないことに納得しているように見えた。


「なるほどね。アレク、市長を責めても無駄だよ」

「何で!」

「だって市長さん、人員不足なんでしょ」

「……ああ」


 市長の話を纏めるとこうだった。この祭りでは長年、とあふ老齢な魔法使いが紙吹雪を撒いていたが、数年前に亡くなってしまい、それからは出身地がこの街の魔術師に頼んではいたが、ここ半年は忙しくて祭りに来ることができていなかったのだ。


 前回の祭りで紙吹雪を撒くことを諦めようとしていたのだが、何処から聞きつけたのかは分からないがミナがやって来て、その魔術師の代わりを勤めたのだった。


「そういうことだったのか……」

「うん、そういうことだから僕たちがすることはただ一つしかないよね」

「そうだな……できるかどうかは分からないが」

「こういう時は弱気になったら駄目だよ。何が何でも成し遂げるって気持ちで行かないと」

「ああ、そうだな」


 ルークのくせにいいことを言う。普段は人の話を聞かない問題児が言う言葉とは思えないな。だけど、言っていることは正しい。弱気になっている場合じゃないのだから。


「市長さん、俺たちにその役目をやらせてください」

「好きにしろ、協力はするから何かあったら言うがいい」


 市長の許可も貰うことができたため、自分たちの力で紙吹雪を撒くことさえできればミナのことを民衆に思い出させることができるかもしれない。


 アレク達はミナを救うためにしなければならないことをしっかりと理解して、しっかりと前を向いた。紙吹雪を撒くことがどれだけ難しいことか分からないが、それでも全力で成し遂げなければならないから。


「そういえば、前に担当していた魔術師はどんな奴だったんだ?」

「ああ、そういえば言っていなかったな。宮廷魔術師の一人で同僚が逃げたから探さなければならないと言っていたぞ」


(ん?どこかで聞いたことあるような話だな)


 そう思い、ちらっと横にいるルークのことを見てみると、全力で目を背けていた。今ままで祭りで紙吹雪を撒くことを担当していた魔術師が半年間来ることができていない理由はコイツなんだな。一瞬でも頼りになるなと思った自分を殴ってやりたい。


「なぁ、言い訳はあるか?」

「ま、待ってくれ、これは何かの誤解なんだ!僕たちは心の友だろう、僕のことを信じてくれ!」


 ルークに反省の色は無く、ずっと言い訳しているだけだった。それでも、この状態から言い逃れることができるとは一切思っていないように見えて、その観察眼だけは評価できた。


 とは言え、こうなった原因のほとんどはこの馬鹿にあるから、しっかりと怒るところは怒らなければならない。それに私情が無かったと言うと噓になってしまうが、アレクはルークのことをトラウマになるまで懲らしめた。

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